新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

燃えるクランクイン

2月25日

僕が現場である会場に入った段階で

すでにエキストラは熱気を帯びた、殺気立った湯気を放ち、

現場のガラスは白く曇っていた。

時折、窓を開け換気をするけれども

人数が発する熱と、芝居で湧き上がった熱とが

会場の温度を数度上昇させているに違い無い。

多分、僕が助監督であったなら

ここが自分にとっての大きな見せ場だと感じて

心底張り切ることであろう。

大人数のエキストラ、

静かではなく、オーバーな演技、怒号、罵声、

どう芝居をつけたとしても、

大きな間違いはなく、ほぼ自由にやれる。

それが、今日のこの場所だ。

そう、僕が助監督であれば思うだろう。

もちろん、今回のスーパー演出部

K君もそのつもりだった。

僕が現場に入った段階で

すでに芝居の基本はついていた。

だから、この熱気がすでに会場を包んでいたのだ。

「よし、やろうか」

僕は初日の今日、

クランクインの今日、

何度も言った言葉を、

これから数日間何度となく言う言葉を叫ぶ。

「よーい! ハイッ!」

僕が燃える必要は無い。

ただ、演出部が燃えてくれさえすれば

現場は熱く熱く燃え上がる。

後はそれを切り取るだけ。

初日の撮影は、

これ以上ない程順調だった。

今日のシーンは

ほぼ助監督K君のもんだ。

ありがとね。

いただきます。

じゃ。

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