新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

本家・カチンコ日記 第21回~第30回

先日惜しまれつつ閉鎖してしまった。 演劇ブック主催サイト アータウン内の映像サイト『モータウン』にて連載されていた日記 「長谷巌一郎のカチンコ日記=本家カチンコ日記」を転載しています。 各日記には楽しい写真が載っていましたが サーバー容量の関係上割愛させていただきました。

では、どーぞ!

第21回
何故かカンクン(3)
2002年06月03日

何故か遺跡にいる
チチェンイッツアと言うそうだ。

ものすげーマヤ文明

何故か感動しまくる俺
ピラミッドに昇りまくる俺
水深50メートルの池で泳ぎまくる俺

なんにも言わずにメキシコに行ってみました。
何故?
そりゃあ、日焼けに決まってるでしょう?…

さー明日から仕事だ!
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第22回
悩める若手達(1)
2002年06月07日

明日から2日間撮影が入っている。
メキシコからの時差ボケも
直らぬまま昨日から準備に入った。

全社員数6人のこじんまりした会社が、
今回の制作である。
僕は4年程前から顔を出させてもらっている。
個人的にはとても好きな会社である。
そこに若手が2人"も"いる。
一人は24の女性でもう一人は
2年前に俺が送り込んだ24の男性だ。
将来有望?な彼等は
毎日PとAPに怒られながらもがんばっている。

僕は<やさしーい>男だから、
<にこやか>に見守るつもりだ。

ハハハハハ
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第23回
悩める若手達(2)
2002年06月08日

暑い、あつすぎる…
朝っぱらから厚木へロケに出掛けた俺を悩ませたのは、
この太陽と若手達だ。

誰だって初めはできない。当たり前だよ。
でもね、初めてでもできることがあるでしょう?
つうか初めてじゃないじゃんか?
何故現場から離れる?
何故返事をしない?大きい声で返事しない?
何故考えることを放棄する?
説教になってしまったじゃんか!
ついでだ、もう一つ!
もっと意味無く自信を持て!
そしてもっと寝ろ!
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第24回
悩める若手達(3)
2002年06月09日

暑い暑い2日間の撮影が終了した
すでに黒いのにさらに黒く日焼けした

気になる若手達だが、
まだまだ悩みは尽きないようだ
どこにいて良いかわからない
次のことが予測できない
言われたこと以外の仕事がわからない。

などなど…。

誰もが通る道であり、
誰もが悩むのだ
沢山現場に出て、
経験を積むしかない
早く仕事を覚えて、
早く偉くなって、
俺を雇うのだ!
そう、俺の目的は君達を
一人前にしようとか、
勉強させようとかではない
俺がいないと
駄目な人間にすることなのだ

単なる私利私欲なのだ!
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第25回
悩める若手達(4)
2002年06月13日

よく考えたら俺だって、まだまだ若手だ。
誰がなんと言おうと若手だ!

年々落ちて行く体力をどう補うか
もの凄く悩む。
自分が動くより、人を動かすことの難しさ…
いつも悩む

そして、どうやって上に行こうか…
これが一番やっかいな悩みである

う~ん

解決の糸口は見つからないまま時は過ぎる
あ~考えたくない。

「助」を取るためのその一。
強く生きろ
前へ進め
努力せよ!

はぁ~
自分に言い聞かせるのがやっとだな
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第26回
悩める若手達(5)
2002年06月15日

先日、数ヶ月ぶりに
師匠から電話があり、
数ヶ月ぶりに緊張する

私の師匠は
元々”日活”の監督で、
現在は企業VPや講演活動を
していらっしゃる方だ
監督はデビューしてすぐの私を
我慢して起用し続け、
私の助監督基盤を作り、
私の無謀な現場作りを
許容してくれた方でもある

素材が足りないから、
デジカムで○○の撮影をしてきて欲しい

「わかりました。いつまでですか?」

「今週中なんだけど…」

「大丈夫です。やります」

どんな予定が入っていても断らないのだから
スケジュールを確認せずに引き受けた。
自分が慕い敬うことの出来る人がいるのは、
とても幸福なことだと改めて思う

あの先日の若手達には…?

* * * * * * * * * 

ちぃっ!
撮影中止だ…
無許可での撮影は、やはり困難か…
からくも逮捕を逃れる私。
そんなに私は怪しいのか?
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第27回
悩める若手達(6)
2002年06月20日

先日、同期の友人が
フリーランスを辞めて就職をした。
どのような心境の変化があったのか…
僕としてはちと複雑な思いではある。

僕も一昨年

「うちに来ないか?」と、

誘われたことがあったが断ってしまった
だって自信がないんだもの…
社会不適合者の僕にはとても無理です

だから、友人をとっても凄いと思う。
適合者なのか君は!
と…
そんな友人から仕事の依頼がきた。
どん底に暇な僕はにべもなく引き受ける。

で、内容は?
…げっ!子供沢山!
うっぅぅぅ…子供相手にもすぐ本気になってしまう僕は、
子供達がとっても苦手。
しかし苦手などと言っている場合じゃない。

ガリガリやったるでぇ~
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第28回
悩める若手達(7)
2002年06月22日

子供だ!
山ほどいる…えっ!85人!子供だけで?
まじかよ…
子供たちは苦手だ…
まかせられないから…

僕はEXが多ければ多い程、
EX自身に任せてしまう。
一から十までやってしまうと
最後まで一から十まで求められるからだ。

子供に命令や怒号は浴びせられない。

だから子供は大変なのだ。

子供たちとその親への対応に
四苦八苦している中の昼休み。
つかの間の食事休憩を取る俺と相棒O氏。

ロケ弁を頬張る俺に、
村本監督からメール。

「~今夜はかねてから頼んであった
夏ふぐのフルコースにトライです。
ロケ弁?それは食事?
僕には分かりません(笑)。~(原文まま)」

こんな食事自慢メールが都合7回送信されてきた。

「ロケ弁を前にした私に、
それは自慢すか?楽しいんすか?」

「…楽しい。」

ひでー
ひでーよ!あんた!

村本監督は悪魔です
みなさん気を付けて下さい。
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第29回
ギャンブル人生(1)
2002年07月05日

実は映画の話が来ていた…
今月から準備して来月に撮影予定だった。
先日予定は流れた…

そして、あのCMの話がきた…
俺も九州へ行く。

先月は全てが裏目に出て本当に酷い月だった。
こういう時は何をやってもうまくいかないもんで、
負け癖というべきだろうか?
勝ち方が解らなくなってしまった。
映画が流れてから良いことない。

7月は勝ちにいく。

 * * *

あんまり暇なんで映画を数本見た。
そこで疑問。
映画だけではないが、
大人と子供で
金額が違うのは何故か?
幼児でない限り
子供だって立派に一人分の席を取る。

何故だ?

まして人一倍うるさくしてる時もある。
だのに半額?

ちなみに「だのに」って
”若者たち”の歌詞にあったなぁ。
全然関係無いけど…
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第30回
ギャンブル人生(2)
2002年07月05日

段々と暑い日が多くなり、
そのうち熱帯夜なんていう
嫌な夜がやってくる。

夏になると思い出す仕事がある。
TVの2時間ドラマで
サード助監督だった仕事だ。

もう4、5年前になるだろうか…

まだ劇団やったりして
仕事仕事していなかった時期だ。
思い出すのが嫌なのに思い出してしまう…
かなり辛い夏の現場。
一日平均300回は

「すいません」

と言っていたかもしれない。

新宿2丁目の裏路地は
蝉の声に包まれていた。
水鉄砲を持ち迷彩服を着込んだ録音部が
蝉を目掛けて水を乱射している。
まだ10時過ぎだというのに太陽はギラつき、
スタッフの体力をじりじりと奪っていく。
カチンコ打ちの俺は、
常にカメラの近くに立ち常にチーフに怒られている。
どうもこの人は俺のことが嫌いらしい。
何をしても怒るんだもん。
カチンコを打っても足元をマークしても…
立ってたって

「ぼーっとしてんじゃねぇ」

と言われる始末だし…

もう何が悪いのか解らない!
確かに致命的な忘れ物や
元々の態度のデカさが悪かったかもしれない。
しかしあんまりに辛かった。

そんな中、路地裏をなんとか切り抜け、
移動した次の現場で
二度と立ち直れないかもしれない
衝撃的な一言を言われた。

撮影が終わりスタッフが
ロケバスへぽつぽつと歩き出す。
次の日は撮休で、
俺はつかの間の休息を味わえると
ニコニコして歩いてた。

とりあえず明日は
怒られないぜ!

しかしチーフが俺を呼び付けた。

「はせ~ぇ!」
「はい!」

ダッシュでチーフの元に走る。

「お前明日から来なくていいから」

「えっ…」

冗談かと思った。
でも顔がマジだった
しかもなんて答えていいか解らない。

「はい。わかりました」か?
「嫌です!勘弁してください!」か?

悔しくて泣いた。

……あそこで辞めてたら
どーなっていたのだろうか?
それは愚問か…

だって怒られたことなんて
10分で忘れちゃうもーん!

後日。奥さんがその頃は寝言で
「すいませんすいません」と
毎日うなされてたよと教えてくれた。

案外弱いらしい。

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