新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

フーッ!とするのだ。

1月6日
ほんの一瞬だった、
トイレに入るためドアを開けた時、
手に持っていたiphoneとドアノブが
いわゆる喧嘩する形になるのは避けるために
ほんの少しだけ手の力を緩めた瞬間。

するりと僕の手からiphoneがすり抜けて
床に落ちて、数回バウンドした。


これで、僕が大金持ちであったなら
床が総大理石張りで
そもそもトイレなんて、
おいおい、これ部屋かよ!ってくらい
広かったら完全アウトだった。

ケースに入っていたものの
角から落ちたようだったし
高さ的にも僕の胸のあたりだから
大理石であったなら僕のiphone
割れていた可能性が高い。



けども、僕の家のトイレは大理石では無いし
大理石の部分すら全くないので
可能性を探ること自体がもはや不毛な作業だ。

で、僕のiphoneはフローリングに落っこちた。

すぐに拾って外見に何も無いことは確認した。



うん、全然大丈夫。
なんの問題も無い、ケースに入れていたから
細かいキズすらついてない。

と、ホッとした時間なんて一瞬だった。


「あれ?」

iphoneの画面に見慣れない文字が表示されていた。


SIMカードが挿入されていません】みたいない。


は?

SIMカードと言えば
携帯電話などの通信機器でいうところの
認識表というか、どこの会社と契約してるかとか
そういった情報が記録されているカードだ。
電話帳なんかも記録できるらしいけども…

とにかく、このSIMカードが認識されていないということは
僕のiphoneは電話を掛けることも、受けることもできない。
そもそも電話が鳴らないってことになる。
ただ、自宅だから無線LANだけは拾っているので
電子メールとかインターネットは見られるけど。



これは相当ヤバイぞと思い、
すぐにiphoneを購入した時に入っていた箱を出し
中からSIMカード取り出し用のピンを使い
念のため抜き差しして確認した。


何回か再起動もかけてみた。

それでも僕のiphoneSIMカードを認識してくれない。

すぐに思い浮かんだのは
明日には家族が帰京してくるので
その連絡が取られないことへの不安と
かなり不本意なタイミングでiphone5へと
機種交換しなければならないってことへのいらだち。
かなりめんどくさい。

だが、iphoneは一向にSIMカードを認識しない。

時計を見ると18時を少し回ったところだ。

だから、すぐにジャンパーを羽織って
近所にあるソフトバンクショップへ行った。
8割はダメだろうと思っていたけれど
どっちみちショップには行かないといけないからだ。

財布とか免許証とかを持って飛び出した。

ショップは空いていて、
すぐに店員に兄さんが対応してくれた。



「あ、SIMカードを認識してくれなくなっちゃって!」
かなり悲痛な叫びに聞こえるように、
見えるように訴えた。









そこで僕は衝撃的な光景を目にしていた。






ソフトバンクショップの兄さんは
SIMカードを取り出すと、
一瞬、金属面に目を凝らして見たかと思ったら
次の瞬間、、、


「フーッ、フーッ!」


としたのだ。
現在年齢が35歳以上の方なら覚えがあるだろう、
任天堂ファミリーコンピューター(初代)
長年使っていると、カセットを指しても全く反応がしなくなったりして、
そんな時、ファミコンカセットをひっくり返して
絶対に触ってはいけませんと説明書にも書かれていた
あの金属部分に息を吐きかけたでしょう?


カセットの接触が悪いのは、
カセットの金属面の部分にホコリたまり
そのホコリがファミコンとカセットとを
引き離しているに違いないからだって。


絶対にやっていたはずだ。

誰が始めたのかは知らないけれど
皆が誰に教わったのでもなく、始めた。

ちなみにそれから何年も経って、
プレイステーションがブームになり
カセットがCDROMになっても



「フーッ、フーッ!」は続いた。


何か問題があると
プレイステーションの蓋を開いて、
あの読み取りレーザーの出るレンズ部分に
息を吹きかけたでしょ?


不思議なことにそれで
なんとかなるってことも多かったから
なんとなく、これは有効な手立てなんだと
子どもながらの民間療法として確立した。


それから何年だろう…


多分、僕よりも10歳近く若い兄ちゃんが
全く同じ発想で「フーッ、フーッ!」とやっている。






今なら、それがどれだけ無駄なことかを知っている。



もっと言えば、無用な湿気や水分が
金属部分に付着してしまい、
金属部分を錆びさせたりしてしまうのだ。


だから、兄ちゃんのその行動を見た時の
第一印象は懐かしい行動だね、ではなく、

はぁ?何してくれてんねん!だった。



そんなことをやりながら
別の端末でチェックをしたりして
どうやらSIMカードの問題ではなく
iphone本体に問題があるようだということが判明。


それはつまり、
iphone5への機種交換へまっしぐら、
猫まっしぐら、
マシンマッシグラーでブーンってくらいだ。




えー!っと諦めというか
こんなタイミングで機種交換とか嫌だ!



すると、僕のiphoneの表示に変化が。


兄ちゃんは、SIMカードではなく、
本体の調子が悪いことを突き止めた後、
僕の端末にSIMカードを戻した。

更にダメ押しの「フーッ、フーッ!」をしてから。





そうやって戻されてから
表示に変化があった。

「SIMなし」と左上に表示されるはずだったが
その部分には「検索中」と出た。


と次の瞬間
僕のiphone4は3G電波を拾ってくれて、
何事も無かったように通常業に戻ってくれた。




「あ、な、治ったよ!」


「え、本当ですか。良かったですね!」
「でも、このままだといずれ認識しなくなるかもしれませんよ」



と畳み掛けるように言われて、
今ならiphone5が割引料金で…




「いや、いらないよ、iphone4直ったし」



「ですよね」









物っていくら大事にしていたとしても
年月が経てば経つほどに
愛着がただの執念に変わってしまうものだと思う。
あれだけ大事に扱っていたiphone4なのに
廊下に落としても全く同様なんてしなかった。


だからこそ、トイレの前で油断が生まれ、
今までiphoneを落としたことなんて全然なかったのに
この言わば、慢心とも言える、堕落した心が
僕のiphoneを落としたのだ。

つまり、これは不可抗力なようで
実は自分で、自らが引き込んでしまった事故、
いや、人災とも言うべき状況。





今後は気をつけよう。





なにはともあれ、
iphoneが直ったのはありがたい。

そして、いくら、どれだけIT機器が発達しても
僕らは、僕らの次の世代も、
電子製品の金属部分を



「フーッ、フーッ!」とやるのだろう。



素敵なことだと思う。





願わくば、僕のような
あのフーッ!は金属部分をサビさせる恐れがあるから
逆にやらない方が良いだよ、常識だよ!と言う人間が
これ以上増えないで欲しいと切に願うだけだ。


これが要因かどうかは全く分からないけれども、
すくなくても僕のiphone4はフーッ!フーッの力で復活した。






あああ、フーッ、フーッ、と言えば夫婦だ。





早く、奥さんと子どもたちに会いたいなー。

会ったら会ったで色々と大変なんだろうけどさ。







あ、そう、うん、

だから、今度、自宅のPCにフーッ!っと
やってやろうかと思ってるんだ。






景気づけにね。






じゃ!