新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

好きです!演出部!

10月4日
2日後に迫ったCM撮影打ち合わせ。

当日の香盤に細かく注文をだす。
現在天気予報は雨らしく、
本当に6日に撮影できるかどうか甚だ不安。
いずれにしても
当日の気温が低くなることを
想定しないとならない。

我々スタッフは多少寒くても、
暑くても仕事に影響は出にくいが、
俳優部はそうはいかない。
気温が40度近くても汗をかくなとか、
零下でTシャツ着させられても震えるなとか
割と平気で求められてしまう。
同じ人間なんだから土台無理な話しなんだが
求められてしまう商売なんだ。

つまり、それらをケアするのも
我々演出部に課せられた使命である。
どんな気分で撮影に臨んで欲しいか、
どう盛り上げて撮影を進めていくか、
”演出”という言葉の中には
様々な事柄が含まれているのだ。

だからおもしろい。
演出部はやめられない。
助監督であろうが監督であろうが
演出部は仕事として抜群におもしろいのだ。

簡単な例を出そう。
あなたはある映画のサード助監督だ。
サードは小道具担当。
あなたは脚本に書かれている
様々なな道具を抜き出していく。
もちろん脚本に書かれていない道具だって
見落としなく抜き出していった。
そうして完成した小道具香盤を
装飾部に持って行くと
物凄い量の質問を浴びた。
ナイフってどんなナイフ?
鑑識セットって何をしてるの?
指紋採取?写真撮影?
拳銃はどんな拳銃?
手紙の原稿は書いた?
新聞の原稿は?
スポーツ新聞?
原稿は明日までに書いて!

もう、びっくりするくらいの量だ。

あなたは脚本を読み直し、
内容や人物に適切な道具は何かを
調べることになる。

しかし、調べれば調べる程色々なやり方や
色・形があることがわかり
あなたは混乱してしまうだろう。
でも、せんなことでは
装飾部に発注は出せないし、
撮影に到底間に合わない。

そこで美術打ち合わせというものがあり、
そこで監督に一つ一つ確認を取ることにする。

でも、ただそこで

「監督どうしましょう?」

なんて言ったら失格だ。
監督失格だ。
(と言い切ってしまおう)

「人物はヤクザだけど若者なので、
ドスじゃなくバタフライナイフが良くないですか?
サバイバルナイフもいいっすね!
飛び出しナイフは国内では基本的に発売してませんが・・・」

あなたは自分が調べて分かったことや感じたこと
リアルはこうですが、こういう嘘ならアリですとかを
監督に報告して行く…

監督が確かに決めて行くのであるが、
決めさせているのはあなただ。

そこにはあなたの演出がアリ、
あなたの演出が
映画に取り込まれていく瞬間がある…

そして、そこに演出部が
存在する意義がある。

僕は自分の下に就いた助手に必ず言う。

「忘れ物や間違いなんて誰でもある。
僕はそんなことで激怒はしない。怒るけどね。
でも、演出部として演出を放棄したりしたら

激怒するよ。殴る蹴るだよ」

それを聞いたら、大体始めは笑うんだ。
でも、忙しい毎日でそれが一番大変だってことに
殴られてから気付くんだよね

「どうしましょう?じゃねー!考えろ!演出しろ!
言われたことのまんま動いただけで
金がもらえんのかお前は!羨ましいな!」

村本さんに
「長谷くんは厳しい」
と言われたことがある。

厳しいか?
一番楽しいことを放棄する奴に
演出部は務まらんよ

まして”監督になりたいです”
なんてちゃんちゃら可笑しいぜ。

温泉地ロケCMでは
久しぶりに助手が就くことになっている。

楽しみだ。

村本組演出部へようこそ
楽しくやろうね。

ま、その前に6日の撮影だ
TVもある。

来たれ演出部へ!

カテゴリー欄に「本家・カチンコ日記」を追加しました。
今日現在では第1回から10回をUPしました。