新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

香盤の夏。

7月26日
午前中にCMの演出コンテを仕上げ
夕方の打ち合わせに向かう。

が、打ち合わせといっても
なんというか、
演出として行くというよりか、
助監督として行く、指導する的な感じ。

どうしてかというと、
今回、担当してくれる制作部の子は
まだ、経験が浅く、

いや、入社して数ヶ月ってレベルだ。


「香盤は書いたことあるの?」

「ありません」

「書けるの?」

「先輩の書いた香盤を貰ったには貰ったんですが…」

「聞いてることと、答えが違うよ、
         香盤は書けるのかい?」

「頑張ります…」


って、ところで、
お互い助手から知っている
Iプロデューサーが口を出してきた。

「はせさん、教えてあげてくださいよ
         香盤の極意ってやつを!」

「そんなもんはねーよ。
 まず、書いてみないことには始まらん」

「そんなこと言わないで、明日とか打ち合わせしましょうよ」

「明日は駄目だよ!」

とか言いながら、
なんだかんだで、今日の打ち合わせが組まれた。
当然、そのプロデューサーもいると思ったが
いる気配すらない、いるつもりも無かったのだろう。


「あの、すいません、本当に今日は…
            あの、お願いします。」

「こないだ渡した香盤のフォーマットは見た?」

「はい、見させていただきました」

「で?」

「いや、なるほど、と」

「……」

「あの、撮影って何時くらいから始めたら良いんですかね?
          朝10時には撤収しないとならないんです」

「日の出は何時?」

「えっと…」

「うん、いや、まずね、僕のフォーマットに
 日の出時間や日没時間とか、
 色々と時間配分を考える前に埋められる情報があるでしょ?
 僕を呼び出す前に、それくらいは埋めておこうよ。」

「はい…すいません」

「うん、いいよ。じゃぁ、考え方を教えてあげるけど…
 ちゃんと教えるから、辞めるなよ、この会社を、無駄になるから」

「や、辞めませんよ!大丈夫です!」

「もう、何十人も無駄にしてきたからさ…」

「はぁ…」



てなことで、
演出というよりも、
助監督スキルの部分で打ち合わせをした。
打ち合わせというよりも
勉強会というか、僕の一方的な質問に
制作の子があたふたと答える会かな。

で、さっさと手書きで香盤の概略を書いて


「つー感じだ。で、この書いたやつは、丸めて捨てるから」

「え!何でですか!」

「何でって、これあったら、
 これ見て書くだろ?駄目だよそんなの。
 これは答えじゃない。ある一つのプランだから。
 肝心なのは自分で考えて進行することだよ。
 だから、俺が書いた香盤は必要ない」

「……」

で、最終的には



「その紙、下さい…」


って雨の中に捨てられた子犬のような目で
哀願してきた。
多分、むさっくるしい野郎だったら、
顔面パンチなとこだが、
不憫に見えてきたので、
上げることにした。

このメモ通りな香盤が上がってくるのは
目に見えているが。





いや、最終的に
香盤をチェックすることになっているので、
最悪は、大直しをするだけなんだけどね。

あ、僕が大直しをするんじゃなくて
制作の子がね。
徹夜してでも頑張ってもらうよ。

ここで、くじけるようなら
現場でも必ずくじける。

そうならないよう祈っています。







で、自宅に帰ったら
今度は子どもたちとお祭りに行く。

幼稚園の園庭で行われるんだけど、
地元の有志の方々が
かなり力を入れていて
色々なテキヤも出ているんだけど
それが押しなべて破格の金額。

ポップコーンが普通300円くらいのものが
二つで100円だったり、
カキ氷もたっぷり入ったやつで
上下にシロップをかけてくれて100円。

子どもたちや近所の方々は
幼稚園の庭だってこともあり、
非常に和やかで居心地も良い。
調子に乗った中学生や高校生、
酔っ払いすぎた中年もいない。

なさ過ぎて…ってくらい問題なし。

なんだかライトサーベルちっくな剣を息子が買い
妖精の羽を模したおもちゃを娘に買い、
お値打ち価格の食べ物を
端から買って全部食べた。


暑くなきゃ、夏って最高なんだけどね。


じゃ!