新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

脱出ゲームの記憶とファミコン。

2月12日
昨日から映画企画用の
シノプシスを書き直している。
新たな要素を盛り込みつつ
前回までは30ページ以上あったものを
10ページを目標に書いているが、
枚数が増えるばかりで
一向に減っていかない。
人の文章を要約するのは出来ても
自分の文章を要約するのは
全くと言っていいほど出来ないのだ。
書き上げてから要約するか…



さて、息子への誕生日プレゼントが届いた。
ハーレーの自転車である。
真っ赤なボディに燃え盛る炎。
黒いサドルにも炎が燃えている。

かっこいい。

自宅玄関前に置いてあった自転車。
帰宅するなり、その真っ赤な自転車が目に入った。
最近は、この手の自動車メーカーや
バイクメーカーが発売する自転車が増えている。
そのどれも素敵なデザインで
自分が子どもだったら絶対に欲しいと思うだろう。



息子も自転車を見るたびに
『かっこいい自転車』と連呼するそうだ。
前から見ても後ろから見ても良いと。
いや、確かにそうだ。
なんやアニメとかキャラの描かれた自転車でなく
ハーレーをかっこいいと言える息子もかっこいいぞ。

まあ、スーパー戦隊効果というか
激しく赤(レッド)が好きなのが原因の一つでもあるが。

息子は早くも補助輪を取って走行したがっているが、
それは無理な相談であろう。
先日まで三輪車だったロクな運転もできなかったのだから。
いきなり二輪走行なんて早すぎるし
買ったばかりで傷だらけなんてのも
ちょっとカッコよすぎるじゃないか。
まあ、もう少し練習しろや。な。

で、自宅の玄関に置くのはいいが
実際、俺が乗っている自転車よりも
1.5倍高い代物だ。
ほいほい盗まれるとは思えないが、
なんとなく不安になるのが人情ってもの。
チェーンも買わないといけないだろう。
また、息子が勝手に乗り回さないためもある。
今日も朝、自転車で幼稚園に行きたいと言い出したし、
パパとママと自分、三人で自転車で
ツーリングしたいと言い出す始末。
それだけ、自転車を気に入ってくれたんだろう。

買ってよかったなぁ。



そういえば、俺は
近所のお兄ちゃんのお下がり自転車を
おじいちゃんがタイヤとハンドルの持ち手、
それとサドル以外の全てを
銀色に塗った物を乗っていた。
間違って違う場所に手でも着こうものなら
瞬く間に手が銀色に染まる。
そんなしびれる自転車だった。

それ相応に愛着はあったが
子ども心に『どうせお下がり』的な
気持ちがあったんだろう、
俺は、その自転車を使って
『脱出』ゲームに興じるようになった。

『脱出』ゲームとは
公園の中央に生えている大木に向かって
自転車を全速力で走らせ
その大木にぶつかる直前に
自分だけが飛び出して逃げるというもの。
単に、自転車を木にぶつけているだけなんだが、
この遊び(一人遊び)楽しくてたまらなかった。
このゲームのポイントは
ぶつかる瞬間に叫ぶセリフにある。
当初は「脱出!」と言って飛んでいたが
段々と「とりゃー!」とか「うおー!」とかの
感嘆の声に変わり、
最終的には
「しまったー!」とか「くらえ!」と
前後になんらかのお話しが
あったであろうセリフに落ち着いた。
悪者の罠にはまって、
そこからの脱出を想像したり
悪者に最後の捨て身の攻撃をしかける想像だったりだ。

バカである。

しかし、そもそも自転車が丈夫だったのか
おじいちゃんの塗装が
強化の役目を果たしたのかわからないが、
そんな乱暴な扱いでも全く壊れることはなかった。
むしろ壊れていたのは
俺の頭の中身だったろうし、
脱出しておいて、自分自身は怪我をした。

バカ過ぎである。

こんな素敵な自転車と最後のお別れを覚えていない。
壊れたのでお別れしたのか?
それとも大きさが合わなくなってお別れしたのか?
どうしても思い出せない。
恐らく誰も覚えていない…




息子には、
こんな遊びは思いついて欲しくない。
素敵なハーレー自転車を
大事に使って欲しい。
自分自身が大きくなって
お別れするその日まで。

どうしたわけか
貰ってとっても嬉しかったプレゼントの
お別れが思い出せない。
いつか覚えている物もあるが、
思い出すのは楽しかったことばかり。



ある日のクリスマスイブ。
母に土下座する勢いでお願いした
ファミリーコンピュータ
12月24日におもちゃ屋に行っても
当然のように売り切ればかりで…
母に、他のおもちゃにしなさいと
何度も何度も言われたが
何軒も何軒もおもちゃ屋を回った。
子どもの頃の自分の記憶では
横浜中を回った気持ちであったが
多分、それは違うのだろう。
でも、そんなくらい回ったと記憶している。

夕方を過ぎ、夜になって、
ここで最後よと言われたおもちゃ屋で
見つかった最後のファミコン
一緒に買った『くるくるランド』。

なかなか配線できなかった
TV裏での格闘。


でも、そんな大好きだったファミコンとの
お別れは記憶にはない。
大事に大事に、
毎日使い終わると箱に入れて保管していたのに。
あの、箱の中の配置まで覚えているのに…





どうか、ハーレーの自転車が
息子にとっての
そんな記憶の一部になってくれることを願う。



じゃ!