新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

そして、撮影だ。

3月11日
久しぶりの、本当に久しぶりのCM撮影。


CM撮影はいつもの撮影よりも
多少、気合が入る。

それは、CMの方が視聴回数が多く
また、自分が作ったCMの前後にも
諸先輩方が作ったAクラスCMが流れるからだ。



だから、色々と気を使いながら撮影する。

んだけども、やっぱり途中で
力を入れる場所が変わってしまうんだなぁ。

結果オーライだと思うけど。





さて、今回のCMも
今回のプロジェクト全体含めて
色々と「初めて」が多い仕事となっている。

クライアントさんもCMを作るのが初めてだし
制作会社もCMを作ることは初めてだったりする。

そうするとおのずと
経験者は僕しかいないってことになって
責任もそれ想像以上だったりもする。



まあ、色々と言いたいこともあるんだが
言っても始まらないし、始まっているのだ。


仕事はすでにゴールに向かっている。


撮影が始まったということは
もう、終わりに向かっているということ。

生きている限りは死ぬということ。




ふと、香盤表を見た。
3月11日だ、今日は。


誰が言い出した訳じゃないが、
黙祷しようじゃないかということになった。

あの時間に撮影なんてしてられないよね、と。

当然だ。


撮影は千葉の海岸沿い。

ここ千葉も報道は少なかったが
かなりの被害があったと聞く。

「どっち方向かな?」

「あっちです」

スタッフ全員で一つの方角に向かった。

スタッフがスピーカーホンで時報を流してくれた。



「2時46分ちょうどをお伝えします…」




今撮影していることなどを
全て忘れて黙祷した。

あの日のことを思い出した。

あの日から全てが変わったと言う人もいるが、
僕の場合は徐々に変わっていった。

進めていた仕事は無期延期になり
当然ながら翌月に振り込まれるはずの
ギャラも振り込まれず…

途方に暮れるというよりも
なんとかしないといけない。
そんな思いだけが頭にあった。

営業のメールも電話も
結果は同じだった。

どこも状況は同じだった。

この時ほど会社員が良かったと思った時はなかった。
仕事がなくても、給料は貰える、
満足いく金額かどうかではなく、
毎月、決められた金額が振り込まれる幸せ。

まあ、そうでなくなった人も大勢いただろうけど。

でも、電話した大半の人たちは
そういった会社員の人たちで
仕事が止まった、無くなったという危機感を
どこまで感じていたかなんて分からない。

そんな状況の中でみつけた仕事先が
今、このCMを作っている制作会社だった。


アルバイトからのディレクター登用、
そして、契約ディレクター。
期間も6ヶ月、1年間と伸びた。

仕事の内容も
僕が今までやってきたものに近くなってきた。



そんな頃合いのTVCM&インフォマーシャル。


色々とあるけれど、
何か、思う度に、こう思うことにしている。


「これも恩返しだ。何か怒る前に、立ち止まって考えてみよう」



僕が企画・演出したTVCM、インフォマーシャルは
放送はなんと4月です。


地上波ではありません。


じゃ。