新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

史上最大の作戦05 The Last Mission

10月19日
いきなり、
更新が止まった訳を教えよう。

時間は遡って・・・

10月16日深夜
CM撮影では珍しい”残”を出して
一応予定の日程は終えた。
”残分”の撮影は19日に予定されている・・・

僕は遠い海の方から
ロケバスに乗って帰京した。

六本木でバスを降りた時
同乗していた助監督K本さんが
僕に声をかけてきた。

「はせくん、ラーメンでも食うていかん?」
「ああ、いいですねぇ。食べていきますか?」

でっかい荷物を持った助監督二人が
六本木の街を彷徨う。
なかなかラーメン屋が見つからず
ふらふらと僕らはヒルズの方へ向かっていた。
あっちなら、なんかしらあるんじゃないの?

でも、すでに時間は23時を回っていて
ラーメン屋はどこも閉店していたのだった。

そこへ飛び込んだのが『カレーうどん』の文字。

「あ、はせくん、カレーうどん。
カレーうどん食うていかん?」
「いいっすよ、カレーうどん」

なかなかこじゃれた感じの
カレーうどん屋に入った。

そこで話すのはやっぱり現場の話し。
あのカットの時のあの動きは・・・
車両配置をもっと効率良くしないとならないなぁ・・・
一日中雨降らしの撮影は思った以上にしんどい・・・
やっぱり、反省会のようになってしまった。

でも、反省ばかりしていても埒が明かない。
だって、19日に残の撮影があるんだから。
そこで挽回しよう。
そこに賭けてみようじゃないか!

「あんなぁ、はせくん」
「なんすか?」
「俺なぁ、19日やばいネン」
「え?ネンって!やばいネンって!」
「ちょっと、調整してみるわ・・・」
「マジっすか!勘弁してくださいよぉ!」

4人の助監督のチームワークが
前提で組んだ撮影香盤。
演出部の要である貝さんがいなくなると
その前提は崩れてしまう。
俳優部ケアの三浦さんと
まだ、デビューしたての茂木。
結論、現場での様々な出来事は
全て一人で受けきらないとならない・・・

僕は更に疲弊して帰宅した。

帰宅した僕を待っていたのは
明日からの別件の仕事のメールだった。


『17日の本編集の件!』

『18日のMAVの件!』

『20日の撮影の件!』

『23日の打ち合わせの件!』

『番組取材の件!』

『番組タイトルの件!』

お、恐ろしい・・・
今後のスケジュールを考えただけで
身の毛もよだつ思いがするよ。

だが、一度引き受けた仕事だ。

投げ出すわけにはいかないし、
そんなことはしない。

とりあえず明日は内緒仕事の
本編集があるのだ!

と、倒れるように寝た(更新できず)

×  ×  ×  ×  ×

10月17日
内緒仕事の本編集。
うすうす感ずいていたと思うが
この仕事の監督は僕である。
内容は差し控えるが
この本編集までは
幾多の山を登り
深き欲望の河を渡り
なんとかたどり着いた
最後の砦。

すでに、僕が作戦行動を起こしていた裏で
制作丸が下準備を進めていてくれていた。

本編集とは、
放送用の画質で放送用の編集に
仕上げていく作業である。

僕はワンカットワンカット丁寧につむいでいく。
かっこよくしたい・・・
見た人に『かっこいい』と
言われるものに仕上げたい。
狭い編集室の中で僕は
マスモニと呼ばれる、
モニターを凝視して作業に没頭した。
都合のいいことに、
この編集室は地下1階で
僕のボーダーフォンの電波は入らない。
集中できる環境が整っている。
携帯の電源を落とし、
大雑把にエフェクトの指示を
エディターに出していく
エディターは僕の大雑把な指示から
何がかっこよくて何が嫌いかを判断し
的確に僕の想像を超える
エフェクトを作りだしてくれた。

そして、23時を過ぎたころ
クライアントOKが出た。

僕の短い”監督期間”が終わろうとしている・・・
(物思いにふけって更新できず)

10月18日
内緒仕事のMAV。
音楽や効果音、
ナレーションを吹き込み
音の全体バランスを取る作業。

これが終わったら僕は監督ではなくて
”助監督”として
また現場に戻らなくてはならない。
それも、今日の夜中に
宿泊地に入らないとならないのだ。

なんの問題もなく
MAVの作業が終わろうとしていた。

「・・・もっと、作りてぇ」

自分の思いや頭の中の映像が
どんな形であれ、具現化するさまは
見ていて胸躍る快感の連続だ。
辛いことも多いが、
この快感からは離れられないのだろう・・・

完成後クライアントを見送り
感傷にふけっていた時、
僕の携帯が鳴った。
しまった!MAルームは携帯が入る!

「長谷さーん!俳優部に連絡した?
香盤入ってないってさ!」
「なにーマジでぇ!」

たった数秒の電話で僕は
”助監督モード”に切り替わっていた。

「わかった。まずはキャスティングに連絡するから、
           とりあえず、ホテルで打ち合わせしよう!」
「了解!」

完成したばかりのビデオを鞄にしまい込み
僕は宿泊地へ飛んだ。
(パソコンを置いてきたこともあるが、
殆ど不眠状態のため更新を忘れる)

10月19日早朝
史上最大の作戦 Last Mission

撮り残した残を撮影するため
僕ら演出部は今一度再集合した。

スケジュールの調整がついた貝さんも
にこやかに現場入りしてくれていた・・・

今日で史上最大の作戦は終わる。

天候は雨。
通常の狙いなら完全に中止にするという悪天候。
しかし、僕らの狙いは曇天雨降らし。
またとないチャンスなのだ。
晴天になってしまっていたら
その方が中止の危険性がある
正に綱渡りな狙い撮影だ。

僕はメインスタッフが到着する予定時刻の
30分前に現場に入った。

4時30分。

辺りはまだ真っ暗だったが
撮影部・照明部・特機部は
寒すぎる!と叫びたくなるような気温の中で
黙々と作業を進めている。

撮影開始予定は5時30分。
日が昇ってからすぐ位の時間帯だ。

が、この時間設定は”晴れ”が前提の時間設定であり
今日のような曇天の状況下では全く嘘っぱちの時間である。
これは、前日から雨予報を知っていた僕は
当然わかっていたことでもある。
6時か7時にならないと撮影が始められないのも承知していた。

しかし、僕は5時30分shoot予定を崩すつもりはなかった。

僕は香盤の変更をする際は必要以上に慎重になる。
時間の変更が全てのスタッフに伝わるかどうか?
変更したことで生まれる気の緩みは現場にどう影響するか?
5時30分に撮影できる体制にしておいて
6時とか7時に撮影開始は”待ち”があるだけで
なんの問題もない。

僕はその”問題のない”方法を選択しただけ。

確かに、現場で文句を言われたりもするが
1時間ずらして撮影をせっつかれるよりも
ゆったりと準備を進めた方がいいに決まっているから。

それに、僕の香盤の考えは
香盤を状況にあわせるのではなく
香盤に状況をあわせていくことだからだ。
簡単に言うと、香盤通り撮影するための準備をしないとならない。

例えば撮影に3時間かかるカットがあるとする。
でも、お借りする場所の都合で2時間しか借りられないとしたら?
香盤を変更して2時間で撮影するように書き直すか?
確かに数字はいくらでも変えられる。
でも、僕の”読み”は経験に基づく”読み”であって
3時間のものが早々簡単に2時間に短縮するはずもないんだ。

では、どうするか?

3時間借りられる場所に変更するか、
更にお願いして2時間を
なんとか3時間にしてもらうか、
本当にその場所でしか
撮影できないカットなのかを検討するかである。

つまり、香盤は変えない。
簡単に変更・変更をしてしまうと
やっかいな問題が多発することもあるし。
古い時間割や古い情報の香盤を
持ったままの人がいたら
どうしようもないことになってしまう。
一度出したら、
変更しないように努力するのが
香盤作成なんだ。
だから、僕は仮香盤を
非常に大切に書き上げる。
大体が仮香盤でいけることも多いしね。

あ、話しがずれた。
元に戻す。

雨天でなかなか空の光量が上がらず
結局7時撮影開始になった。

寒い。

タダでさえ寒いのに、僕らは更に雨を降らしている。
スタッフ全員雨合羽を着て作業を進めているが
見る見る疲労していくのがわかる。
じっとしていても、雨に打たれると疲労する。

段々、ペースがゆっくりとなっていくので
我が最強演出部が”間”ができないように
大声を張り上げ、指示を出し、
次へ次へと撮影を進めていく。

ペースは遅いが確実に撮影は進んでいく。
晴天の場合は朝と夕方にしか
撮影ができない予定だったが
曇天のおかげで、
次々と撮影が進んでいく。
もしかすると、
昼前には終わってしまうんじゃないか?

終わらなかったけど・・・

ま、それはさておき、
演出部は5日目ということもあり
チームワークが絶妙になってきている。
すでにアイコンタクトで会話が成立している。
こうなると、体も心も楽になっていくので
撮影も非常に楽しいものになっていく。
でも、それも今日で終わり。
せっかくのチームワークもまた終わりを迎えるのだ。
惜しい気もするが、

仕方がない。

逆に5日もCM撮影ができたことは
必要以上にプラスになる。

怖いものなんかない (かもしれない)

×  ×  ×  ×  ×

「ただいまのカットで○○さん
全カット終了です!おつかっしたー!!」

僕らは3時前には撮影を終えることができていた。
スタッフ全員ふらふらしているが
終わった安堵感が現場に満ちている。

今日も無事に撮影をすることができた。

当分撮影はいいや。
休みたいよ。

ピリリリリリリリ!

「はい」

「あ、長谷?カッツだけど、
明日の撮影の時間なんだけど」




「あ!」



「ん?9時に・・・・・」

え、あ、う、うん、
  メールで送っておいて・・・

今はまだ、
明日のことなんか聞きたくない。