新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

史上最大の作戦01

10月17日
撮影前日に訪れた最大のピンチ
全てが後手にまわるという
準備状況の中、
クライアントからの驚愕の追加オーダーとは・・・
そして、不眠不休で迎えた撮影。

10月13日
午前1時。
驚愕のオーダー内容を抱え
僕は調布のホテルに飛んだ。
日付は変わってすでに撮影日当日の朝だ。

先ほど監督からメールがあり
もうすぐホテルに到着するというので
演出部一同でロビーで待機していた。

まだ、監督は
その驚愕のオーダー内容を知らない・・・

「えええええ!」

その監督の驚愕の声に
僕らの方が驚愕したくらいだ。

「それは、全く撮影方法が違うよ!
間に合うの?」

「わかりません、
明日中に段取りをしなおします」

「・・・・・・」

その驚愕のオーダーとは
撮影内容の変更だ。
多少のアングル変更ならどうだって対応できる。

だが、かなりの特殊撮影を予定していたために
この変更はかなりの痛手だった。

「・・・カメラカー用意して」

「は、はい」

※カメラカーとは、
文字通りカメラを設置するための車だ。
ピックアップトラックの形状で
荷台にカメラや照明機材を仕込むことができる。
撮影対象が移動したり、
動いたりするものを撮影するためによく使われる。

はっきりいって180度準備が違う。
明日というか、今日中に
段取りができるのだろうか。
いや、段取りをしないと撮影ができない。
やる、やるしかないんだ。

すでに初日の撮影まで
3時間と迫っていた。

「とりあえず、寝る。
モーニングコールよろしく」

少し疲れた監督が
エレベーターに吸い込まれていった。
閉まりかけたドアの隙間から
大きくため息をついた監督の姿が見て取れた。

「段取りは段取りとして、まずは明日だ」
「天気は?」
「雨です」
「よし、予定通り」

雨天決行。
だって、雨降らし撮影だもん。

さて、出発だ!

×  ×  ×  ×  ×

驚愕のオーダーから3時間後。
午前4時。
日の出前に僕は車に乗った。

外はまだ暗く、
シンシンと雨が降っている。

雨降らし撮影は天候が悪いことが条件である。
また晴天なら、
日の出直後のまだ暗い状態か
日没直後が狙いとなる。
香盤上は晴天を予定している。
普段は曇天や雨天を想像しての
香盤を作成したりするが
今日の香盤は天気が良いことが
最悪の条件だ。
つまり、限られた時間でしが
撮影をすることができないのだ。

だから、今日の雨は最高の条件である。
でも、僕は何故か
心にひっかかることがあった。
その時は何かわからなかった。
でも、その何かは
確実に大きく大きく僕を心配させている。

今日の撮影は



何かある・・・



4時30分現場到着
すでに撮影部・照明部・
美術部・特機部が準備を進めている。
目の前には巨大な
撮影用クレーンを置かれている。
カメラを載せて上にあがるのを
今か今かと待っている。

×  ×  ×  ×  ×

「雨お願いします!」

僕は大声を張り上げる。
現状で雨が降っているのだが
通常の雨の状態というのは
写らないことが多いんだ。

雨が降っているのにも関わらず雨を降らす。
はっきりいって、相当しびれる。
もうビリビリに。

んでまた雨が降っているもんだから
準備がなかなか進まない。
香盤も押し押しだ。

「雨、強めにお願いします!」

もっともっと強く降れ、
降って僕の心のもやもやを流してくれ!

×  ×  ×  ×  ×

その後、現場移動してまた雨降らし。

「え?撮影できない!」

僕のもやもやは的中していた・・・