新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

クランク・アップアップ

日本の自転車泥棒 JANの撮影期間は
大きく3つに分かれている。
僕が参加していない
2005年末の大雪の第1部。

そして、天候に恵まれたようで
結果として天候によって
『残』を作ってしまった第2部。

その第2部撮影から約1ヶ月・・・
最後の戦いをすべく
第3部撮影がスタートした。

2月15日 6:00 渋谷
太陽はなかなか6:00前には出てくれない。
だって、そんな季節じゃないから。
夏になると5:00でもすでに明るくなっていたりして
否が応でも撮影時間が伸びるのだが
まだまだ冬から春なんかだと
撮影時間全体は8時間も無い場合が多い。

しかし、夏に比べて冬や春の方が
比較的に天気が安定しているのだ。
つまり、晴れが多い。
夏で想像するのは照りつける太陽や
ジリジリ、ジメジメした気温であろう。
しかし、夏の約半分は曇りであったり雨であったりする。
それもいきなり降ってきたり、晴れたり曇ったりと
『安定』していないことが多い。
よく、現場で太陽が安定したとか
太陽が安定するまで待ってくださいとか言う。
これはTVでも聞いたことがあると思うが
『天気待ち』ってやつで
曇りを基本として撮影していくか
晴れを基本で撮影していくかで
どちらの待ちかが決まってくるのだが
曇りを基本にしてたら後半戦晴れ続きで
曇り待ちばっかりになったとか
そのまた逆もあって最高に難度の高い『読み』だ。

ま、こんな話は、また夏にしよう。

と、夏の話題を持ち出したくなるくらい
今日の天気は抜群のグンバツだったのだ。

当初、週間天気予報などでは
ちょうと15日は雨が降るかもなんて予報であったから
かなりビビッていたというか、どうしようかと思っていたのだ。
とはいえ、天気の悪態ついても
天気は変わらないし
気象庁も『すいません』とは言ってくれない。

だから、天気予報を見るのを止めた。

雨が降ろうが雪が降ろうが撮影はするのだ。
ラストチャンスである今日を逃したら
『残』は残でなくなり、『欠番』になってしまう。
台本にはあるのに撮影されていないシーン。
それだけは絶対に避けなければならない。

ロケバスが山に近づいていくにつれ
僕は安心してきた、というか、絶対的に確信した。
今日は『晴れる』と。
昨日の状況と今日の空。
これを見たら『晴れ』は間違いないと。

※いや、ほら、日が終わってから言っても説得力ないね。

この今日の晴れを待っていた感じがする。
そして、今日は当初の香盤でも最終日に予定していた
日本の自転車泥棒 JAN』のクライマックスシーン。
最大に難度が高く、準備も入り組んでいて、
もっとも混乱するシーンだ。

すでに朝から段取りに狂いが生じて
監督に大目玉を喰らっている
なんとか巻き戻し、監督の機嫌も元に戻したい。
それをするのも、できるのも演出部しかいない。
たった二人だけど・・・

「M木!チャリンコ持ってこーい!」

「はーい!」

「M木!俳優部確認してこーい!」

「はーい!」

M木はすでに多くの現場を
サード助監督として経験している。
そのせいもあって、現場でも安定した動きをしてくれる。
かなり安心して現場を任せられる人間だ。
と誉めておこう。
だからという訳ではないが
彼にはサード的な仕事はもちろんだが
セカンド的な役割の一旦も担ってもらおうと策略していた。
セカンドとは主に現場の進行と衣装・ヘアメイクの担当である。

「M木よ」

「はい」

「今回、見習いはいるが基本的に助監督は二人だ」

「はい」

「辛いぞ」

「はい、わかってます」

「更に辛くしようか?」

「え?な、何がですか?」

「そろそろ、セカンド業務をな」

「わ、わかりました。がんばります」

「幸い、出演者は一人だし、

         つながりも大きくはひとつだから」

「はい、岩崎君から聞きました」

「頼むぞ」

「・・・はい」

そんなM木はずいぶんと頼もしい。
すぐに他部署とも連携し
すでに制作部をも掌握している。
すごいぞ、M木!
と、誉めすぎくらい誉めておく。

しかし、そんなM木がいるくらいで
ガタついた現場の段取りが立ち直るわけではない。
いや、正確にはガタついていたというよりも
同時に進行している準備状況を
掌握しきれなかったというのが正解だ

つまり、メインスタッフを不安にさせたってことだ。
元々、3つの異なる準備と
近いようで離れている撮影場所が
混乱を更に混乱させていた。
自分では掌握していたつもりであったが
いざ、という時には結局わからないという
醜態をさらしてしまったのである。


これ以上言い訳を書くつもりはない。

この3つの異なる準備の撮影は
映画のクライマックスに関わる
重要なシーンのため
内容や撮影方法などを詳しくは書きません。
映画を見て判断してください。


「おお!これか、長谷が
         大変だったという撮影は!」

とね。

しかしながら、香盤的には30分押しという
微妙な進行状況であった。
朝からバタバタしたが持ち直した感じでもある。
撮影が進むにつれて
スピードもあがってくる。
『慣れ』だろうか?
撮影が2日しかないから
悔しい限りだが
一日半やって、やっとMAXのスピードが
出せるようになってきたのだ。

午後からは快速急行のように
ザクザク撮影していく。
多少危険な部分もあり
ヒヤリとした面もあったが・・・


第1部撮影からの『残』であった
手元カットを撮影して全ての撮影を終了した。

「ただいまのカットで、
全シーン全カット撮影終了です!おつかっした!」

いつもの台詞を大声で叫んだ。
少し、疲れたが心地のよい疲れといえる。

完成が楽しみだ。

本日撮影したシーン
96 97 98 99 32

日本の自転車泥棒 JAN」撮影日記