新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

チンダル現象

1月24日

■この日記は撮影終了後に
 香盤表を見ながら
 数ある出来事を
 思い出しながら書いたものです。
 若干の思い違いや誇張
 脚色が含まれています。

 ご了承ください。

映画「Watch with Me ~卒業写真~」撮影日記
チンダル現象

1月24日
雨上がりの曇り空
雲の彼方から太陽の光が
切れ目から差込んいる。
美しい光りの筋が
地上に降り注いでいる。

誰かが『天使の階段』と言った。

この階段を使って
地上に天使が降りてくると。

誰かが『あれはチンダル現象ですよ』と言った。
そのハレンチな響きは
夢も希望も打ち砕く一言であった。

ジョン・チンダル。

この人が発見というか
解析した?そうだ。




チンダル現象



このチンダル現象
俺は2時間待っていたのだ。

2月の頭にどうしても
ナカアキ期間ができてしまう
スケジュールの中で
俺は、この1月の撮影期間を
スタートアップの期間ではなく、
この映画の根幹を成すスケジュールにと
考えて組んでいた。

それ故、芝居としても重たい部分も
強引にはめ込みつつ
俳優部も含めた全員に
今回の映画を提示しようと思っていたのだ。


そう、二日目から非常にシビアなシーンを入れた。


というよりも初日に
ラストシークエンスを入れるという
暴挙までしでかしているのだ俺は。
もはや怖いものは無いだろう。


午前中、ぽかぽかした日差しを受けて
撮影は順調に進んでいた。
天気予報は晴れ。
週間天気予報では26日まで雨は無かった。

はずだった。

午後になって
移動した川沿いの道は
到着するなり雨が降り出し
気温がガクンと下がり
息まで白くなりそうな…

弁当を食べている間に
劇的な回復を祈りつつ
俺は鉄橋の下で
制作部が出したストーブに当たっている。

東の空も、西の空も、
南の空も、北の空も、
全てが雲につつまれており
一面が真っ白になっている。


すでに何人かのスタッフは
撮影中止モードになりつつある。


天気を待っていても
仕方ないんじゃねーの?的な
空気を感じた。
俺は、すぐにM木を呼び出した。



「M木!俳優部のいる公民館まで
                  車を飛ばしてくれ!」

「え?どーしたんすか?
 天気待ちというのは伝えましたよ」

「いいから出して!」




我々撮影スタッフと違い
俳優部はその大部分が
メンタルな部分で占められている。
そして、そのメンタルな部分のコントロールは
チーフ助監督がある程度責任を持つのだ。
人に任せてはいられない。

直接出向き、説明することが
この場合は適切だろうと思われた。



「待ちます、日没1時間前までは
        確実に”待ち”ますから!」



いや、しかし、このシーンは3ページ近くある。
通常に撮影したら1時間では到底終わりはしない。
実質は1時間前までは、待てない。
が、それしか晴れる時間がないのなら
それ相応の作戦もないわけじゃない。

だから、待つ。

待たなければならない理由もある。









日没の2時間前。
僕らの目の前には
素敵なチンダル現象が現れた。

素敵なチンダル現象

なんだかそのネーミングに
心奪われる日でした。


きっとチンダルな映像になっています。

本日撮影したシーン
S#34 59 74 61 135A