新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

父。

11月21日

レンタカーを借りて

実家のある横浜に向かう。

借りた車は日産マーチ

僕が初めて買った車と同じだ。

当時は平成元年型だったけどね。

さて、今日は息子を見せに行くことが本題ではない。

親戚の娘が婚約者のお披露目にと

セッティングしてくれた場なのだ。

大体、僕のスケジュールが確定してなくて

10月に予定していたものが

結局今日までのびのびになっていたのである。

恒例という訳でないが

僕が結婚した際にも

こうしたお披露目お食事会をやったので

親戚の娘もそれにのっとって

全員の前でお披露目しないと!と考えたのだろう。

そう、で、つまり、今日の主役は息子でなく

親戚の娘の彼氏なのである。

はっきり言って僕の親戚だというのに

娘はおもいっきりかわいい顔をしている。

贔屓を省いたとしても

後藤マキ クラスにかわいらしい。

そんな娘が結婚するってんだから

初めて聞いた時はびっくりしたもんだ。

親戚の娘ではあるが、

僕とは14歳離れていて

もちろん、生まれた時の

赤ん坊の頃から知っているのだから。

こうした感覚は、うまく伝わらないと思うが

あの赤ちゃんが結婚?

いや、確かに、僕だって

赤ちゃんだった時期があるはずだから

同じことなのであるけども

僕的にというか、ちょっとショックなだけだ。

で、レンタカーで横浜に行き

お披露目会までの間

うちの息子と母親と祖父母で昼食食べたり

足が弱ってた祖母が

最近しゃべり始めて面白いのか

息子と一緒に散歩に出た。

これには驚いた。

今まで、あまり家の外には出なかった祖母だったが

やはりひ孫はかわいいのだろうか?

しゃべるようになって急に重い腰をあげたのだ。

なんというか、親孝行というか祖父母孝行というか・・・

孫力(ひ孫力)ってすげー。

さて、そんなこんなでお披露目会だ。

みんなで車で移動して

ある焼肉屋へ行った。

自分的にはつい先日焼肉食ったばっかりだが

そんなことで焼肉を中止にするわけにもいかないし

長谷家でダントツに浮いた存在の僕が

そんなことを言うと、

ほぼ確実に違う店になってしまうだろうし。

ただでさえ主役は僕でも息子でも無い。

で、焼肉屋だ。

ここがなんとすげーうまい。

先日の焼肉の比で無いくらいにうまい。

今日の主役である娘の彼氏お勧めの店らしいが

びっくりするくらいうまい。

当たりだよ、君!

あ、書こうとしたことは

焼肉が旨いことじゃない。

花嫁の父というか、

嫁に出す父親の姿のことだ。

今日は会ったその時から

なんとなくだが落ち着きがなく

息子だって近づくのが躊躇われる感じ

すでに何度か会っているそうだが

何度会っても違和感を感じているのだろう。

一度など、

『お前が会って奴を判断しろ』

なんて言い出した始末なんだから。

それだけ、会いたくないというか、

嫁がせる=取られる感じなんだろうか。

僕も確かに結婚している訳だから

先方のお父さんに

同じ気持ちを味あわせたのだろうけども

なんだか見ていて辛い。

幸い、うちの子供は男の子なので

僕自身が嫁にやる心境になることは

恐らくないだろうが

見ていて、なんか、

手に取るように気持ちが伝わったのだ。

口ではOKと言っていても

やっぱり嫌なものは嫌なのだろう。

なんら反対する理由などなくとも

娘を嫁がせる=取られるのは嫌なのだ。

近いようで遠い席に二人は座り

親戚という壁で同じテーブルにつかない花嫁の父。

どのみち結婚式の日程は決まっているし

結婚は約束された状態なのに。

食事中、しきりに俺に目線をやる花嫁の父。

もしかすると俺が

『こいつはロクな奴じゃねー』

なんて言い出したら

天下を取ったような勢いで

結婚反対を叫ぶだろうことは

想像するに容易い。

言うわけないが。

花婿にも聞いてみた。

『父親の本心を探れたかい?

 腹を割って話し合えたかい?』

『いいえ・・・まだです』

そうだろうよ。

きっと花嫁の父は

すぐには腹を割って話さない。

特にうちの親戚の父は話さないだろう。

ちょっと見かねて

長谷家の異端児である俺が話しを切り出した。

『食べているばっかりだけど、主役の話しはしないの?』

いやー、びっくり。

引いた。

長谷家一同が一瞬にして凍りついた。

かなり長い間ができたんだもん。

何か聞きたいことがあるはずなのに

黙っているなんておかしいじゃないか!

凍りついた場に一石を投じたのは

読みにくい名前をつけたら日本一の祖父だった。

祖父のつけた名前を一発で読める人は

なかなかいないのだ。

『どんな商売をしているの?』

おー、さすが、じいちゃん!

まずは外堀から攻めますか。

俺はじいちゃんが大好きだ。

と、まあ、結局はじいちゃんの一石も

かなり無駄に終わり

最後までただひたすら食うだけの

お披露目会になってしまった・・・

でも、彼氏の人となりや

まじめさや人望のような部分は見て取れた。

僕的にはとっても良いお披露目会でした。

帰り道運転しているとメールがきた。

娘からだった。

『今日は段取りが悪くてごめんなさい』

いや、段取りなんて・・・

プロじゃないんだから。

つーか、段取りは悪くて当たり前。

段取りだけで商売している奴がいるんだもん。

君がうまいとこっちは商売あがったりだよ。

さ、今日は良かったじゃないか。

成功だよ。

幸せにな。