新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

帰ってきたクランクイン

1月23日

■この日記は撮影終了後に
 香盤表を見ながら
 数ある出来事を
 思い出しながら書いたものです。
 若干の思い違いや誇張
 脚色が含まれています。

 ご了承ください。

映画「Watch with Me ~卒業写真~」撮影日記
『帰ってきたクランクイン』

1月23日(火)
撮影スケジュールを演出部が書くのには
やはりそれなりの理由がある。
撮影全体のトーンや雰囲気など
スタッフ全体に今回の撮影が
どんな体制で、どんな内容の映画なのか
スケジュールで演出する必要があるからである。

で、今回の映画「Watch with Me ~卒業写真~」だが
やはり、九州は久留米、
草野町を中心とした映画であるので
初日には、ここしかないだろうと思い
草野町の柿木畑のシークエンスを入れた。
ここは夏に最悪の猛暑の中、
猛烈な豪雨の中…

いや、もう思い出すだけで辛いよ。

そんな思いの詰まった柿木畑からスタートする。





帰ってきた!
福岡県久留米市草野町に!

あの糞暑い夏から…4ヶ月。



寒い。
しかし、冬とはいえ東京に比べ
幾分、こちらの方が温かく感じたのは
たまたまそんな日差しであったからだろうか?

M木が制作にコンバートし
新生演出部となった我々は
また、あの柿木畑の真ん中にいた。
緑がまぶしかった畑の枝は
奇麗に葉っぱがそぎ落とされている。
しかし、冬枯れの印象はなく
むしろ、すっきりとした印象を与える。

冬の柔らかな光り指す中
いよいよ冬篇の撮影がスタートする。


主演の津田寛治さんと羽田美智子さんが
到着する。

予定通りの時刻だ。

現場は緊張ではなく、
期待に満ち溢れていた。
幾度となく読み返した台本
和馬と言う役、由紀子と言う役を
少なからず全員が想像をしている。
これが、夏から参加しているスタッフは
尚更のこと期待している。


文字には、
人の想像を掻き立てる力がある。
映像はある意味、
その想像を打ち砕く力を備えている。
良くも悪くもだ。

役者という商売は大変だ。
そのそれぞれが抱いた
数々の想像を打ち砕いて
いかなければならないからだ。
もちろん、それは演出する監督にも当てはまる。
我々の想像を越える演出をしなければならない。

相当に大変な商売だと思う。

ワンカット、ツーカットと撮影を進めていく中で
想像が確固たる映像に取って代わっていく。
ビジコンの無い割と古いスタイルの現場であるため
カメラマン以外は、どんなフレームでどんな芝居が
撮影されているかは見ることが出来ない。

想像しなければならない。

その素晴らしい想像を信じて
ただ黙々と仕事を進めていく。

きっと素晴らしい芝居が映っているはずだ。

だって、目の前の二人の芝居は
少なくとも俺の想像以上であるのだから…




夕方
撮影が終わり部屋に戻ると
すぐにPCを開き香盤に手を加えていた。

どうやら、スイッチが入ったようだ。
『カチッ』と頭の中のスイッチが
音を立てていた。




映画「Watch with Me ~卒業写真~」
本日クランクIN!




本日撮影したシーン
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