新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

ヘビースモーキングブルース

1月11日

毎朝目覚めると何か食う前にはすでに煙草をくわえている。

白煙をくゆらし今日一日を想像する。

アメリカンスピリットに煙草を変えてからは一日を想像する時間が延びた。

たいてい全てを想像する前に火元はフィルター近くまで来てしまうが

煙を吸い込む度に目が覚め、

頭のハードディスクがカタカタと音を立て始めのがわかる。

煙草と同時に準備していたコーヒーをすすり

煙草とコーヒーの混ざりあった香りで肺を一杯にする。

さて、今日が始まる。

仕事用の履きふるした安手のジーンズとセーターを着込み出発する。

外は煙草の煙りぐらい白い息が出る。

そんな寒い日はすぐに煙草を思ってしまう。

一瞬、煙草に手が伸びるが歩き煙草はしない。

最近は駅でも喫煙スペースがないから、駅前のコンビニで一本火を点けた。

目の前を電車が何本か過ぎていく…

足早にサラリーマンやOLが行く。

俺は、一人、煙草を吸う

金持ちだろうが貧乏人だろうが

大人だろうが子供であろうが

時間はそれぞれに平等だ。

彼の一分は急いでいる。

俺の一分は煙りを吸っている。

駅前で消した煙草の煙を切って改札に向かう。

電車を乗り継ぎ目的地に着くとすぐに煙草に手が伸びる。

灰皿がすぐ見つかることはまずない。

俺は火を点けずに煙草をくわえたまま歩く。

一頃前は交差点に灰皿や空き缶が吊されたりしていたもんだが今じゃどこにもありゃしない。

フィルターが唾液でぐちゃぐちゃになった頃会社に着く。

会社に着いたってすぐに吸える訳じゃない。

どこもかしこも禁煙、禁煙、禁煙だ。

ひどい場合は全館禁煙とかで暑かろうが寒かろうが外で吸えときたもんだ。

全く肩身が狭いったらありゃしない。

昔は煙草を吸うのが格好がいいとか、格好良く煙草吸う方法なんて話したもんだよ。

成人式を過ぎたそばから煙草薦められてさ。

文句ばかり言っても仕方がないが振り回された方の身にもなってくれよ。

ああ、でもよ、はい、そうですかなんて

すぐに煙草は止めたりしないぜ。

煙草はかれこれ13年も吸ってるんだからな。

親の次に付き合いが長いからよ。

白く香しい煙草の煙は、俺の全ての持ち物に染み付いている。

俺の仕事の日記は白煙の日記でもある。

くわえ煙草しながらよく怒られたもんだ。

仕事しながらの煙草はかかせない。

仕事も終わり帰宅する頃

夜空に吐く煙もいいもんだ。

真っ暗な空に白い煙がふわりと昇る。

大きく煙を吸い込み、月に向かって吹き掛ける。

月の黄色が白く光り一瞬でまた黄色に戻る。

あの、大笑いした時も吸っていた

大泣きした時だって吸った

追い込まれて悩んだ時も

息子が生まれたその瞬間も…