新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

ラストジョブ(追記)

8月19日~20日
CM打ち合わせ。
昼予定が夕方になり
夕方予定が夜にずれ込んでの打ち合わせ。

こんなことはしょっちゅうあることだ。
夜まで待たされて無しってこともある。
撮影の前日でもないのに
事前打ち合わせができる方が
珍しいくらいだ。

が、結局最後まで出来なかったが
一通りの確認はできた。
明日も続きをする予定だが
今日心配な部分は指摘することができたので
満点ではないが及第点は出たと思う。

さて、撮影というのは
カットとカットの積み重ねである訳だが
一つ一つのカットを細かく打ち合わせるのは

ある意味CM特有のことだと思う。

15秒ならだいたい11から13のカットを
30秒なら20から30カットを必要とするのだが
その一つ一つを入念に打ち合わせる。
このカットのアングルはこうだから
抜けにバレ物が多く入るので
人止め、車止めの配置はこうだとか、
このカットで必要な商品はコレだとかだ。
これに移動とかが入ると
更にややこしくなり
どの段階で次の手を打つか
時間的リミットをどこに置くか。
様々な要因を洗い出し打ち合わせていく。

が、撮影で僕が度々直面するように

予想外の出来事や
全く
心配していなかったトラブルなど

現場ではとっても面白いことが起きる。
それが止められない要因でもあるのだが
当日当事者としては
正に泡を食うというか、面食らう。
僕は何度か撮影中止かも
という事態に遭遇したことがあるが
実際に中止になったことは一度だけ。
その時のびっくりどっきりエピソードは

またいつか書く。

そんな今までの経験を踏まえて
撮影を想像していく。
一人では見えなかったことが
数人で打ち合わせることで
問題が見えてきて、明確になる。
そのさまはさしずめあぶり出しの絵のようで
更に解決の糸口が見えると

俺たちは天才じゃないかとも考えてしまう。

今回の制作部のI君は
数多く存在する制作部の中でも

気持ちある制作をする一人だ。

細かな部分を見落としがちなとこはあるが
僕はこいつが好きだ。
何より正直なのがいい。
やることに嘘がない。

俺は嘘ばかりの人間だから
こういう正直な人間に憧れるというか
無条件に好きになってしまうのかもしれない。

がんばれI君。

ああ、少し眠い。
朝の5時だからな。

じゃ!

8月20日
少し寝て夕方に起きる。
え?少しじゃないって?
まあ、いいじゃないか。

で、夕方制作会社に赴く。

案の定というか例によって
すぐに打ち合わせは始まらない。
撮影に望むメンバーが全く揃っていないのだ。
揃っていなければ、
撮影の打ち合わせをしても
また、同じことを言わなければならないので
無意味なのだ。

辛抱・我慢。

「長谷さん、1時間位待ってください、すいません!」

忙しそうに方耳に携帯を当てながら
制作チーフI君が言う。

「まあ、いいや、1時間な」

「うす!」

それから1時間。
R25を読んだり、
社内に落ちてた漫画を読んだり
手帳を書いたりとして暇をつぶす。

きっかり1時間後。

社内を見渡しても
I君ただ一人で
他の制作部が集まる気配がない。

「あれ、I君。まだ?」

「え?あ、もう1時間っすか?」

とか言いながら目はPCに向けたままだ。
それ以降返事が無い。
すでに心ここにあらずだ。

「・・・」

辛抱・我慢。

撮影が近いから準備に余念がないのは分かる。
方々から電話が入って
質問や疑問に答えていかないとならないのも分かる。
スタッフに配る書類も手抜かり無いように
ガリガリと作っていかないとならないのも分かる。

だから、待った。

すでに、手帳の整理も終わったし
R25も読みつくした。
やることは無い。
コンテ・香盤をもう一度見て
打ち合わせることを再度確認する。
が、すぐに終わる。

辛抱・我慢。

15時に会社に入り
打ち合わせが始まったのは18時頃だった。
もうすでに、
俺の中で撮影が終わったくらいの気持ちだ。

「すいません、遅くなりました・・・」

「じゃ、打ち合わせ開始~!」

今回の撮影はそんなに大変なカットは無いので
カットの打ち合わせよりも
撮影前や撮影後の段取りを中心に進めていく。
カットの話しの方が重要に思えるかもしれないが
実は言うと、その前と後がかなり重要な位置を占める。
特に撮影に入る前の段取りは重要で
ここを間違ってしまうと
時間通りに撮影が始められないばかりか
全てのカットを撮りきることができない可能性が出る。
例えば、15分撮影開始の時間が遅れると
どこかでその15分を取り戻さないとならないことになる。

一日の中で太陽が出ている時間というのは
限られているから単純に15分終了時間を遅らせる
というだけでは対応できないのだ。
しかし、逆に15分早く撮影を始めることができれば・・・
この15分は余裕の時間となり
多少のミスを許容してくれることにもなるし
例え日が影ってしまっても
15分は待つことができるということになる。

また、撮影後は撮影の全体の印象を
決めることにもなりかねない。
終わり良ければ全てよしという言葉があるが、
最後の段取りに大きなミスが出れば
撮影の印象事態悪いものになってしまう。
ここを締めることが大事なのだ。
最後までスタッフを気分良くさせて帰す。
重要なことなのだ。

さて、そんな撮影前、撮影後の打ち合わせをする。
新たに必要な書類があったり
予想してなかったことが出てきたり。
俺は、打ち合わせ後はすぐに帰るが
I君以下制作部は今日帰られるだろうか・・・
まさか、徹夜とかしないで欲しいが。

はっきり言うが制作部の業務は激務だ。
相当な激務だ。
3日間徹夜なんて良く聞くし
休みだって全く取れない。
毎日、電話が来て希望・要望を言われ
予算にはまるように方々に交渉する。
人が起きている時間は
ほぼそんなことに費やされ
普通は寝るだろうという時間に
まとめをしたり、書類を作成したりする。
これじゃあ、寝る暇は無い。

激務だ。

しかし、他のパートが楽なわけはない。
だから、体力や持久力の無い方には
お勧めする職業ではないことは確かだ。

なんかかなり話しがずれた。
ま、そんな訳で明日から僕も激務体制に入ります。
とりあえず、タクシーを朝5時に予約してある。
タイトルにある通り
もしかすると、この仕事が
助監督として『ラストジョブ』かもしれない。
違うかもしれないけど。

でも、その時は近いと思っている。

悔いの残らぬようやるつもりだ。

じゃ!