新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

史上最大の作戦03

10月17日
クオリティを守るために下した判断で
撮影できるカットが
5カットになってしまった前日。

撮影3日目からはシリーズ違い。
全く内容の違うものに切り替わる。

そこで、
発動される新たな作戦行動は・・・

10月15日
朝4時30分出発
僕は他の演出部より
先行して現場に到着した。

なにより決まったことが、
覆されることが多い撮影だったため
僕は先行することで
先手を打つ作戦に出たのである。

現場に到着するとすでに
撮影部・照明部・特機部などが
真っ暗の中着々と進めている。

一体全体、何時から現場入りしたのか?
いや、知ってるんだけど、

考えないようにしよう。

僕は現場に着いて、
まず予定されているカットの準備が
できているかどうかを確認する。
前日に多少の変更があったために
スタッフ全員、特に準備パートに
作戦が伝わっていないと
大変なことになるからだ。
くるりと現場を廻って、
準備の状況を確かめる。

”うん、予定どおり”

少し安心していると、
メインスタッフを乗せた車が到着した。
メインスタッフが到着すると
現場はひと際あわただしくなる。
技師が着いた段階で、
どの程度準備が進んでいるかで
技師の対応が大きく違ってくるからだ。
助手としては、
メインスタッフの入る時間はとても重要。
演出部だって、
監督が到着する前に
エキストラの配置や各準備パートの進捗具合など
全てを把握していないとならない。

「どう?できてる?」

と質問されて

「いや、まだです」

とは言いたくないからだ。
これが、現場を効率良く進めるための手段だし
日本の撮影システムの良いところでもあると思う。
悪いところも沢山あるけどね。

さて、そんな訳で僕はまたカメラカーに飛び乗った。
今日は前回と違って公道を走るので
通常の気合では乗り切れない。
ほんの少しのミスが大惨事を招く恐れがあるので
入念なチェックと丹念な準備が必要だった。

「撮影部 OK? 照明部は? 録音部?」
「よし、スタートするよ!道路状況はどう?

 いいね!いくよ!」

我ら演出部は関係各部署全てに確認を取り
OKが出た段階でスタートとする。
通常なら、強引にスタートする場合もあるが
カメラカーなどの特殊な撮影をする場合には
うるさいと言われるほどの確認を取る。
そうしないと事故が起こるからだ。
また、きっちりと確認を取っているということを
俳優部に見せることで、
安心してもらうという効果もある。
このスタッフに任せていたら安心だと。

初日、2日目とあまりいいとは言えない
演出部のチームワークだったが
ここに来て、ビシッ!ビシッ!と
決まってくるようになってきた。
現場の基本を貝さんが仕切り、
細々したことを茂木が対応し、
俳優部のケアを三浦さんが全力で当たる。
僕は司令塔もどきで
シーバー片手にどなりちらすだけ。

これが、撮影3日目にして
バキッと決まるようになった。

段取りで僕が現場を離れても
貝さんと茂木が、
がっつりと現場をリードしてくれている。
俳優部のメイク状況や所存など
全てを三浦さんがケアしてくれている。

僕は安心して、
次の日の香盤を立てたり
制作部と打ち合わせができる。
はっきりいって非常に心強いチームだ。
監督も素晴らしい助監督がついてくれていて
とても安心だろうと思う。

そんな訳で、今日の撮影は大きな問題もなく
スムースに順調に滑らかに終了したのだった・・・

だった・・・