新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

宿題を残す

1月26日

■この日記は撮影終了後に
 香盤表を見ながら
 数ある出来事を
 思い出しながら書いたものです。
 若干の思い違いや誇張
 脚色が含まれています。

 ご了承ください。

映画「Watch with Me ~卒業写真~」撮影日記
『宿題を残す』

1月26日
今日で撮影を一旦終える。

何か問題があったからではなく、
決して急に決まった話でもない。


そもそも、全体的な進行状況と
スタッフ・キャストのスケジュールの調整で
仕方のないことであった。
考え方によれば
1月の撮影自体を無しにして
2月に勝負を賭けるという手も
なくはなかったのだが
負けることがわかっていて
勝負をかけるなんて
撮影という商売の中では
あってはならないことなのだ。

準備が間に合わない。
スケジュールの調整が芳しくない。
打ち合わせの期間が充分でない。

など、通常なら絶対にGOを出さない状況の中で
俺は、1月にINをしないのなら
成立は無いと断言しきった。
たとえ1月にINをしたとしても
俺の香盤上では
確実に4日足りないと。



つまり、辛い状況がわかっていながらの
強行軍なのだ。




が、香盤を組んでみると
1月は思いのほか楽な香盤になった。
え?これだけでいいの?と
周りから散々言われてしまったが

『これでいいのだ』

毎日、毎日、徹夜で仕事するなんて
それは仕事の域を超え
修行になってしまう。

そんなことは絶対に許せない。
そんな香盤を俺に求めるのなら
俺は簡単にこの仕事から降りるぜ。




本日の撮影分は3.5ページ。
全体で120ページほどあるうちの
3ページ半を撮影する予定だ。

大まかに、分量からの時間配分だと
1ページ約1時間と計算されることが多い。
移動や、荷物の搬入搬出をはぶいて。

つまり、今日の撮影は
約4時間ほどで終わる計算である。



経験値の高いスタッフほど
俺の香盤を見れば
今日がどれくらい楽であるか
キツイ日程であるかはすぐにわかる。
だから、前出の
『こんな分量だけで本当に大丈夫か?』と
言われてしまう。

でも、大丈夫だとしか言いようがない。

自信はあるようで全くないが
大丈夫と言うのも俺の仕事のうち。
特に満面の笑みで『大丈夫!』と言わなければ。







映画の大変を占めるであろう病院内のシーン。
今日のメイン舞台は病院内である。

主人公が入院する病院の設定だ。
ここで、様々な人物が
生と死、友情と愛情のドラマを見せる。
ここでの撮影が映画の明暗を分ける
と言っても過言ではない。

だから、こそ、1月中にゆっくりとした香盤で
この病院というものを監督・スタッフを含め
俳優部にもわかっていただきたい。
急がされて仕事をする前に
病院内の撮影とはこういうことになりますよと
思い知っていただきたい。




久留米市内にある巨大病院。
その病院内の使用されていないフロア。
そこを借り切ってのロケセット撮影。
一般の患者さんも同フロアにはいないため
割りと気を遣わずに撮影することができる。
多分、このロケセットがなかったら
この映画自体が成立しなかったであろう。
それだけ、この病院での撮影は分量がある。


30ページ以上ある分量の
たった、4ページ。

楽勝と笑顔で進めなければならない。



が、思わぬ部分で病院での撮影に危機感を覚えた。



それは、病院内の準備に
想像以上の時間がかかること。
数台あるエレベーターも
撮影のために全て借りることなど
もちろんできないから
病院と共有して使用させていただくことになる。
とはいえ、こちらが準備する機材は
撮影、照明、録音、美術、制作と
想像を絶する量があり
単純に運び入れるだけでも
1時間から1時間30分ほどかかってしまう。

朝の15分は昼間の1時間に匹敵すると
よく言われる。

それだけ、朝一発目は重要な時間である。



これは香盤を見直さないとならない。



幸い、1月の撮影を今日で終え
2月の6日までの間で
この準備にかかる時間を加味して
考える時間はたっぷりある。
やはり、1月と2月と撮影を分けたことは
間違ってはいない。
その分、予算も規模も大きくなってしまったが
映画全体のクオリティーは
これで保たれたようのもの。



多少、時間がずれても
びくともしない香盤を作成することができるかも。








多少の待ちはあったが
病院内の撮影は
香盤を1時間もマキで終えることができた。

そして、スタッフ全員も
病院内の撮影を理解することができたと思う。
2月からは辛い戦いが待っていると…










夜、軽い打ち上げ。
全スタッフが集まっての酒席。




俺はウーロン席。




すでに頭の中は
2月への宿題を解き始めていた。



今日撮影したシーン
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