新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

弁当。

11月29日
急に奥さんの具合が悪くなった。
どうみても明日中に快復するとは
到底思われない。

すぐに思い浮かんだのは
明日の息子のお弁当である。
週の半分は給食ではあるが、
もう半分はお弁当を持参しなければならない。
しかし、奥さんの状況を見る限りでは
到底弁当作りなど不可能に見える。

ここで問題である。
人の食事はおろか
自分が食べるものすら
満足に料理できない俺が、
どうやったら息子のお弁当を
作ることができるだろうか?
冷蔵庫を開けて
材料を見るも
材料から出来上がりの食品を
思い浮かべることができない。
逆に、結果から素材を求めようにも
具材は判明しても、
その調理方法を知らない。
今から調べるには
あまりにも時間が無い。

しかし、もう朝がくる。

まず、炊飯器に飯を朝6時に
炊き上がるようにセットする。
出発予定時刻は遅くても8時30分。
いくら、段取りが悪くても
2時間あればなんとかなるだろうし
その間、起きてきた子供たちに
朝食を食べさせることも可能であろう。
残りの30分には着替えなどの諸準備に当てる。

でも、このまま寝るには
あまりにも準備不足のような気がしてならない。
が、何を準備すれば良いのか?
そこで、俺は、メモ紙と鉛筆を出し
絵を書くことにした。
弁当の完成予想図である。
とりあえず、俺ができる作業としは
切る、焼くぐらいしかないだろう。
息子が好きなソーセージを焼いて、
ハムを切って、コーンと炒めて…

栄養バランスはわからない。
多分、ダメだと思われるが、
毎日のことじゃない。
我慢してくれ。

とはいえ、息子にとっては
嫌いな野菜は一つも入っていない
好きな物ばかりの理想の弁当に違いない。
そう思い込むことにして
予想図を書き上げた。


写真右隅に書いたのは
簡単な出発までの香盤。
全くスキの無い完璧な香盤である。

11月30日
6時00分 起床。
昨晩は、奥さんにポカリを買ってきたり
色々と弁当の準備をしていて
なんだかんだと3時くらいまでかかってしまったが、
早朝から撮影があるかのごとく
目覚ましが鳴ったと同時に目を覚ます。

不覚にも娘を起こしてしまったのが
残念であったが仕方がない。

早速、弁当を作る作業に入らねばならない。
香盤を確認すると、
6時30分から仕度開始とある。
なので、まず顔を洗って、目を覚ます。
さて、開始しますかと時間を見ると6時15分。

15分マキである。

良いぞ。

ご飯が炊けていることを確認し
焼き物を手初めに作る。
いや、焼き物しかないが。
順々に焼いていき、
一つ一つにトーマスの旗を立てていく。
絵と若干違いが出る。
ウインナーが3本に。
焼き物を一通りやり
次にやったのは
奥さんが毎日一工夫している
のりを使った顔だ。
便利な道具もあるので
穴あけパンチのように
のりで出来た顔ができる。

おにぎりも
専用の型ぬきがあって
飯を詰め込んだら
ポンッと出すだけだ。

と、簡単そうに言っているが
前日に計画をしていなかったら
相当バタバタになっていたのは
想像に難くない。


で、七転八倒しながらも
息子の弁当ができた。



想定と違ったのは
顔をのりで作れば
余りが出るということだ。
余りはウインナーに巻いてごまかした。
また、弁当箱が思ったより小さい。

これだけで実際足りるのか?

「少し足りないくらいで良いよ…」

ふらふらになった奥さんが言った。

いや、実は、問題は弁当に終らない。
この後、息子を連れて幼稚園に向かうのだが、
娘が奥さんと同じように具合が悪くなり…

幼稚園では近々開催される
発表会の準備予行練習があり、
通常よりも早く幼稚園にいかなくてはならず、
また、予行練習のために
子供の着替えを手伝いに行かねばならず…

ただでさえ、出発するのに
バタバタする我が家だ。
この状況で大丈夫なのだろうか?

鍵は息子にある。

どれだけ素直に
朝食を食べてくれ、
着替えをやってくれるかどうか…





”準備完了! 時間は!”


『7時55分』




「やった!35分マキだ!」
「よし、早めに行ってやるか」

と、自宅を出ると
雨が降っていた。

普段、雨が降っていなければ
電動自転車でビューンと行くのだが
雨の場合は無理。
徒歩で電車を使用することになっている。

「予定より早く出たから
 急な雨でも対応できたぜ!」

やはり、巻いたら良いことがあるな。
早起きは三文の徳とはよく言ったものだ。

て、使い方違うか。

まあ、いい。





幼稚園では、
ずっと素直にしてきた息子が謀反を起こす。

衣装の帽子を被りたがらない。

「おい!みんな着てるだろ?
 自分だけ着けないでやる気か?」

「これやだ!」

「…やだは分かった。
 わかったけどさ、
 男にはやらなきゃならない時があるんだ。

 それが、今だ。 わかったか?」

「……」



ガシッと帽子を強引に被せ幼稚園を後にする。

すでに雨は止んでいる。
電車賃もバカにならないので
徒歩で帰宅。

帰宅途中に西友に寄り
ミニプラ ゲキレンジャー
『サイダイン』と『サイブレード』を購入。


隠しといて
良い子にしてたら
ご褒美に出してやろう、
作ってやろう。

いや、個人的には早く作りたい。

もう一個、自分用に買えばよかったかな…


親馬鹿ならぬ、馬鹿親だなこりゃ。


じゃ。