新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

夏の夕闇

8月7日
朝から猛烈に暑い。
酷暑というやつだろうか。
しかし、ありがたいことに俺はお休みだ。
仕事の予定は入っていないのだ。

で、今日は1歳半になる息子の
『卒乳』の日でもある。
さて、卒乳というんは何かと言うと
つまるところ授乳するのを辞めて
完全に固形物(食事)だけから
栄養素を補給するということ。

卒乳は早い方が良いとか
本人の動向を見極めるとか
諸説様々あるが、
その様々からの一つを選んでの今日だ。

本人(息子)には数日前から
ぼちぼち卒乳だからなと言ってある。
その言葉を聞いて理解しているのか
知らん振りをしているのかは
本人にしか分からないことだが
今日の様子を見る限りでは
どうやら、大筋で理解をしているらしい。

これはつまりこういうことでもある。
バイバイする=別れ を理解した。
おっぱいは自分のものではないと分かった。
我慢することを覚えた。
他にも色々あると思うが
息子は幼児から
確実に子供になりつつあるということだ。

つい、こないだまで乳児だった息子が
離乳食を食べ始め、歩きだし、幼児になり
卒乳をして、いよいよ子供になりつつある。

人間は他の動物に比べて
極端に未熟な状態で出産されるというが
おかげで、人間という生き物の成長過程の
凄さ、素晴らしさを体験することが出来ている。
誤解しないで頂きたいが、
子供という、親にとって
素晴らしく面白い『おもちゃ』
俺の心を掴んで離さない。
しかも、この『おもちゃ』
後20年近くも遊び続けることのできる一品なのだ。
途中で飽きてしまったとしても、
腹が立ったとしても、
普通のおもちゃの様に扱うことはできない。
常に面白がっていることで
この『おもちゃ』真価を見せてくれるし進化だってする。

親として、遊び尽くそうと思う。(今は・・・)

さて、そんな息子を連れて夕方、公園に行く。
いつもは、息子よりも大きい子供たちばかりが
走り回っていたりして危なかったりするのだが
今日、行ってみると、不思議といない。
息子と数ヶ月位の差だろうと予測できる子ばかりいた。
皆、どこかしらに親がいて
近くから遠くから、子供たちを見ている。

少し話しは逸れるが、こういう公園は非常に安心だ。
常に自分でも子供は見ているが
他の子供の親だって見ているし
子供が多いことで、
子供同士のコミュニケーションもある。
いちいち、子供の手を引いて
公園を歩きまわるのもいいが、
ポーンと手を離して好き勝手にさせる方が
子供も楽しいはずだ。
親が必要な時はちゃんと目を合わせてくるし。

で、息子の手を離して好き勝手に遊ばせる。
始めは俺の近くから離れようとしないが
すぐに近場では飽きはじめて
砂場に行ったり、ブランコに行ったり、
他の子供の遊びの輪を崩しに行ったり・・・
『自由』を謳歌しているようだ。

時折、
俺の方を見て『パパ、パパ』と呼んでくる。
他の子供たちに挟まれている際に。
どうして、俺を呼んでいるのか分からないが
大人の目で見てみると
息子が他の子供たちに

『あそこに座っているヒゲが俺のパパだ』

と紹介しているように見える。
案の定、他の子供は俺を見て

「あそこに、パパがいるの?」

と言っているし。
俺を紹介して何の意味があるのかは
全くわからないが
一応、手を振っておく。
それを見て走り出す息子。
いや、俺の方にじゃなく、全然違う方向に。

で、ズッテーンと転ぶ。
顔からダイブするように。
顔中砂だらけにして泣くと思い
駆け寄ると泣いてない。
ただ、砂が口に入ってじゃりじゃりするよぉ
って顔をしているだけ。

『思ったより強いな、お前』

なんか心強くなった。
これなら、
俺の老後の面倒も
安心して任せることができるな!

×  ×  ×  ×  ×

映画というのは
企画されてから撮影して、編集して公開してと
長い長い月日を経てお客さんに届けられるが、
ここまで、長いのはあまり聞いたことがない。

何の映画のことかというと
自分の関わった映画の話で申し訳ないが
『千年火』という映画のことである。
この『新・カチンコ日記』でも度々取り上げているし
撮影日記やベルリン映画祭日記でも
書いている映画のことです。

息子との散歩中に寄った
ナチュラルローソン
普段マナーモードにしている携帯を
通常モードに戻そうと開くと
メールの着信が入っていた。
映画『千年火』監督の瀬木さんからだった。

『第12回京都キンダーフィルムフェスティバルで
グランプリを受賞しました。
只今、授賞式出席のため、京都にむかっています・・・』

確か、撮影したのは2003年の8月。
クランクインはちょうど今日の一日前の8月5日。
九州限定公開がその年の12月で
全国公開が2004年がから順次だったはず・・・
それから、ベルリン映画祭を含めた数々の映画祭に。
そして、クランクインから数えると
ほぼ、ちょうど2年目のグランプリ。

まだ、他の映画祭からも引き合いがあると聞いてます。

監督の瀬木さんがベルリン映画祭の時に
こんなことを言っていました。

”映画は撮影にこぎつける前の段階も長いけど
公開してからも長いんだよね”

”でも、ここまで長いのは想像してなかったけどね”

これが、2月のベルリン映画祭の時だから
今、監督はいくらなんでも長過ぎ!って
喜びながら困っているんじゃないでしょうか?

まだまだ、もっともっと、困らせてくれるといいですね!

で、明日からまた仕事始動。
CM助監督の仕事がスタートします。
例によってクライアント名やタレントの名前・作品内容など
具体的なことの一切合財は書きませんし
その類の質問にも絶対に答えません。
はっきりとアバウトなことしか書きません。

人間は創造・想像する動物です。

日記から そうぞう して下さい。

じゃ!