新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

冷っと完成。

1月29日

始まって数分、

僕は自分の選択や考えが

全く違うかもしれないと

内心冷や冷やしていた。

同時にその代換えの手立てを考え、

また、どういう言い訳なのか言い方なのかを

MAとしながらぐるぐると同時に考えをめぐらせた。

今日はMA。

ここに来るまで3ヶ月ほどかかっている。

まず台本を完成させるのが大変だった。

それから撮影して編集に入ってからは

もっと大変だった。

今回のVPの性質上、

本編集をスタジオでせず、

ファイナルカットだけで行くことを決めた。

それにはいくつか理由があった。

金額のことが最初にあるわけじゃない。

常にここのクライアントの仕事では

スタジオで仕上げている。

予算の問題じゃない。

選択肢として今回ファイナルカットを選んだ。

それは、当初から今回のVPには

テロップやイラストなど撮影後の仕上げで

完成されていく部分が多く

また、その部分に関してが一番

修正が入ると思われたからだ。

当然、ここいらの部分を踏まえた上で

仕上げをスタジオでやるという方法もあるが、

それには事前の確認や原稿など

日数や時間、それらの発注など

プラスαが多すぎる。

で、結論としてファイナルカットを仕上げで

簡単なCGやテロップの部分は

こちらで、我々で作ってしまおうという結論にした。

とはいえ、この結論を選択するには

制作兼編集でM久君が参加することが

欠かせなかったことは言うまでもない。

それで、つまりは、

このビデオでは最初で最後のスタジオ作業

となるのがMAな訳だ。

で、僕が自分の結論を否定し始めた理由というのが…

ナレーションである。

通常ならば、この手のお勉強系VPなら

しっかりしたナレーターを呼ぶ。

その方が画面に合わせたタイミングであったり、

秒数に合わせたナレーションを吹き込んでくれる。

が、しかし、僕が選択したのは

役者。

ナレーター経験のある役者。

いや、色々想定した上で編集もしたつもりだったが、

第一声を聞いた時に、瞬間にやばい、違う!と感じた。

で、同時に二つのことを考えた。

今からすぐに来てくれるナレーターはいるだろうか?

金曜日だから事務所も空いているが、

今日の今日で来てくれるとなると

よほど懇意の事務所じゃないと無理だろう。

という考えと、

何が違うのだろうか?事前に役者としても

一緒に仕事をしている人だから

声質とかの問題じゃないはずだ。

つまり、言い方と間なんじゃないか。

台本は感情のあるセリフとは違い

説明書のような文言が並ぶ難解な文章でもある。

センテンスと強弱を付ける部分を

事前にきっちりと教えてみよう、

もしくは僕が一度やってみよう…

ひとつの結論として、

1時間ほど僕が考えたもう一つの方法で

問題があるのならば…

仕方が無いがチェンジするしかない。

そう思い、気合を入れ直し、

ナレーターをコントロールしようと試みた。

役者には色々なタイプの人がいて、

一つとか二つとか片手ぐらいの

タイプじゃ分別できやしないほどだ。

が、少なくてもスタートダッシュが強い方と

中盤から後半になればなるほど強くなる方がいるのは

現実確かなことだと思う。

そう、今、ナレブースに入っている役者は

中盤から後半にかけて強くなる方だったのだ。

そして、最後までナレーションを無事に録り終えて

「…で、最後まで”一応終わりました”」

「はい」

「じゃ、初めっからいきましょうか」

「はい、お願いします!」

ここで、笑ったり、”えー”とか言うようだったら

少し勘違いだなと思っていたんだけども、

やっぱり、ご自分でもひっかかっていたようで

僕が言わなければ、自分から言う気でいたような勢いだった。

さすがというか、嬉しいというか…

やっぱり僕の選択は間違ってなかったと思った。

最後の最後のMixの段階で聞いてみて

いわゆるナレーターの滑らかで快活な喋りよりも

幾分か覚束ないというか、自然な口調で、

一度自分が咀嚼した言葉を(言葉しか)

出せない役者の方が、

耳に、頭に残る感じがする。

やはり言葉は流れてはいけない。

今回の選択は間違ってなかった!

一安心一安心。

とはいえ、プロのナレーターの技も捨てがたい。

出来れば両方を聴き比べてみたい気もする。

が、そんな選択は無い。

だから、毎回不安で不安で仕方がない。

経験や予想で選択をするけれども、

そんなものに確証も確実性も無い。

だから、うまくいった時には

誰にも分からないような処で、

小さくガッツポーズをする。

嬉しくて、楽しくて。

さ、次だ、次!

じゃ!