新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

見せ掛け

4月14日
最近の天気予報はよくあたる。


のか?



1時間ごとの天気予報通りに雨が降り
18時からは強く降りますと書いてあれば、
18時10分にはドババっと降ってきやがった。







なんとか、準備パートの合間を縫って
エキストラを配置して三つのパターンを作っておいた。
予定通りでないアングルからのshootでも
すぐに対応できる体制である。

が、今目の前のエキストラたちは
雨合羽を着させられて、
狭いテントの中にギュウギュウに押し込められている。
夕景の撮影だというのに、
すでに外は真っ暗で、
暗がりの中に色とりどりの雨合羽が
ちょっとした明かりの役目を果たしている。

もう何人かの制作部は
今日の撮影は中止で、次回の策はトップが練っている…
そういう感じの動きにしか見えなかった。
それはスタッフにももちろん伝わっていて
すれ違うたびに、中止だろ?と挨拶のように声をかけられる。

「いえ、そんな話しは聞いてません。
 僕はやるつもりですし、やれる状況を作っています」

そう言うと録音部はたじろいだ。
あやふやな情報は方々から飛んでいるが、
決定した情報は聞いていない。
聞いていない以上は、よーい!と声がかかるのを
準備万端で待つ必要がある。
今回、香盤に関わることがほとんどなかったので、
より一層、確定した情報にこだわった。
一番取り返しがつかないミスってのは、
勝手な判断で勝手な行動を取った時なのだ。


雨足が強くなり
さすがに雨合羽を着た。


僕が雨合羽を着なければならないということは。


もう、考えたくても決まりきった答えが頭をよぎる…







午前中。
朝早くから撮影を開始したが
思うように進まない。
香盤では11時30分には撮影終了しなければならない。
最悪でも13時には現場を出て次の場所に移動しなければ
夕景の準備に間に合わない。

が、13時の段階で残り4カット。

どう考えても無理だ。


選択は二つあった。
一つは、途中でも中断して移動する。
二つ目は、ここを最後まで撮影しきってから移動。
その場合、夕景の準備に間に合わないがどうする?

通常なら一つ目を取るだろう。
同じ場所での撮影チャンスはまだある予定だからだ。

が、僕の意見は違かった。
ここを撮り切るべし。
二日連続して残を出すなぞあり得ないのだ。
確かに、夕景に準備が間に合わないという話しだが
それには、絶対に言わないであろう猶予の時間があるはず。
その猶予の時間がクオリティには絶対必要であるのは
充分に理解をしているのだが、
毎日毎日残を出しているのは良い状態ではない。
全ての残を処理できるだけの日数があるなら良いが、
そんなことは映画でもあり得ない。

たかだか二日目で6カット以上の残ともなれば
今後の数日でいくつ残を出すつもりか?

だから、僕は強行に制作陣に
ここを撮り切るべきだと主張した。
現場で大急ぎとなる撮影部と照明部は
反対というか、どうなっても知りませんよと。



しかし、結果的にはこれでよかった。
撮影部と照明部は鬼のスピードで
夕景準備を済ませてくれて、
撮影予定時刻にピタッと合わせてくれた。
僕の担当するエキストラ陣営も
三つのパターンを記憶して
すぐにでも動ける状態にした。

が、結果としては、
夕景時間を過ぎ、辺りは暗くなり、
状況としてはナイターの形相。

設定をナイターに変更できるのなら変更したい。

でも、それは無し。
あくまでも夕景なのだ。
その部分を変更することは出来ない。

つまりは撮影中止。

いや、準備だけしかしてないんだけども…



非常に残念だ。



しかし、少なからずとも
制作陣営の連中には
見せ掛けだけでも
今日ギリギリだけでも撮影するという
形を取って欲しかった。



実はそっちの方が残念だった。



じゃ!