新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

お仕事大好き!(7)

7月19日
午前1時
前日のデ○ーズ事件から数時間後。
出発時間も知らぬまま僕は寝床についた。

そんな午前1時。
僕の新携帯電話V602SHが鳴り出した。

もう、すでに”ああ、出発時間の連絡だな”とは
分かっていた。
でも、現場への集合時間が6時だったので
5時30分か5時40分集合・出発だろうとは
電話など来ないでも渡された香盤から
用意に推測ができていた。

だから、けたたましくなる電話に僕は出たくなかった。

11時過ぎに横になったが
なかなか寝付くことができなくて
12時を過ぎてやっとウトウトしてきた矢先でもあったし。
電話に出てしまうと
僕の仕事回路が働き、完全に目が覚めてしまう。

でも、出なければ、延々に鳴らし続けてくるか
ヘタすると部屋まで来てドンドンとやらかすだろう。

僕は嫌々電話に出た。

案の定出発時間の連絡だった。

「5時40分でお願いします」

力強く言い放ってくれたはいいが

「そんなことは昨日のうちに連絡くれよ」

って感じだ。
僕は電話を切り目が覚めたことと
連絡の悪さに軽く悪態をついた。
  
  
  
午前6時
まだ、太陽は低く温度は大したことはない。
ずっとこのままの温度でいてくれたらなと思ったが
それは無理な相談だろう。

だって、ここは灼熱の地”熊谷”

今日も最高気温をたたき出すだろう。

さ、今日は200人のエキストラを
縦横無尽に動かし尚且つ芝居をさせるという
楽しそうな仕事だ。

まあ、先に言っておくと
人数を多い方が仕事としては楽なことが多い。

何故か?

エキストラの人数が多いということは
例外を除いては”観客役”であることがほとんどだ。
では、何故、観客役が”楽”か?
観客ということは、何かを観戦していて
それに大して応援したりブーイングしたりと様々な芝居があるが、
ほぼ全員がほぼ同じ芝居をすることがほとんどでもある。

つまり、これは大げさに言うと
一人か二人のエキストラに芝居をつけるのと
ほぼ同じことであるのだ。
確かに労力はかかるけど
脳力はそんなに必要ない。
どういうことかと言うと

「僕がここで打つ真似をするから、
 それを見て応援して、んで、
 打ったらワー!って騒いでね」

と、大声で皆に伝える。
大声は確かに労力だけど
脳力としては大して使ってないのがわかるでしょ。

内容としてはたった一人のエキストラに
芝居をつけるのと同じことなんだよね。
ただ、同じことを100人とか1000人とかがするだけでね。
移動に手間取ることがあるってだけでね。

ま、そういうことで一番やっかいなのが
5人とか10人とかの通行とか喫茶店の客とかさ
微妙な動きや位置などが要求される時だね。
単純にワーキャー言ってればいいということもないしさ。
いいタイミングで通過して欲しかったり
歩きでもコースが厳密であったりさ。
5人とか10人だとそういうことがよくあるわけさ。

だから、今日はそんなには考えていなかった。
朝一に現場を確認して(昨日も確認したけどね)
アングルチェックをして客席の範囲も確定させて、
さ、あとは6時に都内と出たエキストラが何時に到着するかなって
心配だけだった。

で、気が付いた。

「あ、今日って半分は外国人だったけ?」
「ええ、そうです」
「ああ、えーと、通訳は来るんだっけ?」
「ええ、内の○○が」
「え?制作の子なんだ」
「そうです」
「○○です、よろしくお願いします!」
「こちらこそ。えーと、英語はペラペラ?」
「まかせてください」
「おお、頼もしい!」

9時。
続々とエキストラが到着する。

「よーし、○○君。頼むぞ!」
「ういっす!」
「僕の言うことをどんどん英訳するんだ!」
「ういっす!」
「じゃあ、こっち座って!」
「ペラペーラ、ペラペラ」
「・・・」
「ん?あ、あなたはこっちね」
「ペラーペーラ、ペラペラ」
「・・・」

何故だろう、外国人たちの動きが悪い。

「○○くん、本当に通じているの君の英語は?」
「え、大丈夫なはずですが・・・」
「・・・」

なんとなく解せない。
僕は大声は張り上げた。

「はい、皆さん!今日はよろしくー!」
「ペラペーラ、ペラペラ」
「えーと、皆さんにお聞きします。アメリカ人の人!」
「ペラペーラ、ペラペラ」
「・・・」

誰も手を上げない。

「ん?えーと、お国はどちらですか?」
「ロシアです」
「はっ、はー。ロシアですか、他にロシアの方!」

殆どロシア人だった。

「おい、○○くん」
「はい」
「英語、必要なし!」
「う、ういっす!」

さあ、後は気合と根性と愛情で勝負だぜ!