新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

フルドラマVP 撮影三日目。

4月25日
今日は盛りだくさんの内容である。
VPとしてはメインの舞台設定となる場所であり
クライアントさんの会社内での撮影でもある。
色々気を遣わないといけないし、
とはいえ、ちゃんとした物を作らないとならないし。

朝7時00分。
午前中はとある居酒屋さんでの撮影。
ここでは、まさに主人公たちが
酒を飲んで騒いでいるというシーンなんだが、
このお店が11時30分には
ランチ営業をするそうなので、
都合11時までに撮影を終えて
撤収しなければならない。

そんな融通の悪いロケ先を探してくんな!とは
あえて、言わないし、言ったところで
他に場所は無い(らしい)
まあ、準備時間を入れても
4時間もあるのだから
ゆっくりやっても終るであろう。

そう、かなり軽く考えて現場に入った。

すでに制作部や技術が準備を始めていた。
俳優部も着替えやらメイクを始めている。

現場は準備中で、役者は仕度中。
そうなると、僕にやることは無い。
ただ、邪魔にならないように
端っこに座ってタバコをふかす。
他のスタッフはガンガン働いているのだから
かなり申し訳ないし、邪魔な野郎だと思うが、
そんなこと言っても仕方が無い。
手伝おうとすれば、

「そんなことしなくていいですから!」

と、言われてしまうからだ。
つくづく、甘やかされる職種だなぁと。

暇だから、その待ち時間に
台本を広げてカット割りを考えてみる。
でも、芝居を作っていないので
厳密には割れない。
文字では判明しない
人と人との間とか感覚みたいなものは
やっぱり動かして、見てみないと分からない。
事前に決められるのは座る位置とか
こうなるかもしれない、という方向性だけ。

まあ、こんなことは
助監督からやってきていることなので造作もない。
しかし、そこから先は全く違う。
実際に俳優を現場に入れてからが違う。
基本的に、いや、当たり前だけど、
役者たちは台本を覚えて、セリフを頭に入れている。
いちいちセリフを確認してもしょうがない。
事前説明はしてあるので、
すぐにテストをする。

台本通りならOKかというと違う。
やっぱり狙いの方向性というか、
想像していた芝居があるし
それらと違うと、やっぱり見ていて違和感がある。
その違和感が内容にとって
正解なのか不正解なのかは
正直分からない部分もあるんだけど、
ここを頼りにOKとNGに
明確なラインを引いておかないと
ただの優柔不断な演出になってしまう。
明確な言葉を発するわけではないが、
明確な答えを持っていなければならない。

違う、なら、何が違うのか

人間には大変便利なコミュニケーションツール
言葉というものがあるのだが、
その言葉は得てして厄介なものになる。
ほぼ確実に具体的なイメージは
言葉では表すことが出来ないからだ。
少なくとも僕には難しい。

それは、下手をすると
芝居を間違った方向に導いてしまう。
いくら言ってもどんどん、
どんどん芝居が悪くなっていく。
もうそなると取り返しはつかない。
そして、それだけは避けなければならない。

今日はエキストラで
クライアントさんが大挙して来ているのだ。
演出している背後からも
そんな視線がガリガリ飛んでくる。
ガンガン意見を言ってくれれば
まだ楽なんだが、
そこら辺は、大人というか、
誠実な方々が揃っている。
大人として社会人として
発言するタイミングをしっかりと見ているのだ。

当然だが、僕にそのタイミングは見つけられない。
ほぼひっきりなしに、
役者に話しかけているか、
現場で指示している。
口を閉じている時は
モニターを凝視している時で、
そんな時に話しかけると
I嵐のように怒鳴り散らされると
恐らく思っているのかもしれない。

だから、余計に視線だけが突き刺さる。

時折僕は、そっちに視線をやり
反応をうかがう。
少し、不満があるのか、納得しているのか、
気が付いたらドンドン言ってくださいね、
と言ってみるが
先日の撮影の時、
I嵐があまりにもタイミングの悪い時に
あまりにもタイミングの悪い発言をして
怒鳴られたのを見られているので…

こうなるとやっぱり僕の方から
確認を取っていかないとならないよね。




少ししんどかったけど
予定より1時間30分をまいて終了。
いよいよ、クライアントさんの会社に向かう。



今日の撮影を終えると
約3分の2を撮り終えたことになる。

感触はいいんだが、
完成尺にはめられるかどうかが
早くも心配になっている。


このままだと
普通に繋げば、
30分はゆうに越えるだろう。
いや、40分でも足りるかどーか…

そこを20分にしないとならない。
つーか、初めから20分っていう
約束だったのだ。

忘れてました!って言いたい。




実は、一昨日に
クライアントさんに聞こえるように

「20分じゃ足りないなぁ、
 つーか、かなりオーバーしちゃいそうだ。
 それに内容的に短くできないし…まいったな」

「え!」

すぐにクライアントさんは反応した。
多分、20分前後という完成尺は
かなりマストな尺なのだろう。

「勘弁してくださいよぉ」

「いやいや、約束は守りますよ、ちゃんとね」

うん、これは20分とか言って
30分ではまずいってことだな。
何分何秒までの縛りはないけど
20分前後っていうアバウトな縛りは
有効なのだ。





すでに編集が心配だ。




三日間でスケジュールを組んだが
それにはまるだろうか?
間に合うだろうか?


予測不能。


でも、面白いものになることは
間違いないと言い切ってしまおう。


皆に見せられないのが残念無念。



じゃ!