新・カチンコ日記2

根無し草男の映像日記

LOVE ASIA日記 TNC版(九州篇・オフライン篇・ナレーション篇)

TNC版LOVE ASIA日記を追加しました。

この日記でLOVE ASIA撮影日記は完結です。

Vol.23 博多編
『最終決戦前夜』
2003年12月17日

九州、博多空港。
僕はLOVE ASIA最後の
撮影をこの地で迎えるため
打ち合わせは午後からなのに午前中に到着した。

寒い。

インドネシア撮影に出発してからちょうど一ヶ月。
途中、中空きがあったものの長い撮影期間だ。
それも、明日で全ての撮影を終える。

思い起こせば、
瀬木さんと映画「千年火」の撮影中に
聞かされた海外ロケの話。
企画書を渡されたものの、
目の前の映画の準備で
全く目を通していなかった話。
映画が終わって思い出したように

「例の話なんだけど。。。」

と、青天の霹靂のように電話があり
すぐに九州へ飛んだ。
(ほぼとんぼ返り状態だった)
まだ、暑さの残る九州でロケハンをし
海外で僕がなんの役に立つか思い悩み
インドネシアに飛んでみると
下痢や虫に襲われ四苦八苦
東京ではまずいそばと嬉しい再会があり
九州では。。。

なにが起こるのだろうか?

不安は全くない。
気心知れたスタッフと俳優部。
父親役に小松政夫さんが加わって
更に重厚な芝居が予想される。
あのインドネシアを乗り切ったスタッフで
渡れない河は無い。
どんなこともきっと乗り越えられるし
やり遂げてくれるだろう。

打ち合わせ。
博多編は全編ドラマ形式で撮影される。
インドネシアでの方法とはまるで違う。
違うというより普通のスタイルというべきか。。。
脚本に沿ったカット割りがあり
カメラポジションや芝居の方向性なども
綿密に打ち合わせする。
リハーサルや段取りもあり。

なんか、普通なのだが新鮮だ。
いきなり撮影大会ではなく
作り上げて撮影する完成された世界。

この作り上げた世界と
いきなりドンの世界の融合が
今回の目玉でもある。
瀬木さんも一番の悩みどころではないだろうか。

よーし、明日は7時TNC出発だ!

よく映画では○○組とか言ったりするが
なんとなく今回は
「LOVE ASIA組」っていう言葉がぴったりくる。

行け!「LOVE ASIA組」!
戦え!「LOVE ASIA組」!
負けるな!「LOVE ASIA組」スタッフ!

▼本日の宿泊地 「ホテルツインズももち」

▼長谷巌一郎の今日の一言
 「行動しなければ失敗はないが、成功もない!」

Vol.24 『いざ糸島!』
2003年12月18日

冬の朝は遅い。
もう7:00だというのにまだ空は暗い。
そして、雲も大量に出ているようだ。

「九州ロケ分は曇っていても構わない」

そう、インドネシアの燦燦と降り注ぐ太陽の空が
あればこその曇天狙いなのだ。
もし、晴れていても

「日本の晴れと
インドネシアの晴れの違いがでる」
ってもんだ。

さて、真っ暗なTNC前を僕らは
2台の車両に乗り分けて出発した。
俳優部も別車両で現場合流する。

昨日、夕食の席で西島さんは

「明日で終わっちゃうんですねぇ。。。」

と感慨深げにしていた。

そう、今日で全ての撮影が終了する。
インドネシアから東京、そして九州。
長く楽しい撮影も今日で終わりだ。
車の中でインドネシアの思い出話しをしていたら
すぐに現場に到着した。

福岡県糸島。
ここの民家を一日お借りして
主人公洋介の回想シーンを撮影する。
この回想シーンはインドネシアでの
西島さんのアイデアが生かされていて
台本に変更が加えられている。
どんな変更があったかは今は言えない。
ネタバレになっちゃうからね。

さてさて、今日の撮影の一番の目玉は
最初で最後の本格的ドラマ形式の撮影だということ。
美術部・ヘアメイク部・衣装部・制作ヘルプなど
インドネシアでは全く存在しなかった
スタッフが参加する。
一挙に人数が増えて、
なんか調子が狂っちゃう感じだが
やっぱり必要なスタッフがいてくれると大助かりだ。

午前中は民家内を美術部が準備するため
我々は西島さんと小松さんの
歩きのシーンから撮影を開始する。
玄界灘沿いの湾を二人が無言で歩いてくる。
無言の中に父子の感情というか
距離感が見えてくるシーンだ。
このワンカットだけで息子が父を
父が息子をどういう距離感で
見ているかが読み取れる。

僕は、こういう無言のシーンが大好きだ。

薄曇りの空の下を二人が
コツコツと革靴を鳴らして歩いてくる。
うーん、たまらん!

室内。
ここでは更に二人の感情と思いが伝わってくる。
親の心子知らず。後悔先に立たず。。。
自分にも少なからずこんなような
気持ちがあるからこのシーンは感情移入できた。

『親というものは、いつまでたっても、
 いつになっても、子供のことを思っている』

わかっているけど、
あらためて確認したりしないこと。
そんな思いがぶつけられるシーン。

こんなシーンと糸島がまた抜群に合うんだな。
静かで落ち着いた雰囲気と寂れた感じが。

そうやって、ワンカットワンカットと撮影は進んでいく。
進むということはもうすぐ終わりだということ。
お二人の息は初共演とは思えない程
ぴったりで、インドネシアのように一発OKが続く。

「これじゃあ、
 あっという間に終わってしまいますよ!」

終わったら、イコールお別れですよ!
まあ、当たり前だけどね。

室内シーンラストカット

西島秀俊さん、小松政夫さん、
 全シーン全カット撮影終了です!おつっかっしたぁ!」

編集、MAと楽しみにしておいてください!
きっと瀬木監督がやってくれます。
最高の作品に。
東京スタッフと九州スタッフの
汗と汗と汗とトッケがにじんだテープを
ザクザクと切ってくれるでしょう。

あー、早くみてー!

次回予告!
「怒涛のオフライン編」
ザクザク切るってそういうことか!

■長谷巌一郎の今日の一言
  「親になって初めてわかる親の気持ち」

Vol.25 『怒涛のオフライン』
2003年12月19日

「LOVE ASIA 花びらの舞う海へ」は
全編ハイビジョンで撮影された。
つまり、インドネシアや東京・福岡の美しい景色や
人々の喧騒・空気感などが余すことなく収録されている。

ハイビジョンということは簡単に言うと
綺麗なだけではなくて、
映画のスクリーンのような横長の画面で
撮影されているのが特徴でもある。

しかし、オンエアー時は普通のTVサイズだ。

非常に残念ではあるが
横長バージョンを見られる日はきっとくるはずだ。
まずはTVサイズバージョンを楽しんで欲しい。

さて、昨日最後の撮影を終えた監督と僕は
そのまま九州に残り
オフライン編集という作業に入ることに。
オフライン編集とは簡単に言うと仮編集で
完成尺や細かい編集は忘れて
ザーとつないでいく作業。
この作業から新たなイメージが生まれたり
撮影時には思いもよらなかった
意味を出せたりする。
百道浜にそびえ立つTNCのビル。
1階のタリーズカフェでコーヒーを飲み
編集室に向かった。

そこで待っていたのは
コンバート済みの収録素材40本弱。
インドネシアで撮影された映像が全てここにある。
だいたい1本40分くらいのテープなので
約96000秒。
約1600分。
約26時間。
ここにインドネシアの全てが詰まっているのだ。

僕はあまり現場でモニターを見ないので
はっきりいって
インドネシアの映像を見るのは初めてに近い。
かなり新鮮。
そして、この新鮮さが
編集上で必要になってくるのだ。
撮影した本人が編集すると、
どうしても別の感情や
現場の思いが出てしまう。
これはこれでとても必要なことではあるが、
時に編集は尺に合わせるために
削除したりしないとならない。
編集には思いを断ち切る強い信念と
作品に対する思いがないとならない。

よく、編集中は機械をいじっている時間より
画面の前で唸っている時間の方が
長いとか言われるのは
そういった監督の思いや信念を
引き出す時間でもあるからだ。

ここまで日記を読んでくださって方は
お分かりかもしれないが
監督というのは非常にクールである。
昨日言ったことをしれーっと忘れたり。。。
いや、『いる』か『いらない』かを
的確に判断する方である。
僕はどちらかというと未熟者なので
編集にはどうしても別な感情が先走ってしまう。
そのために現場ではモニターをあまり見ない。

「じゃ、始めよっか」

「うす。頭っからやりますか?」

「もちろん。じゃ、ロール1からね。
 今日の目標はバリ島までだから」

「うす」

編集機にスタッフ全ての思いの詰まった
βCAMテープが吸い込まれた。

撮影はほぼ順撮りだったから
ロールは順番に使用済みになっていく。
ジャカルタから
バリ、ロンボク、
フローレス、スラヤクチル。
主人公洋介が辿った道が
モニターに映し出されていく。

「あー、ここは大変でしたねぇ」

「そうだけど、前後と合わないからいらない」

「え?あ、そうですね」

「うわー、この時は腹が痛かった」

「大変だったねー。いらない」

「え?まじっすか?」

ちょっと大げさだけど、
瀬木さんはどんどん切っていく。
必要な映像と必要のない映像を

次々に裁いていく。。。。。

■本日のオフライン
  ジャカルタからバリ島へ向かうまで

■長谷巌一郎の今日の一言
  見つめるのは手前じゃなくて奥。本質を見抜け。

Vol.26 『怒涛のオフライン2』
2003年12月20日

今日も10時からTNCでオフライン編集。

昨日のラストはジャワ島からバリ島へ渡る
バスの中で終わった。
瀬木さんはそのバスの中のシーンを
僕につないでおいてと言い残して去った。

まず、昨日つないだ部分をチェックしてもらう。

「オフラインだから、
 楽に、好き勝手につないでいいから」

と、言われたものの
朝からテストの答案を配られて
点数を確認するようなものだ。
心臓に悪い。

ま、言い訳しても仕方がないから
当たり前のように

「じゃ、昨日つないだ分を見てください」

と、心臓がバクバクしているのに
平静を装いテープを入れる。
ここで、機械が壊れていたらなぁと
漠然と思うがそんなことはありえない。
壊れていたら編集なんかできないんだもん。

「……。」

「ふむ。じゃ、バリ島からだね今日は」

「(え?感想は?)……。えーっと」

「ロールの5出して」

「…はい」

おおおおおおいいいいいいぃぃぃ!
なんか言っておくれよー
どうなの?
良いの?
駄目なの?
まあまあなの?

と、なんの意見もないまま編集は続く。

『普通ってことかな』

と、楽観的な僕は直感的にそう思う。

×  ×  ×  ×  ×

「ちょっと電話してくるから、
 ここからつないでおいて」

「え?あ、はい」

と、いきなり瀬木さんは席を立った。
画面は九州で撮影した部分が映し出されている。

「……。」

僕は腹をくくって編集機の前に座った。
九州分は普通のドラマだ。
カット割りがあって、編集点もわかりやすい。
インドネシアはこうはいかないから
はっきり言って
瀬木さんにしか編集できない部分が多い。

だから、九州分を僕に任せたのだろう。

僕は、カット割り通り順当につないでいった。
時折、普通につないだのでは駄目なのか?
瀬木さんは普通につなぐことを望んでいるのか?
僕なりの新しいつなぎを見たいのか?
などと疑心暗鬼にもなりながら
順当につないでいく。

いざ、つないでみると編集というのは
やはり面白い。
ワンカット、ワンカットはただの映像だけど
つないでいくごとにその映像は
意味を2重にも3重にも含んでくるのだ。

例えば
ただ、ニコニコしているだけの男が写っている。
もう一つは赤ん坊のがキャッキャッとしている。
二つの映像はこのままでは
ただのホームムービーに近いが、
ほんの少し編集をするだけで、

1:赤ん坊がキャッキャッとする
2:男がニコニコしている。

と編集すると、
赤ん坊を見て男がニコニコしている意味になる。

逆に、
1:男がニコニコしている
2:赤ん坊がキャッキャッとする
と編集すると、
男がニコニコ顔で赤ん坊を笑わせている意味になる。

相当簡単な説明だけど、まあ、こういうことが
モンタージュ理論というらしい。
そんな言葉はどーでもいい。

と、言うわけで編集は楽しい。

あ、瀬木さんが帰ってきた。

「あー、こうじゃなくてさ、
 こうだと二人の関係は対等になっちゃうよね?」

「え?ああ、はい」

「もっと、見ている顔、
 聞いている顔をつないでいかないとさ」

「はい、すいません」

『しまったぁぁぁぁぁぁっ!全然駄目じゃん!』

まあ、こういうこともある。
と、楽観的な僕は平然と思う。
明日もあるさ!

■本日のオフライン
  バリ島から出会いまで

■長谷巌一郎の今日の一言
  楽観的に物事を考えよう!きっと毎日が楽しいよ!

Vol.27 『怒涛のオフライン3』
2003年12月21日

しまった!寝坊した!
9時にTNC集合なのにもう10時じゃん!
やっべー。

やっぱり慣れないホテル暮らしは
時間の感覚が麻痺してしまうのか。

慌てて瀬木さんに電話するも
全くでない。

つーか、電源が入っていない。

大体、瀬木さんの携帯は
常にOFF状態が多い。
携帯持ってるのに捕まえるのが
一苦労なんだよね。
また、こういう緊急な
(僕的に)時に限ってつながらない。

「仕方がない。あきらめよう」

こういう時の僕のあきらめは早い。
宇宙刑事ギャバン
蒸着スピード並に早い。

僕はシャワーに入って、
さっぱりしてからホテルを出た。
そこで、
もう一度電話をしてみるがやっぱり出ない。

「朝食でも喰っていくかな」

と、もう11時近いというのに
TNCの1階でパンを食う。
スタバじゃなくてタリーズだから
タバコも吸えて最高。

「あ、そうそう、
 瀬木さんにコーヒーでも買っていこう」

と、監督思いなスーパー助監督は
自腹でコーヒーを買う。

「どーも、すみません」

「あ、うん」

「あ、これ、コーヒーっす」

「ああ、ありがとう」

編集に夢中な瀬木さんは
僕が2時間近く遅れたのに気づいてないようだ。
しめしめ。

あ!『しめしめ』ってこういう時に使うんだ!

×  ×  ×  ×  ×

編集はバリ島の佳境になっていた。
今日はバリ島を終わらせて
ロンボク島まで行かないとならない。

瀬木さんの編集機をいじくる手も
ゲームセンター嵐の炎のコマのように激しく動いている。
編集を横で見ながら、テロップ原稿やらを作っていたら

「ねえ、年賀状作ってよ」

「え?ね、ねん、なんですか?」

インドネシアの写真を使って
 年賀状を作って欲しいんだよ」

「はあ」

「その、パソコンでできるんでしょ?」

「もちろんできますよ。自慢のバイオですから」

「じゃ、よろしく」

「肖像権とかあるんで、
 俳優部の写真は使えませんよ」

「ああ、かまわない」

気が付いたら編集もほとんど終わっていた。
僕が年賀状を作っている間に。。。

■今日のオフライン
  バリ島からロンボク島

■長谷巌一郎の今日の一言
  ビジネスホテルの目覚ましって壊れていること多くない?

Vol.28 『怒涛のオフライン4』
2003年12月22日

オフライン編集最終日。
いつもより早く編集室に向かう。

今日もTNC1階のタリーズでコーヒーを飲む。

僕も好きだけど瀬木さんはもっとコーヒー好きで、
焙煎などにも詳しくコーヒーへの駄目出しも
鋭く一番痛いとこをつく感じだ。
いや、タリーズは駄目じゃないんだけどね。
編集室にもタリーズから貰った商品ラインナップチラシを
機材の上に置いておき

「そんなとこに置いてどーすんすか?」

「いや、次は何を飲もうかなーって
 考えると楽しいでしょ」

「は、はあ。。。」

「あー、アイスが乗ってるやつなんかあるんだぁ」

「アイスにエスプレッソをかけるやつですね」

「うん」

とはいえ、
いつも飲むのは『アメリカーノ』っていう
普通のタイプなんだけどね。

さて、コーヒーも飲んだし編集しますか!

×  ×  ×  ×  ×  ×

編集中に脚本家松本さんから差し入れが届いた。
タバコとワインだった。
酒の飲めない僕にはタバコ。
タバコを吸わない瀬木さんにはワイン。
二人のことをよく知っている松本さんだからこそできる
ベストチョイスだった。

しかも、僕の吸っているタバコは
あまりそこいらで売ってなくて
東京でも買うのに苦労するやつだから非常に助かった。
銘柄は『アメリカンスピリット・ライト』というんだけど
無添加でタバコの葉以外は使ってないという純タバコなんだ。

まあ、こう言うと大体の人が無添加だろうとなかろうと
有害なものは有害なんだとか言うんだよね。
でも、そういう時はこういうの

「いや、健康に悪くて、体にいいんです」

まあ、編集室は禁煙だから
瀬木さんには快適なんだけど
ヘビースモーカーの僕には最悪な環境。
大体、編集室とかのこもって作業する部屋は
喫煙OKなとこが多いんだけどね。

まあ、瀬木さんが快適ならいいんだ。

僕は一人寂しく喫煙所まで
テクテク歩いてスパーッとするさ。

喫煙といえばTNCの鵜木さんも大のタバコ好きで
バスが現場に到着すると同時に
タバコを出して吸ってました。
撮影スタッフはタバコ人口が比較的多いんだけど
そういえば今回はあまり多くなかったんだよね。

AP  鵜木さん→スーパースモーカー
演出 瀬木さん→吸わない。
撮影 大坪さん→吸わない。
VE   徳重さん→吸わない。
音声 竹井さん→禁煙中。
CA  梅丸さん→禁煙中。
照明 平本さん→吸わない。
助監督長谷  →ヘビースモーカー

こんな状況だとつらいね。
食事に行っても僕と鵜木さんは
端っこの席に行かないとならないしさ。
あ、でもね、音声の竹井さんは成田空港で
禁煙を宣言したんだけどさ
いつだったっけな。

気が付いたらスパーって吸ってんの。

「あれ、竹井さん禁煙は?」

「いや、これが最後の1本だけん」

「へー、じゃあ、もう1本最後の1本あげましょうか?」

「え、何言うとるとか」

「はははは」

と、ロケも最終に近づいた頃には
完全復帰してました。
お帰りなさい、竹井さん。
やっぱり煙が目に沁みないとさ。

あ、全然違う話しばかりでごめんね。
でもね、隣で監督が編集をしているんだけどさ
正直言ってあまりやることが無いわけよ。
昨日は年賀状作ったりしてたけどね。
何時間もタリーズのチラシ読めないしさ。

だから、年賀状の手直しや
日記を書いたりしている訳。

監督がつないで欲しいところや
意見が欲しい時は声をかけてくれるし。

僕もチラチラ画面を見るんだど。
どんどん進んでいるんだよね。
瀬木さん編集早い!

あーーーっと言う間にスラヤクチルだよ。

2日に分けて撮影したかいがあった。
天気は抜群にいいし
俳優部の芝居もグッとくる。

はっきりいって、ちょっと羨ましいね。
僕がもっと身長が高くて
鼻も高くて、痩せていて、
芝居がうまくて、2枚目なら。

え?無理難題だって?

×  ×  ×  ×  ×

オフラインが終わった。
トータルは約2時間。
これを更に編集して
放送枠に入る尺に仕上げていく。

本当はここにも参加したかった。
でも、色々な問題や条件もあり断念した。

一体全体最終型はどうなったのか!

そして、ナレーションはどうなるのか!

僕は知りたい。
どのように編集され、
ナレーションが入れられたか、
だから聞いた。
ナレーションを書いた本人に!

次回予告!
脚本家 松本さんによるナレーション執筆&録音日記
「命吹き込む時」

■今日のオフライン
  ロンボク島からスラヤクチル島まで。
  オフライン編集終了!

■長谷巌一郎の今日の一言
  酒が飲めなくても
  「俺のの酒が飲めねーのか!」と言われるのに
  タバコを吸わない人に
  「俺のタバコが吸えねーのか!」とならないのは何故?

Vol.29 『命吹き込む時 1』
2004年2月4日

今回は、長谷助監督に代わって、
脚本・松本がこの日記を書かせていただきます。

夕方3時55分、福岡空港着。
ナレーション録音に同席するため、東京から福岡の地へのりこんだ。

ナレーション録音は、明日の夕方四時から。
その前に打ち合わせがあったとしても、まあ、明日の昼からだろう。
それまでは、観光するぜ! そのために昨晩徹夜で仕事終わらせたのさ!
と息巻いていたが、空港を出た途端に電話が入る。
「今日、ナレーション原稿の打ち合わせしたいのですが……」と鵜木APからだった。

ならば、長浜ラーメンだけは食らわしてもらうぜ!!
と、博多のラーメン屋に飛び込み、
替え肉、替え玉して、つかの間の観光気分に浸る。

タクシーに飛び乗り、時計を見ると、4:23分。
板谷さんと監督がラジオに出る時間だ。
「LOVEASIA」の宣伝のため、ゲスト出演されるという。
「運転手さん、ラジオ、FM福岡にしてください」
黙ったまま表情を変えず、運転手さんはチューニングした。
監督と板谷さんの撮影現場の話に、耳をそばだてていると、運転手さんが言った。
「静かに聴きたかでしょ?」と、港に車を止め、メーターを切ってくれた。
粉雪散る福岡の港で、僕はインドネシアに思いを馳せていた………。

板谷さんのトークは抜群に面白く、かつきちんと番組のテーマをアピールしてくれた。
さすが、J-WAVE「スーパーラインJ」(SAT15:00~16:30)のパーソナリティだ。

「ラブアジアってドラマ、そげん面白いとですか」と運転手さんが訊いてきた。
「ええ」と僕はしっかりと頷いた。
「なら、絶対見ろう」運転手さんはそう呟き、ギアを入れた。

そして、テレビ西日本へ。早良区ももち浜
埋立地のオフィス街。日本海からのふっきっさらしの風。
こりゃ、仕事をやるしかなさそうだ。

プロデューサーから、バシバシと容赦なく、直しの指示が飛ぶ。
ナレ録り直前まで、直すわけさ。当然さ。

今回のこの番組、紀行ドキュメントの要素があり、
どうしても、ある程度長いナレーションが必要なのだ。
ナレーションの内容は、主人公・柏木洋介(西島秀俊)の日記の言葉だ。

で、ホテルへ戻って書こうと思ったが、
監督が編集作業をするというので、そこへ同席させていただくことに。
このとき、すでに深夜1時。

実のところ、あれこれと編集に注文を出してしまった。
映像素材には、脚本とは違うセリフ、動きが多い。
自然状況に合わせた即興のシーンがフンダンにある。
もちろん、脚本の本筋とは外れていないし、
その即興性みたいなものが狙いだった。
しかし、物語の再構築が必要な箇所がいくつかあった。

クランクアップ後、素材を見せてもらい、
面白いシーンをどう物語として紡いでいくか、ライターは考えたのだ。
ナレーションで補足できるところはする。
だが、やはり、編集にも注文せざるを得ない。
通常、ライターが編集に口出しするなんてことは、ない。
ないはずだ。でも、今回ばかりは仕方ない。

とにかく、即興で演技している映像の素材が面白いんだ、これが。
西島さんは、ト書きじゃ絶対書けない心の機微を演じてくれ、
板谷さんは、そんなセリフ、オレじゃ書けねーよ、っていうセリフを言ってくれ、
ダムシッさんは、予想外の日本語リアクションで驚かせてくれる。
恐るべし、俳優部。マジ尊敬してます。

脚本とは違っているシーンが生き生きとしている。
なんていうと、脚本が負けたということになるのか!?
っていうか、面白くなってればいいのさ!!

その面白いシーンを生かすために、
この日までにも、監督にあれこれ注文を出してしまった。
物語として構成するためには、そうせざるを得なかったっす。
監督、編集の山下さん、聞き入れてくれて、ありがとう!!!!!

そして、この日、編集の最後のツメだ。
ソコ、あともうちょっと切ったほうが………。
なんてことも言ってしまった。
ごめんなさい、編集の山下亮一さん。
ザックリとした手編みのセーターが素敵でした(「編集室から」に写真アリ)。

朝方6時ごろ、編集終了。白完パケ(テロップが入る前)が完成。
ホテルへ帰り、ナレーション原稿の直しにとりかかる。
昼には、西島さんも福岡入りだ。早々にナレーション原稿を渡さなければならない。
でないと、夕方のナレーション録りに、間に合わない。
書きますよ、うん。

▼長谷巌一郎の俺にも言わせて!
 いよいよ「LOVE ASIA 花びらの舞う海へ」が
 完成に向かって一歩一歩進んでるんですね。
 最後の最後に参加できない口惜しさで胸が一杯です。

 それにしても、ライター視点で書かれた日記は新鮮ですね。
 次回も楽しみです!

Vol.30 『命吹き込む時 2』
2004年2月5日

ひきつづき、長谷助監督に代わって、
脚本・松本がこの日記を書かせていただきます。

ひゃ~、結局、原稿の直しは、昼近くまでかかり、一時間ほど寝て、
ホテルのロビーで監督と細部を直す。

その後、記者発表の会場へ。そうこの日は、福岡での記者発表だったのだ。
ま、ライターは何もすることはないのだが、
行きたかったのさ、西島さんと板谷さんにお会いしに。
控え室のお二人は、この日も、穏やかで、楽しいおしゃべり。

記者会見では、現場の楽しさと充実感をふりまくように話すお二人。
うらやましいなあ。撮影現場行きたかったなあ。
自腹でも行けばよかったなあ。けど邪魔なだけか……。

お、あれがケイタクだな。凛々しい二人の若者が紹介された。
ケイタクは、04年のブレイクが期待されるミュージシャンだ。
二人とも九州出身だそうだ。
会場には、ケイタクの『すこしだけ……』が流れている。
クーッ、沁みる曲だぜ!
いい主題歌と挿入歌を作っていただき、どうもっす。

で、記者会見終了後、西島さんとナレーションの内容について、打ち合わせ。
書き手は、どういう方向でナレーションを書いたか説明し、
演じ手は、現場での気持ちの流れを説明し、
監督がそれらの意見を汲み取り、あれこれと建設的なディスカッション。
じゃ、録りながら調整していきましょうかと監督がおっしゃり、スタジオへIN。

西島さんがシーンごとにナレーションを読み、
合間に、スタッフと西島さん含め、話し合い、言葉を調整する。
演者の気持ちを繋ぐよう、物語を重ねるように―――。
柔らかな緊張感の中、丁寧な作業が進む。

で、終了! 3時間ほどのナレ録りだった。
このあとは、テロップ入れ、音楽入れなどして、監督が仕上げてくれる。
松本の作業も、これで終わりだ!
西島さんの仕事もこれで、終了。笑みがこぼれていた。

お疲れ様でした~、と割烹料理屋で乾杯。魚がうまい。
撮影スタッフも加わり、西島さん、楽しそう。
当然、撮影現場の話で盛り上がり、松本は話に加われず、とにかく、うなづく。
「大変だったけど、楽しかったよね~!」とカメラマンの大坪さん。
「ね~!」の部分は、西島さんも一緒にユニゾン
二人して、チラッと松本を見て、自慢げに言ったのだ。
ふんっ、くそうっ、どーせ、おれは撮影に行ってないさ。
などと呟きながら、飲めない酒をあおるオレだったわけで……。
カメラアシスタントの梅丸さんが、気遣ってくれ、麦焼酎を濃い目にしてくれたわけ
で……。
福岡の夜は更けていったのだった。

帰京して、二日後、部屋で仕事をしていると、メールが届いた。

>完成しました!

瀬木監督からであった。
お疲れ様でした!!
あとはオンエアを待ち、このドラマができるだけ多くの人の
心の奥のところに届くことを祈るだけさ。
おっと、それまで、宣伝しますよ、がんばりますよ、微力だけど。

そして、もう一通メールが届いていた。

>私事で恐縮ですが、
> 昨日、2月7日8:24に待望の第一子が生まれました。
> 3078グラムでした。
> まるで小動物のような赤ん坊を
> これからどう育てていくか。。。
> 不安と期待で目の前が真っ暗だったり真っ白だったりします。

助監督の長谷巌一郎さんからだった。
完成の報告と、誕生の報告と。
めでたいぞ!!!風は「LOVE ASIA 」に吹いてるぞ!
と勝手にあやかってみたりして。

この仕事、ライター松本は、長谷助監督にとても助けていただいた。
撮影後の現場の報告や、ナレ原第一稿を読んでの感想などをいただき、
それは、大いにナレーション原稿へ反映されていた気がする。
ありがとう、長谷巌一郎!!
いつかまた一緒に仕事ができるよう、精進するぜ!!力を蓄えとくぜ!!

さあ、次回のラブアジ日記は、最終回!!
長谷助監督、きっちり、美しく、フィニッシュしてくださいね!
とプレッシャーをかけたりして。

▼長谷巌一郎の俺にも言わせて!
 無事に完成なによりです。
 ちょうど、僕の息子の誕生にあわせて「LOVE ASIA」も完成とは。。。
 なんとも感慨深いです。

 さて、これで最終回にしようと思ってたんですが
 最終回を書けと松本さんに振られてしまったので。。。

 次回、LOVE ASIA 花びらの舞う海へ 日記 最終回。
 『受け継ぐものたちへ』

Vol.31 『受け継ぐものたちへ』
2004年2月6日

22:30
奥さんの陣痛が始まった。
普通は徐々に間隔が狭くなっていくものらしいが
いきなり5分間隔くらいで陣痛が起きたので
急いで病院へ行く。

奥さんはそのまま入院することに。

明日の何時かはわからないが
出産は近い。

2004年2月7日
7:00
病院から電話。

「もうすぐですよ!」

「ええええっっっ!すぐ行きます!」

僕は病院に走った。
病院では奥さんが陣痛と闘っていた。
僕はただ

「がんばれ!」

としか言えなかった。
他に何が言えるだろうか?
男には絶対にわからない苦しみと痛みに耐えている
自分の奥さんを前にして何が言えるだろうか?
口に出してから『がんばれ』という言葉すら
薄っぺらい感じがして我慢ならなかった。

僕は病室を出された。
立会い出産は
僕も奥さんも希望ではなかったからだ。

ただ、じっと待つ時間が訪れた。

朝の光が病室の廊下を照らし
ほとんど寝てない僕の目にはまぶしかった。
そんな光景とは裏腹に病室から
奥さんの声が聞こえてくる。

ただただ、僕は待った。

待合室には手塚治虫
火の鳥』がおいてあったので
思わずそれを掴み読んだ。
いや、読んだというよりも
『見た』の方が正解かもしれない。
全く、ストーリーも内容もわからないのだ。
単純に漫画を持ったヒゲ面のおっさんが
待合室でタバコをガンガンに吸っているだけ。
そのおっさんの頭の中は真っ白で
なんにも考えられない。

こんな時に

「金貸してくんない?」

とか言われて貸しても
恐らく全く覚えてないだろう。

それだけ僕は、珍しくテンパる寸前だった。

8:20
突然だ。本当に突然、
赤ん坊の泣き声が響き渡った!

「旦那さんどうぞ!」

と言われる前から
僕は扉の前でスタンバっていたから
すぐに病室に入った。

出産直後でまだへその緒がついたまんまの
僕の子供は真っ赤な血にまみれてはいたものの
大声で泣き叫んでいる。

「元気だ!元気に泣いてる!」

僕は命の誕生を目の前で見た。
その命は僕の遺伝子を持ち
僕にそっくりの鼻を持った男の子だ。

映像作品を一人で作ることは無理だ。
様々な役割を持った人間が
助け合い力を出し合って作り出される。
そして、その力は映像の中に埋め込まれていく。
埋め込まれた力が多ければ多いほど
作品は幸せでありいい作品であるはずだ。

病院から一時帰ってパソコンを開いた。
監督瀬木さんからメールが届いていた。

『Love Asia完成しました』

僕の息子が生まれた同じ日に
同じ遺伝子を持った作品が生まれたのだ。

九州と東京。そしてインドネシアの遺伝子を持った
この作品は俳優部・スタッフ全ての力が込められている。

『Love Asia 花びらの舞う海へ』は

とても幸せな作品であり、
いい作品だと思う。
みんなに気に入れられて、
みんなに愛される作品であってくれ。

そして、俺の息子よ。
強く、強く生きろ。
人生は短い、生き急げ!

長々とした日記を最後まで読んでくれて
ありがとうございます。
この場をお借りして読んでくださった

皆様に感謝します。

そして、瀬木さんを始め
松本さんやTNC鵜木さん・HP担当吉浦さんには
多大なるご協力を頂きまして大変に助かりました。
つたない僕の文章で少しでもHPが賑わったなら本望です。

『LOVE ASIA 花びらの舞う海へ』
インドネシア・東京・九州撮影日記。
オフライン・ナレーション日記。

おわり。