新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

事態は寝返りを打つようにひっくり返る。

5月22日
ある事情からロケハンした情報の確定が
数日遅れることから
確定の情報を待たずして
先行してメインスタッフでの
ロケハンスケジュールを組むことにした。

想定として、
大きなNGが出ないことが前提である。
その前提でなければ
先行したスケジュールなど組めやしない。
とはいえ不安要素が無いわけではないんだが、
どうせ作るものであるし
下地だけでもあれば次の一手も早い。
まあ、そのまま使えるのがベストであるが。



いつもの喫茶店で
PCを広げて作業を開始する。
全てのカットに対しての
ロケハンが済んでいるので
いちいち資料を見なくとも
カタカタと打ち込める。

昼過ぎ。
ほぼ全ての打ち込みが終わり
スケジュールの見栄えの調整をやり始めた頃。
目の前で携帯が鳴った。
相手先は、今回の制作会社からだった。

ドキリとした。

何故なら、
電話が来ることイコール
何かあったということだからだ。
それは、先日打ち合わせが終った際に

「ロケ地のOKが出たら電話します」

「いや、OKなら電話くれなくていいよ。
 先行してスケジュールは組むからね、
 確定を待っていたら時間を損するしね」

「わかりました。なら、NGが出たら電話します」

「うん、そうして」

つまり、この電話はどこかのロケ地から
NGの連絡が来たということに違いない。
もしくは、NGをかわすための相談か…



僕はほぼ完成したロケハンスケジュールを開き
電話を取った。
撮影時間の設定や撮影日時の変更なら
充分に相談できる余地がある。

どんと来いや!



いや、どんと来られても困るっていう内容だった。
いとも簡単に最重要場所としていた部分が
割とムゲな形でNGを出された。

そして、別の場所なら打つ手もあったんだが、
特にここに関しては、
もう、次の一手が無い。
かなり一大事である。
しかし、ここでバタバタと焦っても
事態は好転するはずは無く、
残された時間を使い、
全く新しい形で次の一手を考えるしか無い。


状況はあまりにも不利に働いている。
9回に形勢逆転を放ったつもりだったが、
実は9回ではなくて7回であったようだ。
我々は8回に逆転をされてしまったのだ。

子どもが布団でゴロゴロと寝返りを打つように
いとも簡単に事態はひっくり返ったのだ。





とりあえず、ほぼ完成しつつあった
ロケハンのスケジュールは使えない代物になった。
ただのデータに成り下がった。
しかし、白紙ではない。
ここが重要なのだ。

決して白紙に戻されたわけじゃない。

9回の打席に4番が回ってくる。
それは俺じゃない。






あいつだ。





じゃ!