新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

ただ、安らかに。

7月7日

数ヶ月前にミクシィを通じ

旧友から連絡を受けていた。

高校時代の友人が入院している。

僕は、横浜市内にある工業高校の出身だ。

工業科の中でも僕は機械科2組だった。

わざわざ2組とするのは、

3年間ずっと2組であったし、

その3年間でクラス替えも無かったからだ。

たった二クラスだったからと言えなくもないが、

僕は高校2年の時、担任に呼ばれて

こんな質問をされたことがある。

「2年の終わりにクラス替えをしないといけないんだが

 長谷、お前はクラス替えをした方が良いと思うか?」

今までは僕の意見が通った!とずっと思っていたけれども

今思えば、そんな一生徒の意見が尊重されたハズはない。

ただ、僕だけでなく、他の連中の答えも全く同じであったとしたら

僕だけでなく、全員が同じ質問をされて同じ答えを出していたとしたら。

今から確かめようと思えば確かめられなくも無いが

かなり面倒だ。やめておこう。

ただ、3年間僕らは同じクラスにいた。

高校時代の思い出は、

今思い出すと恥ずかしいくらい光っている。

それほど楽しかった。

何をするにしても、心許せる友人たちがいて、

毎日バカな話しをして、毎日真剣な話しもした。

ふと、ある日、

自宅の棚を整理していた時

高校時代に作った映画や

担任の先生が修学旅行を撮影した映像が収録された

ビデオテープが見つかった。

見つかったというより、ずっとあったけども、

思い立って整理しようとした。

ビデオをDVDにしようと思い

デジタル化作業を始めた。

当然、ビデオはアナログなので

パソコンで見ながら等倍での取り込み作業だ。

高校時代の映画はともかく、

修学旅行の映像には、ショックが大きかった。

約20年前である。

不思議なことに20年前を見て、

当時のことが頭をよぎった。

こんな古い記憶があることがショックだった。

その日の夜だ。

旧友の入院を知ったのは。

ほんの数時間前に見たんだ、こいつを。

元気に、のんきに、バスの中で歌ってた、

チェッカーズの星屑のステージを歌ってたんだ。

メールには今度お見舞いに行こうと書いてあった。

僕は他の友人たちに連絡をとって

見舞いにいってやってくれと言った。

「俺は、仕事で東京に居ないからいけない」

何様のつもりだろうか。

友人の見舞いにもいけないのに、

他の奴らに行けと言う、行けと強要する。

ひどい奴だよ、俺は。

地方ロケ先で、

見舞いに行ってくれた友人から電話をもらった。

高校を卒業してから疎遠だったけれども、

僕の頭の中にはチェッカーズを歌う姿が焼きついている。

電話から友人が

入院した友人の様子を教えてくれた。

そのギャップに耐えられなかった。

泣き崩れた、耳を取ってしまいたかった、

目の前にあった鏡をたたき壊したかった。

その場から逃げ出したかった。

すぐに東京に戻りたくなった。

ビックリするほど泣いた。

止まらなかった。

何故、あそこまで泣いたのか正直分からない。

ただ、思い当たるのは、色々重なったこと…

でも、僕は薄情なもので、

こうして暇になっても見舞いには行っていない。

絶対に後悔すると思っていた。

だから後悔したくないと考えて行動しようと思っていた。

でも、こうして後悔している。

今日、訃報の連絡がきた。

友よ。

僕の記憶の中で、君は歌っているよ。

一番後ろの座席だったから

目をこらしながらカラオケを歌っているよ。

あの修学旅行の後、

何故か、俺も誘われて

卒業旅行に熱海に行ったよな。

ストリップにいって、

目を覆いたくなるような

外国人ダンサーに囲まれて…

俺のメガネがダンサーに取られて…

ああ、あのメガネは廃棄処分だよ。

良くも悪くも、

俺の記憶はそこで止まっている。

お前との記憶はずっと、

あの頃で止めている。

進めるつもりも無い。

ただ、安らかに。

長谷巌一郎