新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

真夜中にギターは鳴る。

9月6日(水)

■この日記は撮影終了後に香盤表を見ながら
 数ある出来事を思い出しながら書いたもので
 若干の思い違いや誇張や脚色が
 含まれていますのでご了承ください。

映画「Watch with me 卒業写真 夏篇」撮影日記

今回の夏篇では
事前に仕込んでおかなければならない
作業が目白押しだ。
草野風流しかし、
ヒロイン古都ちゃんの稽古しかり、
大地君のギターしかりだ。

しかし、それも、今日までのこと。

今日で仕込んでおいたほぼ全てが終わる。
3日の誕生日にギターの腕前を
披露した大地君だったが
その日は歌までは歌わなかった。
これは、映画を見てのお楽しみということなのだろう。

”歌え!”と言ったのに
歌わなかったのだから
よほど、このシーンには力を入れているはずだし
入れてもらわなければ
おじさんは烈火のごとく怒りますよ。

ギターの指導には
久留米は草野町が地元の
中山洋一さんがあたってくれている。
失敗は許されんぞ大地!

9月6日(水)【真夜中にギターは鳴る】

今日も、室内撮影である。
昨日が深夜までの作業であったため
心優しい俺は
午後近い11時からの準備開始とした。
準備して、昼飯食って撮影しようぜと。

いや、本当は、昼間に撮影するシーンがないのだ。

あれば、やったさ。
もちろん香盤に入れたさ。
それが、スケジュールを預かる俺の役目だから。


で、午後からの撮影だ。
内容は夕方、部屋にやってきたひとみに
和馬がギターと自作の歌を聞かせるところ。
よくありそうな設定ではあるが
30代のオッサンが
そんなことするよりも
10代の若者がやれば
それなりに絵になるというもの。
初々しい感じと
見ていても恥ずかしい感じがする。

ああ、10代に戻りたい。

それはそれとして、
ギターのカットが近づくにつれ
大地は緊張してきたようだ。

中山さんもやってきた。


「じゃ、大地、今までの練習の成果を」

「・・・はい」

本番でいきなりなんてやらせません。
ちゃんと事前にチェックします。
やりぬくいだろうからと
中山さんと二人だけにして
ギター&歌の練習というか実践。

いつ、どこで練習していたのか
全くわからないが
大地のギターはいい音を出している。
歌も撮影準備の時に
カラオケに行った際聞いたが
なかなか上手い。



「あー、うまい。
 これなら全然大丈夫ですよ」



ニヤッと笑う大地。
当たり前じゃないっすかと
言わんばかりな表情だ。
自信たっぷりな。

その自信があれば大丈夫さ。

俺たちに必要なのは
過度な自信と
過度な心配。

根拠の無い自信は
人を人一倍大きく見せる。





数時間後。
1階にいた俺の耳に
大地のギターが聞こえてきた。
本番が始まったようだ。

「カーット!OK!」

一発OKかよ。
やるな大地。








2階は地獄のような温度。

1階で俺は、大地の笑顔を思い
次の日のスケジュールを考え始めた。


なんだか、今日は、
撮影現場に入れないのが寂しい気分だ。






明日もよろしくな、大地、古都。



今日撮影したシーン
S#65 52 52A 65A