新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

魔王と言えば、シューベルト。

1月30日
打ち合わせ。
嫌な具合に雨が降っている。

仕事だから色々とある
こちらの都合だけでは成立しないし
先方も自分たちだけの都合では
何も動かないことを承知している。

ま、全員大人だからね。

じゃ、現状どうしよう、何が出来るか?
何が得策か?


いくつかの提案をして
こちらとしては、
もっとも辛いことになりそうなプラン。
台本のオリエン打ち合わせから
数日後にはほぼ完成台本にしないといけない。
まあ、この仕事だけなら
それもまた、スピーディーで良いんだけど
そこは、様々な企業さんが大忙しとなる期末。
毎年、数本の仕事が重なるのは当たり前の期末。

これだけに集中するなんて時間は無い。

でも、こういった提案をしなければ
終らないし帰れないだろう。
前に進むには、一度後に行くことも必要なのだ。





で、そういう訳で暫くもう一本は動かない。
なので、今今、動いているVPに全力を注ぐ。
月変わりには、撮影前の打ち合わせがあるので
そのための資料を作らないとだし、
撮影が近いってことは撮影プランも作らないといけない。
色々と勉強することも多い。

今日になってからは
動き出したことを裏付けるかのように
メールが色々な方々から送られてくる。






子どもを病院に連れて行く。
咳の度合いがちょっと酷くて、
うちのはへたすると喘息に発展しかねないので、
心配だからということで病院へ行く。

自転車じゃないと10分ほど歩くことになるんだが、
外は雨だし、結構強めに降ってるし…
確かに、早くて楽だが、日も沈んだ夕方に
自転車で病気の息子を乗せるのは危険。

しょうがないから、徒歩で行くことに。
が、まだ、熱も咳もある息子。
”歩けるか?”と聞いても頷きはするが、
決して歩けるとは言い難い。

「よし、おんぶだ。乗れ!」

と言うと、すたすたと俺の後ろに回り
ぴょこん!と飛び乗った。

飛び乗った?

うん、まあ、いい。
一瞬、動けるじゃないか!と言おうと思ったが、
大して意味無いし、歩かせたら病院に到着するのも
何時になってしまうか分からない。


で、雨なので、
おんぶされた息子に傘を持たせ
俺は両手で息子の尻を支えて、
病院への道を歩き出す。
おんぶで揺れるからなのか、
息子のさしてくれている傘は
微妙に俺の頭を外れており、
ほぼ常に頭だけは雨に当たるといった状態。
ツツー、ツツ、ツツーと
頭から生暖かくなった雨が
ゆっくりと地肌を伝い、
鼻の頭に流れ落ちてくる。

痒いから拭きたいが、
両手が塞がっているので

「おい、パパの鼻の頭を掻いてよ」

と、言ってみたが
後の息子は体力の限界状態で
傘を持たされて、フーフー言っちゃってる。

「あーん、風があって傘がまっすぐならないよ」

こちらからのお願いの応えに
まるでなっていないお返事。




なんだか、この状況って
シューベルトの魔王じゃないか?と
急に思ってしまって、
とてつもなく怖くなってしまった。
病院に向かうスピードがあがり、
気が付いたらジョギング程度の
スピードで走っていた。

振り返って ”大丈夫か?”と
息子を見てみれば

当たり前だが、
具合は悪そうだけども
息子がしっかりした目で

「うん」

と言ってくれた。


血液検査で血を抜いた。
大泣きしたけどもがんばったから。

ジュースを奢ってやる。
したら、ゼリージュースなんかを選んで…
この場合、そのチョイスはいただけないんじゃ?


息子の目が
”なんでもいーって言ったじゃん”と言ってる。













息子はゼリージュースを半分残した。
もったいないけど、
俺が口をつけて飲むわけにもいかない。








じゃ!