新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

劣悪な夜

8月10日
演出部最終打ち合わせ。
しかし、昨日の苦渋の決断のせいで
その対応と次への課題で
全くその機能を果たせず。

本当なら
シーンごとの配置図や
プラン構成を提案して
夏篇の更なるレベルアップを
図る打ち合わせであったのだ。
が、しかし、そのレベルの打ち合わせまでいかず・・・


過ぎたるは及ばざるがごとし。


今更何を言っても仕方がないので
今日できること、今日までできたことで
打ち合わせを進行する。
でも、今日はひとつ良いことがあった。
助監督見習いでついている
K林君だ。

このK林君は
わざわざ大学院まで出た秀才にも関わらず
今回の映画に参加してくれている。
この秀才は頭は良いが
少し頼りない感じもするが
映画学校卒業ばかりの
学歴の低さでは負けない自信のある
わが演出部ではダントツで頭が良い。

で、今回、ある方が作られた楽曲を
英訳し更に、歌詞にして音楽にあわせるという
どちらかというとかなり大変な作業を
大学院だからという理由ただひとつで
K林にやらせることにした。

その訳詞があがったのが昨日の深夜なのだが
言ってもいないのに意訳を施し
更に映画内容を汲み取った素晴らしい訳詞であったため
その場で知り合いの元歌手を呼び出し録音することにした。
期待してなかっただけに
この訳詞の精度は嬉しいものであり、
今日の監督への提案もきっと一発でOKを貰うと確信していた。



そして、今日の打ち合わせ。


「K林君。この歌は君の意訳が
 決定的に素晴らしいからGOにした」

「はい」

「だから、君が監督に対してプレゼンをやれ」

「え、はい・・・」

かなり心配そうな顔をしたK林君だが
言葉足らずとも詞の完成度は高い。
きっとうまくいくはずだ。

「♪♬♫♩♬♫♩♬♫♩♪♪」

「うん、誰が作ったの?」

「K林です」

「うん、OK!」

ニヤリとした監督だった。
期待以上の出来であり
満足のいく音楽であったのだろう。

やったなK林君。
大学院まで出たかいがあったな。




そんな嬉しい打ち合わせを皮切りに
大変になったスケジュールプランなど
重苦しい話題を打ち合わせていく。
だんだん、しんみりしていく。

でも、きっと大丈夫。

もう、動き出した歯車はかみ合っているのだ。
はずれることの無い
はずすことのできない状態で。
誰もが心配する状況でもあったが
それももう過去のこと。だと思う。

クランクインまで後数日と迫り
準備は佳境に入り
睡眠時間も過酷に削られることになりそうだ。




がんばれK林君。
俺やM木、I嵐からのいじめに耐えぬけ!










後、数日で準備のために
また九州は久留米に飛ぶことになる。
今回飛んだら、撮影が終わるまで
帰ってくることはできない。
何も遣り残したことなく飛び立たないとならないが
往々にしてそんなことにはならない。
不安が不安を呼び
雑念が疑念を呼び
思惑が策略を作り
敵が内側にいる・・・




毎回、もうこれ以上大変なことは無いと思う。

今回もそうだ。
こんなにも大変な目にあったことはない。


いや、









あの時と比べて・・・

完成目指して走れ!演出部!

じゃ!