新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

狙いすました太陽

9月7日(木)

■この日記は撮影終了後に香盤表を見ながら
 数ある出来事を思い出しながら書いたもので
 若干の思い違いや誇張や脚色が
 含まれていますのでご了承ください。

映画「Watch with me 卒業写真 夏篇」撮影日記

昨日の天気予報には
大変なことが書かれていた。

それは、8日以降の
撮影予定日全てが
雨マークでつぶされていたのだ。

一日に何度も何度も確認した。
夕方17時頃にでる天気予報で
それは確定した。

【晴れ】は明日しかない。


今までの撮影工程の中で
絶対に晴れてなければならないシーンがある。
いや、ほとんど全てのシーンが
晴れ狙いなのだが
最悪曇っていてもなんとかという
逃げ口上はあった。

晴れしか考えられないシーン。



俺は、昨日の段階である決断をした。

9月7日(木)【狙いすました太陽】

最高だ!
晴れている!
天気予報ありがとう!

俺の目の前に広がる
広大な海は
多少雲はあるものの
海の青さと空の青さが
目に眩しい素晴らしい天気である。


海、海岸、夏。

ときて、晴れ以外に天気はありあえない。

だから、今日なのだ。
今日しか晴れないのならば
今日撮影するしかないのだ。

かなり、強引に香盤を変更させ
俺は、今日という日に海岸の撮影を入れた。




海を走る大地と古都。



まだ、高校生(設定では中学生)の二人は
見ていて恥ずかしいくらい若い。
砂浜を歩く二人を見ていると
やめてくれ!ってくらいに
恥ずかしい。

しかし、それが、砂浜と若い二人だ。

これが狙いだ。
天気は晴れしかないのだ。








「はせくん、日が沈んでしまうよ」

「ええ、後、どのくらいありますか?」

「後、5カット・・・」

「・・・せいぜい、もって後15分ですね」

「うん、あの太陽の位置だとね」

「山に入ってしまいますね」

太陽が沈みかけている。
後、5カットを残し
日が暮れてしまう。
それでは、全く意味がない。
明日以降は晴れないのだ。
今日撮影してしまうしか
方法はない。

いや、あるにはあるが
それは、最終手段であり
その方法を取ることは
映画制作上、大変困難な道といえる。


「いくつかのカットは
 グロスになりませんか?」

「かなり考えたんだけど、
 減ってもひとつくらいかな」

「ひとつ・・・4カットですか」

「うん」

「わかりました。がんばりましょう!」

「よし」

「よーし、後4カット!マキで行こうマキで!
太陽沈んじゃうよ!巻かないと秋篇でまた
撮影しにこないとならないよ!」

「そんなの嫌だよー!」


と、最終手段のことを匂わせつつ
スタッフ全員に15分で4カットを伝える。


「演出部!走れぇぇぇぇ!」

「はいぃぃぃぃぃ!」

ああ、沈む、太陽が沈む・・・





突如、慌しく照明部が動いた。
遠くてゼネレーターが回り
電力がライトに送られる。


「ある程度の範囲だけだけど」


逆光になり暗い部分に
ライトがともされた。

さすが、照明部。
かっこいい。
つーか、ありがたい!

行こう、行こう、後4カット!






はっきり言って照明部のおかげだ。
なんとか撮影し終わった。

砂まみれの体はヘトヘトになった。




きっと素晴らしいカットが撮影できている。




今日撮影したシーン
S#99 127 130A 11 24 102 102A 102B 102C