新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

タッチ。ここにタッチ。

11月11日
先に言っておきます。

毎回楽しみにしてるよ とか
こないだの日記は… とか
企画書大変だね。  とか

実際に僕に会った際、
日記の話題をするの
禁止ですから。
恥ずかしいので。

さて、そんなこんなで、
今日も企画書を書く。
先日、構成案を書き上げたので
プロデューサーにメールしたのだが
二日経っても返信がこないので、
スケジュールも切羽詰っているし
進めることにした。
これで、後から予算的な
枠を強制されても困るが、
そん時はそん時で
戦うしかない。

だから進める。

いつものルノアール
いつものビターブレンドを注文する。
ネットを切り、外部の音から自分を
遮断するために
イヤホンをつけ音楽を入れる。
結局、作業を進めていると
音楽なんか聞こえなくなるのではあるが、
スタートダッシュをするために
外部音の遮断は必須である。


カタカタとブラインドタッチ。

そう、僕はブラインドタッチ。
昔、師匠にワープロを貰った際、
指令として承ったのが
『ブラインドタッチ』だった。
しかし、貰ってからといって
すぐにブラインドタッチなんか
出来るはずもなく、
その練習方法も
当時のやり方は
手元にタオルを置いて
”あいうえお”を
一日中打ち続ける
というものだった。

そんな練習できるわけねー!

だから、師匠には内緒にしてたが
練習自体した、ためしが無かった。

が、その後、多少裕福になり、
自分でノートパソコンを買った時のこと。
購入先の店先で、ふと思い出した。
師匠の言葉を。

「これからパソコンに時代になる。
 だから、今のうちのキーボードに慣れることは重要だよ。
 長谷君、これを機にブラインドタッチを覚えなさい。
 きっと役に立つから。」

大金を出すついでなので、
タイピングソフトを同時に購入した。
ワープロの時に全くできなかった練習も
タイピングソフトを使うと
容易に毎日することができた。

結果、かなり自己流の部分もあるが、
ブラインドタッチを習得することができた。
自分でも驚いた。
まさか、今更、
運動部の練習でもあるいまいし、
何かを習得するなんて
全く思っていなかったことだから。

僕は喜び勇んで師匠に言った。

「ブラインドタッチ、習得しました!」

「それはすごいね」

「いや、まだまだ、遅いんですけども、
 監督は、相当早いんですか?」

「ううん、私はね、指二本を使ってね。カタカタと。
 でも、それなりに早いです」

「え?監督、ブラインドタッチ…
 できるんじゃないんですか?」

できませんよ

「マジっすか!出来るとばっかり思ってましたよ。
 長谷君、覚えなさいって
 言ったじゃないですか。

 自分が出来るから、
 やれって言ったとばかり…」

「そうだっけ?」

「ちょっとがっかりですよ」

「でも、ブラインドタッチを
 覚えたのは良かったじゃないですか」

「ですね。」

少し、いや、多少、
いや、おもいっきり
がっくしきた。
でも、師匠のおかげで僕は
ブラインドタッチを習得することができた。

ん?いや、自分の努力の賜物だ。

その日から練習を止めたのは
言うまでも無い。




そんなブラインドタッチで
今日も企画書を打つ。
面白いVPを作るために。
面白いVPを採用してもらうために。

ああ、難しい。




と、遠くで雷が鳴った。

娘がぎゃーんと泣いた。

じゃ。