新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

カメラカー!カメラカー!part2 目指せ!池袋!

この日記は撮影時の香盤表を元に

薄れゆく記憶が消えないうちに

思い出しながら書き上げたものです。

一部、実際と違う部分や記憶違いなどが

ある場合もあります

日本の自転車泥棒 JAN」 第2部撮影日記

始めに、何故、第2部か?

それは昨年末の異常に全国で大雪が降ったあの時期

この映画の第1部撮影は始まっていたからである。

しかし、僕はその大雪の第1部に参加していないため

あえて区別するために今回の撮影を第2部とした。

1月23日(月)6:00 渋谷

今日はこれから川口へ向かい

そこから移動しながら、撮影しながら東京を目指す。

いわば『言って来い』ってやつだ。

尚且つ、今日の撮影は今までの以上のカット数があり

また、そのほとんどのカットがカメラカーを使用する。

今まで、あまり混雑していなかった道路状況も

さすがに東京が近くなるとかなり厳しいものがある。

ロケハン時もかなり急いでいたために

どこでどんな風な撮影を行うかという

綿密な打ち合わせがなかったのだ。

これを危険と言わずして何を危険と言うのだろうか?

朝から心配につぐ心配で

バスの中でもおちおち眠っていられなかった・・・

埼玉県川口

朝一番の撮影からカメラカースタンバイ。

ここでは自転車がある危険に

さらされるというシーンを撮影する。

用意されたのは大型のタンクローリー

この大型車が杉本さんの乗る自転車に迫るというものだ。

一歩間違えば大事故になりうるし

その場合は即刻撮影中止だ。

そこで問題になるのが打ち合わせの不足。

朝から監督とカメラマンを交えて現場で確認。

どのルートで撮影し、どこを迂回して戻ってくるか?

杉本さんをどうケアしていくか?などだ。

出した結論はやはりブロック撮影。

ブロックと言っても

交通を遮断するわけにはいかないので

信号の間隔を読みベストのタイミングで

ブロック車とカメラカーを出しスタンバイする。

こういう撮影で一番問題になるのが

撮影する側のタイミングと

その場のタイミングとのズレである。

このズレをいちいち修正していかないと

事故の元になるし道路は大渋滞になってしまう。

それは誰しもの本意ではない。

では、そのタイミングは誰が出すのか?

俺だ。

俺がカメラカーの荷台に乗り

回りの状況と撮影側の状況を判断してGOを出すのだ。

つまり、俺が間違うと事故になる。

責任重大とか言うよりも

そんな責任取れないってくらい重いよ。

「よーし、カメラOK!出よう!」

「ちょっと待った!まだ、まだ出られない!」

「なんで!」

「俺がまだっていったらまだ!道路状況確認中!」

「・・・」

「うん、OK!出よう!ブロック車出動!」

ワンカット目からしっかりと

この場は俺のGOが無いと

撮影できないという印象を与えておかないとならない。

ただでさえ今日はこんな撮影ばかりなのだ。

次々と危険な撮影をこなし・・・

そして、撮影しながらジリジリと赤羽へ

赤羽ではこのブログで参加を呼びかけた

エキストラさんが待っている。

すでに予定の時間はとっくに過ぎている。

急ぎたいのは山々だが

急いだことでの危険性を考えると

そうそう急いだ撮影もできない・・・

赤羽。

今回、いや、第1部の撮影を含めても

一番の大都市に突入する。

自転車は街を縦横に走り回る。

街の撮影はお手の物と言いたいところだが

常に街は動いている。

生きているとも言え簡単には予想できない。

信号だけを読んでも信号無視する方もいれば

道路を横断する方もいる。

危険だからと人止めをしても

急いでいる方もいるし

完全には止まってはくれない。

車の量だって半端な数ではないし

予想することが明らかに難しくなっている。

つい昨日まであまり交通量の多くない

場所での撮影であったため

はっきりと感覚が鈍くなっている。

この赤羽で感覚を取り戻さないと

これから先の王子・池袋と大変な目にあってしまう。

そして、何よりも自転車を漕いでいる

杉本さんに危険が及んでしまうのだ。

「ブロック隊配置!上手下手とあそこのわき道も!」

「わー、ブロック隊見えてる!

フレーム内!もっと外で止めて!」

「往来が激しくて止めきれません!」

「え?それどっち?上手?下手?」

「ダンプ来ます!」

「通せ!だから、上手?下手?」

「ザー・・・」

「おい!」

「スタンバイ完了!」

「あ、はーい、ブロック隊!ブロックして!」

「ザー・・・」

「・・・」

「長谷君 いける?」

「・・・いけます」

もう、自分の目で見て

自分の目を信用するしかない。

後は信号の読み間違いをしないことだ。

駅前では信号がざっと見ても5つあり

車両用の信号と歩行者用の信号も

同時に読まないとならない。

車両を赤信号で止め、

歩行者は人で止めるしか

現状のブロック隊の編成では可能な策がない。

今までの撮影に比べて簡単な部類の撮影なのだが

場所が場所だけに異様に手間がかかる。

「辛抱我慢」

いつも、ブロック隊に言う言葉を自分にも言っていた。

ここを凌いで次につなげていこう。

2時間ほど遅れてエキストラさんと合流。

前回の反省からエキストラさんには

応援制作の武藤をびっちりとつけていたので

殺伐とした雰囲気にはなっていなかった。

ありがとう、武藤。

だが、撮影隊はどんどん撮影をしないと

という意識が強くて次々とカメラを構える。

俺も準備が出来たらエキストラを入れて・・・

なんて悠長なことを言ってられないので

カメラが置かれる前からエキストラさんに動きをつけていく。

カメラマンが覗いた時にはすでに動ける状況を作っていた。

たまに、てんで違う場所にエキストラさんを

置いてしまう時もあるが・・・

ほとんど何の説明もできないまま

配置についてもらって

よくわからないまま歩いてもらう。

ここは駅前だからわざわざエキストラさんを呼ばなくても

という話しもあるにはあったが

やはり昨今の肖像権なども問題もあり

顔がはっきりと認識できる場所には

エキストラさんを配置しないとならないのだ。

14時過ぎ。

日没が近くなってきた。

なかなか赤羽パートの撮影が終わらず

夕方には池袋という段取りに

狂いが押し寄せてきそうだった。

「いくつかのカットをキャンセルします」

監督の苦渋の判断だ。

最低限必要なカットを撮影して

メインとなる池袋に早く入る。

まだ、我々は赤羽なのだ。

早く王子に入らないとならない。

「撤収移動!王子に向かうよ!」

だが、簡単に赤羽から王子までは行けない事情があった。

それは、その移動区間も撮影対象であるからに他ならない。

しかも、時間的に考えるとそれはワンチャンス。

行ったら戻ってくることはできない。

釣り針のような返しのついた工程だ。

とどのつまり、杉本さんは自転車で

赤羽-王子間を一人で走らないとならない。

全く問題の無い快晴に恵まれ

道路には素敵に日差しが流れ込んでいる。

カメラカーから俺は杉本さんの走る姿を見た。

黄金色のアスファルトの光と影。

エンディングに向かうその表情は

ランニングハイではなくサイクリングハイだ。

ひととき、次の段取りを忘れて自転車に見入ってしまう。

きっとこのカットは奇麗だろうなぁ・・・

王子

すでに太陽は射光になり

タイムリミットが目前に迫っている。

高橋さんの表情にも焦りが見え隠れしている。

そんな時にこちら側の段取りミスなんか有り得ない。

サード岩崎には先々のカットの衣装準備をさせ

応援制作を使って自転車を持ってくる。

撮影部が来る前にブロック隊の配置を完了させ

カメラが決まる前に杉本さんに声をかける。

前へ前へ

アングルが決まったなと思ったら

そこには杉本さんがすでにいる。

すぐに撮影、すぐに移動。

これを繰り返さないと

これからも次々にキャンセルするカットが増えてしまう。

それは一見楽なことにも思える。

だって、少しづつ段取りを遅らせていけば

仕事をする時間を少なくさせることができるのだから。

でも、それができないから、ここにいるんだろう。

映画を作りたいという意思が。

路面電車が来ます!止められません!」

ブロックに飛んだ応援制作の葛西がシーバーで叫んだ。

路面電車を止める必要はない。

むしろ、フレームに入れて写したいくらいだ。

が、葛西はかなりきつい場所で

身体を張ってがんばっている。

電車が止まらないことを

とてつもなく『やばい』ことと思ったのだろう。

「辛抱我慢」

そっと、シーバーにささやいた。

「え?」

「ほんばーーん!」

「え?え?路面電車は?え?」

「カット!OK!戻っておいで~」

「あ、はい!」

素晴らしいガッツだ。

ありがとう葛西。

池袋

東京を代表する大都市のひとつ。

かねてから、ここの撮影にはドキドキしていた。

あまりにも人が多く車の数も多い

ただでさえ、撮影行為は目立つ。

日の沈む薄暮を狙いとした撮影で

1分1秒も惜しタイミング。

この人の流れをどうケアしていくか。

池袋での撮影なんて通行人にとっては

大して珍しいことではないと思うが

それでも人だかりができてしまう。

なんとかフレーム外を歩いてもらい

通行を確保するのだが・・・

赤々とした太陽がビルの陰に沈み

空を紫色に染める。

ビル郡の電飾が灯り

道路の街灯が点く。

美しい薄暮が池袋を包む。

煩雑で猥雑な池袋が

このフレーム内では気高くて高貴な街に映る。

「本日撮影終了!おつかっした!」

撮影はまだまだ続く。

本日撮影したシーン

101 101A 102 106 107 104 105 110 108 105A 109 111A 112B 112E 113B 113 113A

撮影しなかったシーン

112 111 112A 112C 112D