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新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

演出部地獄

9月3日(日)

■この日記は撮影終了後に香盤表を見ながら
 数ある出来事を思い出しながら書いたもので
 若干の思い違いや誇張や脚色が
 含まれていますのでご了承ください。

映画「Watch with me 卒業写真 夏篇」撮影日記

例え、それが1秒とか数秒しか
使う予定の無いシーンであっても
そこに映るものに対して
全精力を傾ける。

数秒だから、ちょいだからと
気を抜いていれば
それは確実に映像に映るわけだ。
嘘をつけば、嘘が映り
手を抜けば手を抜いた映像が出る。
こだわる部分とそうでない部分は
確かにあるが、
手を抜くのとそうでないのは
全く違う。

「M木よ、大会2連荘ってどう?」

「え? …いいっすよ。大変ですけど」

「そうか、なら、入れるぞ」

「はい…」

9月3日(日)【演出部地獄】

やたらめったら晴れている。
空は快晴である。
全く雲はなく、
夏の日差しが9月になって
やっとやってきたという感じだ。

あの、初日の太陽を思わせる日差し。

もちろん、すでに熱中症気味で
頭痛はするし、クラクラもしている。

学校のグランドは
もうもうと砂煙が立ちこめている。


あくびをすれば
口から鼻から砂が入り込む。




俺の目の前では
中学生出演者たちが
グランドを走っている。

「全員グランド5週だ!

   ほれ!走れぇぇぇぇ!」


彼らが走っている間、
少し、少しだけ、休もう。
頭を休めようじゃないか。




朝の5時。
久留米市街にある
ボーリング場。
営業時間外での撮影のため
このような時間になってしまった。

エキストラの集まりも当然悪いと思われたが
なんと予想以上に集まっており、
逆に多いんじゃないかと・・・

”せっかく集まってもらったんだ
 全員映って貰わねば・・・
 しかし、この人数だと・・・”


カット内容をどう考えても
全員を映すことは不可能だった。
かなり、考慮したが
あまり画面の中の人間を多くすると
さすがに、監督から”多い””間引いて”と
言われてしまう結果になる。

言われてから実行すれば良いとも
考えることもできなくはないが
それでは、時間が掛かりすぎてしまうし
それでは、僕ら演出部が居る意味がない。

いざ、配置となる際
俺はカメラ横にいて
M木やI嵐に指示をだして・・・
と、普段ならなる訳だが
次の現場である学校を
先に仕込まないとならない理由から
M木が撮影前に飛ぶ。
ついでに、見習いK林も連れて。
残るはI嵐となる訳だが
こいつにはカチンコという
重要な任務があり
カメラの傍から離れるわけにはいかない。


都合、俺が走り回る結果となる。


「はい!全員ボーリングしてー!」

俺が結果として出した答えは
ボーリングをして楽しんで貰うというものだ。
身体が映るかどうかはわからないが
ボーリングで楽しむ皆さんの声、
音は確実に収録されている。

皆さん、本当にありがとう!



俺が朝から走り回っていたからではない。
中学生野球部を走らせるのは。
運動部は汗をかいてこそ運動部なのだ。

「○○中学!○○中学に抜かれたら5週追加!」

「えー!」

「うるさい!つべこべ言わずに走らんか!」

体育館には防具をつけた中学生。
グランドの前にやらなければならないのは
剣道大会のシーンである。
グランドでの野球大会と違い、
剣道大会って見たことある?

見たこと無いからなんでもいいって
ことにはならないのが映画だ。

ここの仕込みのために
M木はボーリングを
ほったらかして移動したのだ。

俺が着いたら
さすがに、全部できていて・・・


「あれ、M木、できてんのこれ?」

「あ、いや、すいません」

「ま、しょーがねー」

すでに走り回っているM木に
これ以上求めるつもりもない。


「I嵐ぃぃぃっ!」

「はいぃぃっ!」

「K林ぃぃぃっ!」

「はいぃぃっ!」

「グランド10周!!」

他の技術部、誰に聞いても
一番やれない部、
やりたくない部の一位は
演出部である。

こんなに楽しい部署なのにだ。

今日撮影したシーン
S#23 95 96