新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

撮影2日目

3月3日
天気が悪いと言う予報とは逆に
なかなかの天候に恵まれた。

今日はVP1の撮影2日目である。

そして、最終日でもあり
ロケ日でもあるから
この天気は都合が良い。
僕はもの凄くついているのかもしれない。

6時45分現場到着。
ロケ日だが最初は室内撮影から始める。

制作部があるラーメン屋の窓に
黒紙を張っているが見える。
どうやらまだ撮影部は来ていないようだ。

「ういーっす」

「おはようございまーす」


朝一番からのナイター撮影。
いきなりナイターなんてどういう香盤だよ!

という話は置いておいて
一度店内に入り現場を確認する。
また、小道具などのチェックをし

「えーと、もう少しかかるよね?」

「うん、後30分くらいかなぁ」

「じゃ、準備できたら呼んでください」


と、近くのエクセルシオールへ。
これから撮影する分の台本を読み
再度、芝居の内容を確認。

この場所での狙いは
『監視カメラ風』なアングル。
あの店ならどこに監視カメラを置くだろうか?
リアリティと内容とのバランスを考えつつ
最適なアングルを探す。
とはいえ、昨日、カメラマンと打ち合わせをして
そのアングルの位置は確認済みだ。
あと、はその場所の合わせて
狙いの芝居ができるかどうか。


携帯電話が鳴った。

「じゃ、お願いします!」

「あい、すぐ向かいます」

カメラが置かれ、小道具が置かれ
役者が着替え終わって準備が整った。
さて、芝居をつけておきますか…

今回、一番悩んで、一番難しかったのが
リアリティを作る作業だった。

芝居を作り過ぎると
確実に興ざめした映像になってしまうし、
撮影する意味すら問題になってしまう
そんな内容なのだ今回のVPは。
だから、必要以上にカットは割らないで
ワンカットで見せる、見せられる工夫を考えた。

当初、この撮影は
かなり時間がかかると思っていた。


だが、ふたを開けてみると…
予定の2時間を大幅に上回るペースで
撮影することができた。
終わってみると1時間のマキ。
今日も『マキ』ペースで進行させることができそうだ。
朝一からこうも調子がいいと

今日の天気と同様に
気分がもの凄くいい!


が、ひとつ問題というか
仕方のないことがおきた。
それはマキすぎたために
次の段取りが全く間に合わない。
役者は来てないし、
次の現場の店舗の主人も間に合わない。

都合、『中アキ』だ。

「じゃ、9時出発ですよね?
 連絡ください。喫茶店にいますから」


いくら天気が良いといっても外は寒い。
夕方か夜に雪だという予報だから
気温は寒くて当然か…


喫茶店で次と次と、
その次と台本に目を通し
予習復習をしておく、
現場で悩むのは許されない。
悩むんだったら撮影した方が
答えが出るってもんだ。

無駄な撮影もしたくはないけどね。




中アキ後、新宿で実景を撮影する。
昼前のちょうどいい時間帯で
人影もいい感じ。

実に撮影は楽しい。

話はそれるがVPという映像ジャンルは
他の映像と違い規制が緩い場合が多い。
緩いという表現は御幣があるかもしれないが
自由度が高い場合が多い。
TVなどで放送する訳ではないので
放送コードのようなものは無いし
広告でもないので多少の企業名が出ても
大きな問題にはならない。
(もちろん、駄目な場合もあるが)
尺も大体15分とか約20分とか
厳密な決まりがある訳でなし。
(ただし、今回はお勉強物なので30分以上だと
 飽きてしまうので、あまり好まれないが)

つまり、
予算の制約は当たり前だが
それ以外の部分は
かなり自由に演出ができる。

自分の言ったことに対して
何人もの人間が動き
具現化するために奔走する。
僕の言葉を台詞として俳優がしゃべる。

楽しくない訳が、ある訳ない。



ハウススタジオに移動後も
楽しさは倍増するばかりで

『やっぱり、助監督より監督が面白い

と、改めて思う。

で、気が付くとまたもマキ。
2時間程巻いてしまった。
次の現場に移動しても約1時間は間が空く。

今日の予定は24時終了だったが
この分だと22時過ぎには終わるのが
目に見えている。

制作部も予定より早い撮影に
次々と先手を打ってくれて
なんとか交渉した時間よりも
繰り上げて撮影できるようにしてくれた。

そう、みんなも出来ることなら
早く帰りたいのだ。




とある、商店街。
お店の都合で23時からの撮影開始だったが
粘り越しの交渉で21時には撮影開始。
だが、またも問題発生。

商店街で流れる音楽が止まらない!

聞くところによると22時までは止まらないようだ。
時計を見ると21時30分。
へたに交渉してせっかくの友好的な関係が
壊れるのを恐れて22時まで待つことにした。

21時55分。
スタッフと雑談しているうちに
ふと、胸騒ぎがした。

「ねえ、アーケードのライトってさ
 音楽が22時に止まるってことは…
 
22時に消えてしまうんじゃないの?

「あ! どうだろう…」

「…不安だね」

「…。」

「音楽ありでもいいからさ、撮影しちゃおうよ。
 音は後でオンリー貰えばなんとかなるから」

「よし!撮影しよう!」

後、5分しかない!
急いでカメラをセッティングしシュートする。

「あい、カット!」


と、言ってすぐだ。
フッと音楽が消えたと同時に
アーケードの
メイン電灯が消えた。

一瞬にして暗くなる商店街。


「おおおおお!危なかった!」

「危うく、大惨事だったんじゃないのこれ」

「撮影しておいて良かったな!」

すると背景にしていた店舗も
ガラガラとシャッターを降ろし始めるじゃないか!
本当に危機一髪。
あの段階で撮影していなければ
明るい状態の商店街を
撮影することはできなかったのだから。

後は台詞違いを撮影して手元のヨリだから
電灯が消えていても撮影できる。

やばかった、本当にやばかった。
しかし、僕のカンは冴えている。
冴え渡っている!

「よし、音メインで次は撮ろう」

「あ!」

「え?」

と制作部が指を指した方向に
ストリートミュージシャン
ジャジャーンとギターをかき鳴らしている。
幸い、声量の無い方だから
ほとんど聞こえない。
尚且つマイクと逆方向だから…

「どう?(音)拾ってる?」

「…、大丈夫ですね。問題ないです」

「うん。じゃ、このまま撮影しよう」

22時30分。
全ての撮影が終わった。

たった二日だったけど非常に楽しい撮影だった。
スタッフや役者陣には
僕の意味不明な演出語を
解読してもらって非常に助かりました。
ここで改めて御礼申し上げます。

後は、編集で勉強感の無い
楽しいVPに僕が仕上げていきます。




いやぁ、撮影って
本当に楽しいものですね!




じゃ!