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新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

助けてくれ!

8月29日(火)

■この日記は撮影終了後に香盤表を見ながら
 数ある出来事を思い出しながら書いたもので
 若干の思い違いや誇張や脚色が
 含まれていますのでご了承ください。

映画「Watch with me 卒業写真 夏篇」撮影日記

もし、100万円で天気を自由に
買えることができるのなら
もし、土下座すれば天気を変えてくれるのなら
もし、雨雲を電話一本で
どけることができるのなら

俺の大事なヒゲを剃ったら
雨を晴れにしてくれるのなら・・・
悪魔に魂を売れば
晴れを確定しれくるのなら・・・
晴れ男にしてくるのなら・・・

今日の俺はなんでもしたかもしれない。



本当に今日と明日、明後日の三日間だけは
晴れなくとも雨だけは
避けなければならない香盤であったのだ。

どうしても・・・




だけども、今、僕の目の前には大粒の雨が


全てを木っ端微塵にしてくれた雨が降っている。





そう、誰か、誰か、

誰か!


8月29日(火)【助けてくれ!】

前日の雨が学校の屋上を濡らしている。
所々水溜りができており
ダルメシアンのような感じでもある。
が、その”感じ”というのも
実は真っ暗でよくはわからない。

だって、今は
午前4:30。
太陽はまだ顔を見せない。

例によって日の出前からの準備で
夜明け狙いでの撮影である。
2連荘、早朝の香盤を組む俺も
なかなか酷いやつだ。



久留米市立○○中学校の屋上。
俺たちは日が昇ってしまう前に
水溜りを処理しなければならなかった。
映画を見ていて、
なんの前触れもなく
屋上のシーンにきたら
水溜りがあるなんて
は?って感じでしょ。
こういった天気のつながりが
スケジュールでの最大の悩み。

実際、リアルな天気というのは
1日の中でも晴れたり曇ったりするのだが
通常の生活ではあまり気にはしないだろう。
晴れでもちょっとした雲で
陰ってきたりとかね。

しかし、実際に撮影してみると
日の出ている状態と
雲にかかって陰っている状態とでは
全くといっていいほど違いがでる。
これが、所謂天気待ちという状態である。

完全な晴れを狙う場合もあれば
薄い雲一枚を狙う場合もある。
このどちらを狙うかによっては
香盤にかなりのダメージを与え
おいおいそれは全体へのダメージに変換される。


その責任を背負う羽目になっているのが
スケジュールを管理する役職である
チーフ助監督なのだ。
そんなの知っていたらやらなかったよ!
ってくらい厳しい判断を迫られる。


さて、そんな訳で屋上の水溜りを排除する。

ちまちまやっていると日が昇ってしまう。
急がなければ屋上の模様がマダラに!


で、急遽、考えた
水溜りの水を取って乾かすよりも
濡らした方が早いんじゃないの?
濡らして、全面を同じ色にしたらどーよ。


「・・・よし、濡らせ」

「え?」

「乾くの待っていたら明日になっちまう」

「全部塗らせ」

「はい!」

とかなんとか言った記憶はないが
濡らすことにして対応。
上映時にはここは濡れていたんだーと思ってください。

と、なんとか早朝の撮影は終えた。
早朝撮影が天気で流れるなんて
そんな怖いこと考えたくないし。



7:00
出演してくれる生徒役の子たちが
続々と集まってくる。
皆、久留米市街や佐賀県とか
遠方の方もいらっしゃるので
車でやってくる方がほとんど。
本当にご苦労様です。

いや、ご苦労様なんて実は思う暇はなかった。

俺は空しか見えていない。
遠くからやってくるでかい雲。
どよどよとした雲が
俺たちに迫ってくる。
今日は、学校の外シーンばかりを
組んだ香盤である。
このままの天気では
到底、外の撮影はできないだろう。
空を見上げながら
今日集まる生徒役の人数と
出演者の名簿で
他のシーンが
どれくらい組めるかどうか考えた。


そう、多くはないが
撮影しないまま帰るわけにもいかないのだ。


来た以上、なんらかの結果は出す。







生徒役と運動部エキストラを集めた体育館には
およそ100名近くの人間がひしめき合っている。
そんな体育館に派遣した
助監督M木から悲痛な叫びにも似たシーバーが入る。


「はせさん!ぼ、暴動が起きそうです!」

「うむ」

「一体いつになったら撮影するのかと!」

「うむ」

「どうしましょう!」

「うむ。辛抱我慢」

「・・・」

耐えがたきを忍び
許されざることを許すのだ。
いや、もう少し待て、
考えているから。

スタンバイの完了した状況で
突然の雨。
ん?突然というよりも
予想はしていた雨。
だが、もう少しだけ後ならば・・・

そんな状態のスタッフを置いておき
一人、現場から離れる。
外野の意見やシーバーの雑音から開放され
一人考える。
役者の控えに行く。
今日の出番ではなかったシーンを
今日、いきなり撮影することを
本人に伝える。

「え?それって明日じゃ・・・」

「そう、明日の予定だったね。
 でも、外を見てごらん、雨だろう?」

「ええ」

「こんな雨でグランドの撮影をする気かい?」

「ああ・・・」

「でだ、明日の予定であった室内の撮影を
 急遽やりたいんだ。つーか、やるから」

「あ、はい」

「じゃ、よろしく」

「・・・」

「M木!香盤変更。中から攻める!
 体育館組は一部バラシて待機」

「え?待機?」

「完全にはバラすな」

「ええ、しかし、残すとなると絶対に撮影はしないと・・・」

「やる。絶対にやる」

「わかりました」

現場に戻るとすでにスタッフは
ある程度、機材を片付けて待機していた。
俺が来るのを今か今かと待っている。

さしずめ、お預けを喰らった飼い犬のようだ。

何か質問される前に
監督を捕まえて今後の方針を伝える。
了承を得た時点で公式発表だ。


「スタッフの皆さん!香盤変更です!」

学校の中はライトの熱で
うだるような熱気に包まれている。
湿気のニオイなのか、
汗のニオイなのか、
もう分からないニオイがする。

香盤を変更したせいで
スタッフは次のシーンに何が来るのか
全く分からない状況だ。
だから、準備もはかどらない部分も多い


俺は空を見ながら
チャンスをうかがっていた。
いつ、外に出るか?

今日の予定には少し厄介なシーンを組んでいた。

グランドの撮影と体育館の撮影だ。
これをダブルで組んでいたのには理由があり
その理由のせいとおかげで
こうして、雨でも撮影できる
人間がそろっているわけだが
どうしても、どちらか一方だけでも
撮影しないと大変なことになる。

が、外は雨。
止んでもすぐにまた振り出す雨。

つまり、俺の頭の中は
いつ、体育館の撮影に切り替えるかである。





教室の撮影もあるにはあるが
どうしても、これから準備して撮影するには
時間も役者も足りない。

廊下や他の場所の撮影を入れ
はっきり言ってお茶を濁す感じの撮影である。




昼を過ぎ、全く晴れる可能性の無い空。
残りの室内は教室のみとなった状況。



「午後から体育館撮影に入ります!
 今日は教室の撮影はしません!」

「へーい」






頭の中で
今日の残分がどの位か計算した。

頭が痛くなった。




今日撮影したシーン
S#94、45A 129A 51A 19