新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

ぽやん

8月10日
テレシネ。

現像処理されたフィルムに
デジタル処理を施してビデオフォーマットに
収録していく作業。
カメラマンが関わる最期の作業の場合も多い。
この作業の後は、
デジタル化された映像が、
オフライン編集、オンライン編集に
回されて使用される。

つまり、フィルムはこの後の作業には
登場することが無い。

それが、フィルムで撮影されたCMというものでもある。
とても儚いとは思いませんか?
35ミリという劇場映画と同じフィルムが、
一度現像されたら、
もう二度と使用することが無い存在になるのですから。
しかし、その儚さもフィルムというメディアが
現状存在するデジタルメディアよりも
優れた表現力を保持している証拠でもあるわけです。
どんなにデジタル技術が進んでいても、
現状、フィルムには勝てないということなんですね、
もし、フィルムに勝つメディアが今後登場したとしても、
よほどのことが無い限りは
35ミリ神話は続くのではないでしょうか?

いや、こんなことを書くのも、
今日のテレシネが素晴らしい状態だったからなんです。

現場ではビジコンでフレームは確認していたのですが、
本来の色味や構図は、
今日、ここで初めて見るわけですから。
それに、ノーマルで現像されたものを
名カメラマンであるChiさんが、
丹念にカラコレをしてくれてるんです。

素晴らしくないわけがない!



僕は今回、
何かあるたびに

「このCMは ぽやん とした感じにしたいんです」

と、全く具体性の無い言葉で
説明をしてきました。
いや、具体性が無いかから
説明ではありませんね。
イメージ、印象とでもいいましょうか、
視聴者に与えるテーマのようなものです。

それが、 ぽやん です。

何故、抽象的というか、
具体性の無いことばを使用したか?
それは、多くのスタッフの
ぽやん を知りたかった、見たかったからです。

で、重要なのが
ぽやん であって、
ぽわん では無いってことなんです。

一度だけなら、スタッフも
バカなことを言う監督だなあと思うでしょうが、
何かある度に僕は言います。

「ぽやん としてください」

そうすると、どんな効果があるか?
ぽやん を探すわけです。
本来、答えを言うはずの監督が
ぽやん としか言わなければ、
探すしかないんです、
自分なりの ぽやん を。

面倒かもしれなかったですが、
その ぽやん が見たかったんです。


そして、その皆の ぽやん は
見事に現場で結集されて、
そして、今日のテレシネで完成したと思います。

それだけ、今日の映像は

ぽやん としていました。

大好きです。





こないだ、クリエイティブディレクターの
S部さんにも言われました。
スタッフの感謝を表すのなら、
日記なんかじゃなくて、
素晴らしいCMを完成させなさい。と。
それが、何よりの感謝の表現じゃないの?

うまく乗せられているのかもしれませんが、
まさにその通りだと思います。

あれほど、暑くて大変だった現場です。
でも、怒号も罵声もなく、
どちらかと言うと終始笑って過ごせた撮影現場。
そんな雰囲気ごと撮影できました。
言葉ではいくらでも ありがとう って言えます。

だから、本当の感謝の気持ちを
このCMの完成度で表現したいと思います。

参加してくれたスタッフや関係者が


「いやぁ、面白かった」

「うん、素敵だった」

「ぽやん としてた」


って思ってもらえるように。
参加して良かったって
本気で思ってもらえるように。



皆の ぽやん を沢山貰ったので
最期に僕の ぽやん をぶつけてやります。
最高の ぽやんCM を作ります。










じゃ!