2005年10月24日
6:00
僕の心は雲の少ない快晴の
今日の空のようにはいかなかった。
出発の遅れ。
初日の朝一発目だというのに!
いや、遅刻した者が出た訳ではない。
実際は5:55にはバスを出発させたのだから…
出発して3分ほどしてのこと
高速入口寸前のとこで制作H君の
『都合良く鳴る電話』が鳴った。
※都合良く鳴る電話の話しはまた今度。
「すいません!
乗せ忘れました…一旦、戻ります」
細かく言うと乗せ忘れではなく
予定していなかった方が突然来ただけなんだが
よりによってのタイミングだった訳だ。
撮影香盤を書く際、
移動時間が45分だったら1時間に
1時間10分なら1時間30分と
少し水増しして書く場合が多い。
そうすることで少しでも仕事が
早く始まった気を持てるし
始まる前からマイている感じがするからだ。
しかし、今日に限っては
キッカリと30分にしていたのである。
1時間30分を2時間にするのと
30分を1時間にするのはかなり違いがあるからだ。
30分で着くのに6:00集合が5:30集合?
キッカリと30分にしとくか!
だが、ちょうどそんな日を狙いすましての打撃だ。
僕は朝から気分が優れない…
こんにちは、助監督 長谷巌一郎です!
子きつねヘレンと愉快な仲間たち
The ShortMovie 撮影日記(1)
始まります!
5本あるShortMovieの初日を飾る撮影は…
『南海キャンディーズ』主演
『バー・きたきつね』
すでに2日も前から美術部が
掃除から飾りから使い勝手まで
念入りに作りこんだ特注のバー。
撮影するには多少手狭だが
かなりの好条件な物件である。
17:00/横浜
撮影は予想をはるかに上回るスピードで進んだ。
それは
「自信ないです」
と言っていた『山ちゃん』が
ほとんどの台詞を完璧に記憶していたことが大きい。
そして、後ワンシーンで
その殆どを撮り終えると思った矢先だった…
「え!ライトが点かない?」
「さっきまで点いてたのに!」
「原因が全然わからない!」
「まじかよ!後ワンシーンなのに!」
俺は焦った。
南海さんは忙しい。
今日は18時には現場から
出さないとならないのだ。
恐らく後1時間もあれば
このシーンは撮り終えることができる。
だが…
時計を見る。
17:05。
残り後55分。
ま、まだ間に合う。
照明部さん!なんとかしてくれぇ!
いくら焦っても僕には何にもすることができない。
むしろできることは邪魔くらい。
”出し”を気にする制作部サイドも
慌ただしくなってきた。
「長谷くん、時間、大丈夫だよね?」
「…」
その答えを考える一瞬で
同時に二つのことを考えた。
デッドラインの設定と…
「どこまで引っ張れ(伸ばせ)ますか?」
「え?どういうこと?」
「出し時間は少し甘く設定してます。ギリを出しましょう!
終わったらすぐに車に乗れるように手配をして、
あと現在の道路状況も!」
奥から声がした。
「やるよ~」
どうやら、新規でライティングし直したようだ。
時間は?
17:30
「デッド18:30。
それで間に合うかどうか調べてください!
…こぼれるようなら切ります!」
切るとは強引でも撮影を止め残にするということだ。
監督も心配そうにしている。
恐らく『切られる』ことを覚悟しているだろう。
「やりましょう!芝居テストォォォ!」
長い台詞もあり動きも複雑なシーンだ。
3台のカメラで様々な角度から撮影する。
「カットォォォ!」
「…」
「もう一回」
17:45
なかなかOKが出ない。
粘る
「カット!」
素早く次のラストカットのアングルを考えた。
OKの声は聞こえて来ないが声の調子で想像はつく
行ける!
「チェックします!」
チェックの間に次のカットの話しをカメラマンと相談。
「どんでんだ」
ど、どんでん…
”どんでん”とはカメラ方向が
今までから全く逆に入るということだ。
つまり、今まで機材があった場所が背景になる。
全部バレるということ。
片付けてからでないとアングルが決まらない!
「OK出たらどんでん入るよォォォ!」
時間は!
18:00
読みとしてはギリギリだ
「長谷くん!18:30でいけるから!間に合う!」
「了解!」
間に合う。多分…
滑り込みでこのシーンは埋まる。
出ろ!OK!
「OK!」
「ひっくり返すよォォォ!
どんでーん!こっち側全部バレるから!」
慌ただしく現場がひっくり返る…
18:15までに準備が出来なければ切るつもりだった。
そうせざるを得ないと。
しかし、そんなこと出来る?
何にも出来ない演出部は想像するだけだ。
18:10
準備完了。
ありがたいことに”切る”ことを悩まないで済んだ。
「ほんばーんっ!」
18:25
「南海キャンディーズさん!
本日撮影終了です!おつかっしたぁ!」
滑り込んだ…
ギリギリ…
さ、後は実景撮って終わりだ!
やるよーーー!
僕の声と同時に
檻の中のフクロウがバタバタと動いた。
間近で見ると目が怖い・・・
「H君、指入れてごらんよ」
「い、嫌ですよ」
「なんで!」
「な、なんでって・・・」
次回はキングコング主演
『カメラマン梶原雄太50キロ』