読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

終焉は静かに

9月10日(日)
9月11日(月)

■この日記は撮影終了後に香盤表を見ながら
 数ある出来事を思い出しながら書いたもので
 若干の思い違いや誇張や脚色が
 含まれていますのでご了承ください。

映画「Watch with me 卒業写真 夏篇」撮影日記

やって良い事と
やって悪い事の境目は
どこで、その線引きはどんな内容なのだろうか?

僕は昨日、多分やってはいけない事
の部類に入る事をしたのだ。


残になった学校のシーンにおいて
子どもたちの出演は必須だし
誰もいない教室で
授業中でございなどと
どんな技を使っても不可能である。
もちろん、昨今のCG技術を持ってしても
昨日の今日でその段取りも作れないし
莫大にかかる予算は
映画が数本撮れるくらいだ。

しかし、お借りしている学校の都合は
今日の日曜ではなく
明日月曜しか教室が使えないのだ。

いや、普通なら日曜なのだが
たまたま、本当にたまたま
日曜日に授業参観があり
その振り替え休日が月曜で・・・


まあ、とどのつまり
この学校の生徒なら
身体が空いている可能性もあるにはあるが、
出演してもらう子どもたちが全て
この学校の生徒であるはずがない。
久留米を中心にした近県から
わざわざやってきてくれている子どもたちだ。



俺は、この日曜日を使って
子どもたち全員に電話をかける。
月曜日に出演してもらえませんか?と。
ただでさえお願いして
出ていただいているフシがあるのに
本来、学業が本分である生徒たちを
その学業があるはずの月曜日に
来いと言うのだ。
怒り出す親御さんがいても不思議ではない。


しかし、
連絡をしなければならない。


撮影を成立させるために。



最悪の場合も考えたし
監督とも相談した。
生徒が少なければ
アングルを予定よりも狭い範囲にし
生徒の映る部分を極端に少なくする。
これで、生徒が少ないという
デメリットは隠せるのだが、
映像の構成として
不出来なシーンになる可能性が
大きくなるし、多分なるだろう。

目標は全体の2/3

30人強いるので20人は居て欲しい。

連絡する手が非常に重いが
俺は携帯電話を充電器に付け
数多い電話と長くなるであろう話しの
体制を整えた。




「もしもし!私、映画、卒業写真、
    助監督のハセと申しますが!」





電話の内容を察してか
俺の周りからスタッフが遠ざかっていく。

がんばれ、俺。




そして、10時間もすれば翌日が来る。




9月11日(月)【終焉は静かに】

空には多少の雲があるが
もちろん雨など降ってなく
今までの学校撮影を考えると
底抜けに明るい状況と言える。

ホテルを出るなり
空を見上げ
叫びたくなった。


『できる!できる!できるぞ!
    勝ちだ!俺の勝ちだ!』



俺が何と戦っていたのか?
天気?気象庁

俺の中にある、
俺自身の悪い考えを持つ
口癖が『それは不可能だ』と言う
マイナス思考の俺だ。



勝ったのは俺、

負けたのも俺。





7時集合予定だったが
少し早く学校に到着する。
照明部がバタバタと機材を
手持ち運びで3階へ上げていく。

本当に照明部には頭が下がる。

そこへ正門から続々と乗用車が入ってくる。
子どもたちを送ってくれる親御さんたちだ。
この映画のために、
快くお子さんの学校を
休ませることを許してくれた方々。

頭が下がるどころか
足を向けて寝られません。




全員が制服に着替え
教室に集合する。



教室は生徒たちでいっぱいになっている。
一つ残らず机は埋まり
どこにカメラがあっても
どれだけ引き絵を作られても
生徒たちはいる。

本当にありがとう。

大したフォローも
サポートもできなかったのに
学校休めなんて無茶なこと言ったのに
俺の話しを聞かないといって
怒鳴り散らしたのに

何度も言う
本当にありがとう。


今日はたった2シーンしかないけど
撮影を楽しんでいってくれ。





一度準備したシーンでもあるので
撮影は順調に快調に進んだ。






俺は、撮影が残り数カットとなった段階で
撮影現場から離れた。
二つほど離れた教室に
あるものを隠しておいた。

二つ隠しておいた。

今日で最後となる
中野大地と高木古都への
大きな大きな花束だ。
※実は、9日がUP予定であったので
  9日には用意してあったのだが、
  なんとか花束は二日保ってくれたようだった。




こういうのは何事もタイミングが命である。
撮影が終わって、

『○○さん、撮影終了でーす!』と言った
そのタイミングですっと監督に花束を渡して
役者にぽんと渡す。
これが美しい。
それができなければ、
花束など無意味だ。
誰も見ていないところで
花束を渡しても
格好悪いだけだし
大体、あんなでかい花束なんて
こういう状況でなければ
持っていくだけで大きなお世話って感じだろ?

だから、慎重に事を進めた。
とはいえ、中野と高木に見られてはいけない。
そんな物を見た後で
通常の芝居ができるはずがない。
まして、経験が多いとはいえない子役だ。

「監督、終わった段階で
     花束渡すんでよろしくです」

「ああ、俺はどっちに?
          (渡せばいい?)」

「両方です」

「え?どうやって?」

「同時じゃなくて、ぽん、ぽんと」

「ああ、ああ、了解」

「他に渡すのに適任はいないでしょ?」

「それもそうだね」

「ふー」

「はははははは」

まあ、演出中の監督に
他のことを相談したりしても仕方が無い。
頭がそんなことに回るわけがない。




「カット!OK!」



と、監督が言った。
助監督M木とアイコンタクトする。
M木が大声を張り上げる。



「はい!只今のカットで!
 中野大地君、高木古都ちゃん、
 全編撮影終了です!お疲れ様でしたー!」


「おつっかっしたー!!」



と、スタッフに声をかけられた二人の手には
既に花束がある。

当たり前だ、ベストなタイミングだ。
欲を言えば
どちらかが泣いてくれればもっとベストだったが。

そして、粛々と機材が片付けられていく。
どっと疲れて、一人車両に戻る。
着替え終わった子どもたちが
俺の前を通りすぎるたびに
声をかけてくれる。

ありがとう、今日は君たちのおかげだよ。

撮影は楽しかったかい?
相変わらず、大して構ってやれなかったけども。







フロントガラスから見た空は
一面、雲に覆われていたが

俺の目には
真っ青に晴れ渡った

【快晴】に見えた。





今日撮影したシーン
S# 18 44A



映画「Watch with me 卒業写真」撮影日記
             夏篇(少年時代篇)