新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

ファイナルのカット オフライン編集四日目

4月30日
今日は少し遅めに自宅を出る。
それと言うのも、
すでにオフラインはセカンドカットまで
つないでいるからだ。

後は、試写前日辺りまで
ジタバタと短く刈り込んで行く作業のみ。
朝からやっても、昼からやっても
たいして変わらないであろうから、
天気も良いので布団を干してから自宅を出た。



毎度の喫茶店に入る前に
少し早いが昼食を食べてしまおうと
久しぶりに吉野家に入る。
注文は勿論牛丼だ。
こないだ、なんだかまた牛騒ぎがあったようだが、
気にしないでおく。
俺は、今、猛烈に牛丼が食べたいのだ!
そう、過去の日記にも書いたが、
俺は吉野家の牛丼が好きだ。
色々と別の会社の牛丼もあるが、
とりわけ吉野家がベストオブベスト。
あの、少し甘いようなタレというか
乗せ放題の紅しょうがというか、
少し辛味が飛んでしまった七味唐辛子というか、
そんなこんなが生卵で混ぜこぜになった時。

あの奇跡的な味が生まれる。

30も後半に差し掛かると
さすがに大盛りにも特盛りにも
手を出すわけにはいかないけど、
単品では味わえない、
絶妙などんぶりの中の宇宙とでも言うべき
見事なコラボレーションは、
吉野家の牛丼が随一だと思う。
他の会社の牛丼がおいしく無いということではない。

牛丼は全般に旨いものだ。

しかし、どんぶりに宇宙を感じさせるのは
吉野家の牛丼であり、紅しょうがであり、
辛味の抜けた七味唐辛子、
そして、生卵
これらがどんぶりに盛られる時、
それらを箸で救い上げる時、
すでに、口の中では一足先に
予想していた牛丼の味が広がる。
そして、本物が投入された時、
その予想していた味をはるかに越えるものが
口いっぱいに広がっていく…



ああ、吉牛大好き。



そんな訳で至福の時を過ごした俺は
いつもの喫茶店でビターブレンドを発注する。

所狭しに広げられたmacと周辺機器の隅っこに
ビターブレンドが置かれる。
飲もうにも、液晶が邪魔で思うように口に運べない。
急いでアクションすれば、
おそらく取り返しのつかない事態を招くことだろう。
が、ゆっくりとしている場合でもない。

昨日つないだセカンドカットは
25分30秒ほどだった。
今日の目標は、20分。

いや、22分から23分だ。

14時サードカット完成。
更に微妙な間を削り、
長回しをしていたカットをやめて、
押さえで撮影しておいた、
ヨリヨリのアングルに変更する。
細かな間を調整して…

24分40秒。

大きくは減らない。
多分、もっと大きく削るためには
大英断が必要だろう。
シーン、シークエンスを丸ごと抜くといった。
しかし、今、俺にはそんな大英断はできない。
自分で撮ったからでもあるし、
誰の意見も聞かずに、
良いと思ったツナギをみすみすと壊すつもりもない。

もう一度、修正箇所を探しだし、
妙案を思いついたので試してみる。

4thカット。
23分52秒。

うむ、目標の23分台にもってこれた。


そして、これ以上自分では削れないこともわかった。
すでに、芝居の途中で存在していた
微妙なセリフまでもそぎ落としているのだ。
内容に大きな差は出ないのだが、
これは、あまりやりすぎると大変なことになる。

だから、この23分52秒版で
明後日の試写に望もうと思っている。




しかし、VPとはいえ、
内容はドラマである。
クライアントさんも、
修正希望をお願いしますと言われても
かなり困るであろう。

面白いか面白く無いかならまだしも、
すでに台本を読んでいて
しかも、台本に修正まで入れて、
ほぼそれ通りに撮影している。

まあ、演出が違うと言われたら仕方がない。
もっと、違うアングルがあったのでは?と
言われたら仕方がない。
でも、それらには対応できない。
修正できる事柄じゃない。


多分、恐らく、前回のビデオのことを思い起こせば、
修正の打ち合わせで議論になるのは、
○○の内容について分かりやすいかどうかってことだ。
しかし、映像としてはすでに撮影し終わっているから
文字情報で補足するのか、
ナレーションでフォローするのか、
カットの順番を入れ替えるのか…

と、それくらいしか無い。

しかし、これらの選択肢も
今回のナレーションは
主人公の役者さんにやってもらったので
ナレーションの直しすら難しい問題なのである。

八方塞りな試写でもある。

いや、俺は困っていない。
何か問題があれば、
困るのはクライアントさんと、
受注した制作会社であろう。

辛い直しは幾度も経験があるが、
今回の仕事については、
どんな修正であっても

辛いことは無いと思う。

思いたい。




しばらく、睡眠時間が薄かったので
早めに寝ようと思ったけど、
やっぱり、macを開いてしまう…



外付けHDDが
カリカリと音を立てている。







もっと削れるよ、カリカリ、カリカリ、

要らないカットが多いんじゃない?カリカリ、カリカリ、

独りよがりの編集になっていない?カリカリ、カリカリ、

いっそのこと、登場人物減らしたら?カリカリ、カリカリ、

短く感じるように1秒間に1コマづつ、
「短いと思う」ってサブリミナル入れたら?入れようよ!
カリカリ、カリカリ、



HDDに電源が入っていることを示すランプが
透き通ったとても綺麗なブルーなんだけど、
そのランプを見ていると、
ずっと、点灯しているんじゃなくて、
チラチラとしたり、強くなったり弱くなったりしている。
(気がするだけかも…)



青白いHDDの光が言う、

「少し休めよ、これって幻覚じゃねーの?」







じゃ!
(一部に嘘が含まれています)