新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

夏の大和魂(3)

つづき

もうすでに戦争は始まっていた。

結婚式前になんとか仕事を終え
急いで部屋に戻った。

あと、10数分で式は始まってしまう。
猛ダッシュで着替えて出ないとだめだ。
はやる気持ちを抑えて
エレベーターに乗った。

エレベーターを降り、廊下を歩いていくと
段々と聞き覚えのある声が聞こえてくる。
息子の鳴き声だ。
かなり、ご立腹の様子。

奥さんが着替えやメイクに取りかかっていて
あまりかまってもらえないからか
息子はベット上でワンワン泣いていた。
僕の顔を見るなり余計に泣き出す始末。
抱いてやると一応は泣き止むが
フンフンと大変に腹が立ってますという感じで息が粗い。

すでに、残り時間が10分を切っていたが
順番に着替えて準備していかないとならない。

”こりゃあ、頭がボサノバでもしょうがねーか・・・”

息子を抱きながらパンツ一枚になって
スーツを出しつつ、ズボンをはきつつ、
途中で交代してシャツ着てネクタイして、
また、抱いて靴履いて・・・
もう、二人して子供を中心にして右往左往の縦横無尽。
クーラーの設定を17度にしていても汗がダクダクと流れ落ちる。

青森だって夏は暑い。

息子もなんとか着替えさせて
ギリギリというか5分くらい送れて出発。

会場に下りると登場間際の新郎新婦にばったり・・・
あいたたたた。
ここで会っちゃったよ・・・
ごめんよ。

でも、ま、間に合ったってことかな。
と、席に着く。
うん。かなりちゃんとした結婚式だ。
ちゃんとしたというと御幣があるかもしれないが
今まで僕が出席したことのある
結婚式というのは大体レストランの中とか
パーティースペースとかだったから
まさに、ディスイズ結婚式っていうのは始めての経験だった。

交代交代で息子を抱き、料理を食べる長谷家。

が、息子も段々疲れてきたのか
ぐずりはじめてくる。
時折、奥さんが外に連れ出しオムツを替えたり
あやしたりしてなんとか式の間だけでも
機嫌を持たそうと努力してくれた。
そんな訳で式は何事もなく終了した。

式はね。

つーか、僕にはまだ仕事が残っている。
これからがまた戦争なのだ。

が、2次会もあり、せっかく青森まで来て
「仕事があるから」なんて言って参加しないなんてことも
有りえない話しだし、そんなことも言いたくない。
2次会に参加してホテルに帰ってきた頃は
12時を少し回っていた。

奥さんと息子はもう寝ているかなぁって
思ってたけど起きてた。

”お風呂入れてない”

そっかぁ、そうだよね。
自宅ならいざ知らす、ホテルのなれない設備の中で
一人で息子を風呂に入れるのはあまりにも大変な作業だし
危険も多いことだろう。
奥さんは僕が帰ってくるのを待っていた。

「よし、ちゃっちゃと風呂いれちゃおう」

先に僕が入り、体を洗ったりと先に汗を流してから
ユニットバスい少しだけ湯を張り
奥さんに声をかけ、息子を風呂に入れる。
息子ははじめての風呂なので、少し緊張していたが
なんとかなかせずに入れることができた。
その後、奥さんが風呂に入っている間に
寝かしつけてパソコンの用意をする。
奥さんが出てきたところで
僕はまた1階に降りていった。

「電源貸して!」

って、フロントに誰もいねーじゃん!
電源は?借りれないの?
時計はすでに1時30分を過ぎている。
明日は10時にはチェックアウトして
青森の奥地にドライブの予定が立っている。
運転をしないとならないので
なるべく早く仕事を片付けて寝たい。

が、しかし、このホテルのロビー以降は
ネットに繋げる手段がない。
今日を過ぎると、へたすると電話すらできない状態になる。

僕は、電源のことは忘れて、
バッテリーで作業する作戦を選んだ。

本当の戦争はこれからだ。

僕はPC画面を凝視した・・・