新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

稽古開始!

8月16日
夏篇の主役である子役・・・
といってもすでに、
ほぼ大人の体格ではあるが
その子役二人の稽古が
今日から始まった。

そのどちらも
オーディションで選ばれた精鋭である。



まずはいきなり監督から出された宿題の
答え発表から。
出された宿題というのは
自分が担う役柄について
脚本を読んで感じたこと思ったことを。

答え発表というが
実際にはその答えには
正解も不正解もない。
しかし、では、その答えのままでいいのか
といえば、それはまた違う。

あるのは方向性であり
イメージであり
この映画の進むべき、
目指すべき映像である。

それは、生憎、監督の頭にしか存在しない。


今日は、まず、そのすり合わせから。

ひとつひとつ、監督が出された答えに対し意見を言う
どうして、そう思ったのか?
そうではなく、こう考えることはできないのか?
そうすることで、監督のイメージする芝居を
二人にイメージさせていく。




稽古場にあるパイプ椅子や長机をならべ
簡易にセットをつくり
芝居場を設定する。
具体的なイメージを作っていくためだ。

ひとつひとつシーンごとに
時には台詞ごとに
イメージを刷り込んでいく。


僕は横で稽古を見学しながら
現場を予想する。
具体的に言うとだ、
撮影にどれくらいかかるかの予想の一つにする。
通常の役者相手であれば
大方の予想は立てられるのだが
相手は、何が飛び出すかわからない子役である。
常に良いこともなければ、
常に悪いこともない。
練習してうまくなるタイプもいるし
最初の一発目以降は悪くなるタイプもいる。

この辺りの判断が大変に難しい。

そして、俺は、横目で見学しながら
来るべき撮影の日々スケを作成する。



初日の撮影の出発時間は
撮影終了予定の時間は
飯を入れるタイミングは
エキストラの集合時間と場所は
この現場にかける準備時間は

少し前にも書いたが
脚本・芝居という国語であり体育を
数学と社会に変換していくのである。
どんな場所で、何時から何時まで撮影するか
狙いの光りの時間帯は何時で
その時にあわせるのに
どの方法を取るか。

この数学問題の答えは
現場にしかなく
終わった時にしか
厳密な答えはわからないし
その厳密な答えは
数学ではなく、国語であるのだ。


全くわからないかもしれないが
香盤通り、予想通りにいかなったとしても
素晴らしい芝居が撮影できたのなら
その香盤は不正解ではなく
正解だったのだ。
スケジュールにはめるだけの香盤なら
誰が書いたって同じものなのだ。


こういう撮影にしたいという
明確な意思のもとに香盤を書く。





当たり前のようで
一番これが難しい問題である。






中野大地はメキメキと
色男になっていき
高木古都はツヤツヤと
色女になっていく。

芝居をする動物は他にもいるだろうが
芝居を見て感動する動物は人間だけであろう。


期待してるぜ
大地君、古都ちゃん。





と、発声練習がてら
仕事として、二人をカラオケに連れていく。
二人に関係性のこともあるが
初日は優しく、優しくしてあげる。

芝居のことを難しく考えられても仕方ないし

初日だが、
気休めとして考えよう。


「ありがとうございました!」

「いや、ありがとうなんて言わなくていいよ
 現場の芝居で返してくれよな」

「・・・はい!」

と、古都ちゃんが嬉しそうに親指を上げた。
大地君は大きな笑顔で
それに答えてくれた。

ちょっと安心した。





お疲れ。
お父さんの心境になったのが
俺としてはちょっと微妙。



じゃ!