新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

きっと…

4月24日
いつになく緊張した。
だって、今日は軽い顔合わせで
打ち合わせとかの前段階も前段階で
ちょろっと話しをしたいだけ…的なことだったから。

が、ちょうど呼び出された会社に行くと
すぐに社長が出てきて

「ああ、長谷くん、よろしくね、
 知ってるよね?今日のこと。」


「ええ、顔合わせですよね?」

「うん、そう、だからプレゼンよろしく。」

「え?プレゼン?ですか?」


よくよく聞いてみるとだ、
まだ、確定はしていないが
動き出す予定のあるVPに
この社長は僕を演出として起用したいと
考えてくれている。
それで、まだ、動いてもない仕事なのに
動く前に地固めをしておくべく呼んでくれた。

まあ、そんなことは僕は露知らず…

動いてはいないが、
動いたら確実に僕が演出で…と考えていた。

そう、そう、そうなのよ、
世の中そんなに甘くは無い。
すでに数年シリーズでやっているVPで
シリーズで担当していたディレクターがいたわけだ。
つまりは、その方の方が、
何かとわかってくれているし、
細かい説明を省けるし早い。

そこを社長はこじ開けてくれたのだ。

が、こじ開けたけど
中に入って信用されるかされないかは

そこんとこよろしく!
なのだ。

「あの、出来る限りのバックアップというか、
 援護射撃はするから、長谷君の。」


「ええ、ありがとうございます。
 しかし、何と言うか、嘘はつけません。
 それで、いいですよね?」

「うん、それがいい。」

「はい。」




で、打ち合わせ室に一人残された。
学校が終ったのに
テストで出来が悪くて残されて、
補習授業の始まりを待つ感じ。
いつ、あのドアがガラガラと開いて
おっかない先生が入ってくるのかと…

はっと思って色々考えようとした。
このVPの趣旨のことや
自分自身がどれくらい
このVPをやりたいか、
見せられる(演出できる)か。

でもね、すぐに辞めた。

だって、それは付け焼刃。
今考えて、今思いついたこと。
そんなものを話して
第一印象として残って欲しくない。
あの時、こう言ってましたよとか
言われたりしたら大惨事だし。

でも、何も考えずに
開かれる予定のドアだけを見つめているのは
さすがに精神的にキツイし無理だ、不可能だ。

そんな時、
本当にふいに、瞬間的に、
子どもにこないだ言ったセリフが思い浮かんだ。

「嘘をついてもロクなことはない、
 正直でもロクなことはない。
 でも、どうせなら正直で
 ロクなことが無い方が
 いいじゃないかってパパは思う」


いや、4歳の子どもにロクことと言っても
全然分からないだろうし、
想像も難しいだろう。
でも、わりと普段から子どもに対しても
分かる分からない関わらず
思った言葉をぶつけている。
ぶつけることにしている。

これは、多分、子どもに言っているようで
自分に言っている、言いたいんだと思う。

”そうだな、思ったことを口にすれば良いや”
そういう風に考えたらかなり楽になった。
で、同時に先方の方がいらっしゃった。

「すいません、お待たせしちゃいまして!」

「あ、初めまして、演出の長谷といいます」





色んな心配はしたこと自体
考えに脳の何パーセントかを使用した自体
無駄だったなと思えるほどに
顔合わせは滞りなく進んだ。

会話の内容から
ほぼ、僕の起用が確定したと感じた。
本当のところでは、
ひっくり返るような結果が待っている可能性もあるが、
相手も正直であるならば、
この感じは間違いないと思います。

さて、でも、それはいつ?

気長に待つこととしよう。





会社を出ると雨は止んでいた。
いや、会社に向かう駅を降りた時には止んでいた。
今は、少し薄日が差しているほど明るい。

傘はかなり邪魔だったけど
その辺に捨てられるほどの傘ではなかったので
面倒でも手に持った。



そんな時、
助監督I嵐からメールがきていた。



お借りした遊具を本日17時目安に
返却したいのですが、
ご在宅でしょうか?
レンタカーの都合もあり…


って、おい!
今日返却lするのは知っていたけども
そんな時間指定は、無いだろう。
17時というのは、今から2時間後だ。
そんなタイミングでいいのか?
それもレンタカーの返却があるからって、
それは遠まわしでもなんでもなく
ほぼ直接、17時に絶対に自宅にいろという
お願いではなく指示だ、命令に等しい。

こういった場合、
必ず、助監督や制作部の一部の奴は
予算や時間の都合で、
こうならざるを得ないというロジック

説明してくる。
つまりは、僕が悪いんじゃないんです。
予算が無いのが悪いんです、
時間が無いのが原因です的な。


しかし、言ってしまうと
君らが参加する前から
僕はお金も時間も潤沢に無いのは知っている。
少なくとも君たちよりも知っている。
そのつもりで脚本も書いたし、
現場も進行しているつもりだ。



どんな理由があるにせよ、
返却2時間前ではなく、
通常なら前日に”明日の夕方に”とか
最悪でも今日の朝にでも連絡を入れるのが
普通の人間のやることであろう。

こんなことをやられると、
スタッフ以外にもクライアントや
全く見ず知らずの方々に対しても
同様のことをやっている、
強制しているのかと考えてしまう。


電話でキャンキャンと
怒鳴り散らしてやろうかと思ったけど、
それも大人げ無いだろうからやめた。
ただメールで、

”2時間前というのは
    ちょっとひどいよね”




書いておいた。
本当の”~ひどいよね”の後には
こんな言葉が続く。



”2時間前というのは、
 ちょっとひどいよね?
 俺の都合は無視して、
 テメーの都合を
 俺に押し付けるんだな?”



多分、I嵐もしまった!
地雷踏んだ
と思ったのだろう、
すぐに携帯に電話をかけてきた。
けど、電車に乗ってたから出なかった。

そしたら、すぐさま、謝罪のメールがきた。

散々っぱら映画”Watch with Me ~卒業写真~”で
俺の地雷を踏んできただろう?
ぼちぼちわかってくれよ。
学習だよ、学習。


そんな訳で、
謝罪のメールにも
返信しないでおく。


強くなれ、I嵐。
そして、明日からの撮影よろしく。


じゃ!