新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

建てこみが立て込んでまして・・・

9月9日
そんな訳でセットの建て込みだ。
ロケセットに美術部が沢山の装飾品を運びいれる。
ショールームのようで生活感の薄かったセット内が
今の今まで人が住んでいたように変貌していく。
ちょっとした飾りをするだけでも
部屋は大きく色を変え
人間のあり方や息遣いを感じさせる。
基本的にCMだから
温もりや愛情が感じられるセットになっていく。

ロケセットというのは
でかいスタジオにセットを建てるのではなく
実際にある家やマンションなどを使って
撮影をすることである。
最近ではハウススタジオとか言う。
そんなハウススタジオが都内には沢山あって
映画やCMなど様々な業界に貸し出している。
スタジオを借りるよりも安く
スタジオで撮影するよりも不便だが
元々の家にあった生活感や味が
使うことでできるのが利点だ。

今回はそんなロケセット、
ハウススタジオを使った撮影である。

俺は、目の前で次々と運ばれてくる装飾品が
どこに置かれていくのかと興味津々で眺めていた。
引越しとかをしたことがある方なら
わかると思うけど
一つの部屋の品々ってのは
自分が思ったよりも多くあって
ダンボールにすると山のようになったりするよね。
つまりは、建てこみはその逆で
山のような品々を部屋に飾っていく作業な訳だ。
例えば、ゴミの日の張り紙や町内会のお知らせ
キッチンのパスタや調味料・・・
自分の生活ではなく、
登場人物の生活を作っていく作業。
張り紙は冷蔵庫に貼る?
パスタは調理代の上?
それとも棚の中?
何が正解で何が不正解は無い。
ただ、登場人物の家族ならこうだろうとか
この家のお母さんは性格的に
ここにコレを置くだろうとか
想像に想像して飾っていく。
後は、監督の好みや、
実際に芝居をする役者によって
微調整が施される。

見ていて楽しい作業だ。

もちろん、俺は黙って見ることが出来ない人間だから
思わず口を突いて注文を出してしまう。
その一言で大変なことになってしまうこともあるし
持ってきて損したなんてことも多々ある。
しかし、これは大変に面白い作業の一つ。
せっかく言うチャンスがあるのに言わないのは
俺が損だし、俺が面白くない。

この仕事の一番の良いところは
『面白い』ってことなんだから
面白いチャンスは逃さないよ。
言えるのなら、どんどん言うさ。
求められてなくともな。
俺が演出な訳じゃないんだから
無責任にどんどん言うさ!

あー、面白ぇ!

× × × × ×

今日は早く終わって自宅に帰ったので
息子と直接電話をした。
もちろん話したと言っても
会話が成立した訳ではないが、
名前を呼ぶと

『はーい』

と答えてくれるので
電話口で名前を呼ぶ。
電話の向こうできっと片手をあげて
はーいと言っているんだろう。
そんな息子の姿が思い浮かぶ。

『○○くーん』

『は~いっ!』

帰り道の歩きながらだったから
他の人から見ればなんとも
不思議な男に見えただろうが
そんなことはどーでもいい。

ちょっとしたストレス解消だ。

録音しておこう。
また、寂しい時に聞くんだ。
もっと寂しくなるけどね・・・

明日は朝が早いんで
この辺で終わり!


じゃ!