9月4日（月）
■この日記は撮影終了後に香盤表を見ながら
数ある出来事を思い出しながら書いたもので
若干の思い違いや誇張や脚色が
含まれていますのでご了承ください。
映画「Watch with me 卒業写真 夏篇」撮影日記
いつまで経っても、
天気の話題から
話が変わらないのは
毎日、毎日の天気が
ここにきて一向に安定しないのと
撮影が進むにしたがって
前後のシーンとの天気つながり関係が
密接になってきたからである。
９月４日（月）【女心と・・・それって秋だろ！】
もう、二度目になる実景ポイント。
出発前から”天気が天気が”と
うだうだ言われたが
強引に出発。
俺の腹では
さすがに2回目ともなれば
ある程度の天気でも
撮影するだろう、してくれるだろう・・・と
「長谷くん、真っ白だよ」
「真っ白ですね」
「撮れないね」
「撮れないですか？」
「うん」
「待ってみませんか？」
「待ってもいいけど、ほら、
あそこの雲がこっち方面に
流れてきてるからねぇ」
「どうあがいても撮れませんね？」
「撮れないね」
「・・・撤収、移動！」
俺たちは次の現場に向かった。
次の現場ではまたしても電車狙いがある。
勝手に”伝説の白い車両”と
名づけたその電車は
ロケハンの時、
たった一回だけ見た電車である。
線路沿いの道を探していた。
すでにメインスタッフロケハンは
終わってたいたのだが、
宿題として候補なしのままの
シーンだった。
線路沿いの道を電車が走り
主人公の自転車も走り出す。
そんなシーン。
現代物であれば、
現在走っている電車で
広告の入ってない車体であるとか
色見の問題で○色がいいとか
そういった話になるのだが
大きな問題は
設定が約30年前であり
当時の電車は
今、走っていないということである。
当初、現在走っている電車を
そのまま撮影して
その後、色を電気的に変更させる手を
考えていた。
なかなか良い道を見つけた。
「ここいいっすね。
で、電車の時間は調べておきます。
1時間に確か2本とか1本とかですから
結構、狙いはシビアになりそうですね」
「まあ、仕方ないね」
と、車に乗ろうとした時だ。
ちょうど電車が来た。
真っ白でちょっと古めの車体。
「え？」
「あ！」
「普段、走っている電車って
あの色だっけ？」
「いえ、赤と黄色しか
見たことありません」
「あれ、白いよね」
「ええ、白いっす！」
「あれなら、そのままでいけるよ」
「すぐに調べましょう！
あの車体を貸してくれって」
ラッキーだったのか
アンラッキーだったのかは
分からないけども
調べてみると
その白い車体は
1時間に１本どころか
その日にしか走る予定のなかった車体だった。
”それじゃだめじゃん！”
「白車体を希望の日程に
持ってこれないか？」
半ば無理な注文かとも思ったが
お願いしみることになった。
が、結果は無理だった。
そう簡単にはダイヤは変更できない。
当たり前だ。
が、9月に入ってから
1日に1本だけ
走る予定になっていますと！
「え！それってＯＫってことじゃん！」
たった1回はかなり微妙な狙いであるが
全く走る予定がない状態に比べたら
万々歳に近い。
しかも、9月に入ってからほぼ毎日という話。
天気が悪くとも
後日に狙えるということだ。
もし、ワントライのチャンスを失敗しても
翌日にもうワントライできる。
「よし、9月4日。この日に狙おう！」
現場に入って一番の心配は
やっぱり電車であった。
今日、この日を迎えるまで
たったの１回も白い電車を見ていない。
実際、予定の時間に走っているはずなのだが
その時間に確認できたわけもなく
ただただ、ＪＲさんの情報を信用するしかない。
いや、ＪＲが言うのだから
間違いない情報なのだが
なんとなく感覚として
電車のダイヤは当日でも
結構変更されるものとして考えている。
これは、いつも撮影している場所が
東京であるからかもしれないが
感覚としては、そうだ。
「12時18分筑後吉井駅を出発します！
後10分！」
「へーい！」
見通しに立つ制作Ｓ根さんに
シーバーを出す。
「どうっすか？見えましたか？」
「・・・踏み切りの音が聞こえます、
もうすぐです。多分」
「ええ、どうっすか、白いですか、白ですか、
白い電車なんですか？」
「いや、ちょっと待ってください、
見えません。音だけです」
「ああ、見えたらシーバーください」
「はい、あ！」
「え？」
「見えました、電車です。
白です、白、白い電車です！」
「電車来たよー！スタンバーイ！」
ワントライ。
現場に緊張が走る。
今日撮影したシーン
Ｓ＃128 130
